任務 1
まじーん様のリク罠リスト&逆引きドボン作品記録<7>に収納の
【リク罠199】パラレル「任務(仮)」
にドボン予約をして、早○ヶ月…満を持して(?)ここにお届けいたします、パラレル「任務」(←そのままタイトルいただきました!)
ちょっと長めの全10話、妄想が溢れて番外編2話をお届けいたします。
珍しくサブタイなんかつけてみちゃったりして…今回の設定は直接まじーん様のサイトでご覧下さいませ。
いやはや…どうして、どうしてこんなお話に…なんていわないで下さいませ?
頑張って書きましたのよ。(おーほほほほ!)
そして、なんだかあるお話となんとなく似ているような…ええ、大好きな小説(漫画にも映画にもなってますが)を、ちょっとだけ意識してございます。
もし分かった方があっても、秘密にしてくださいね。(恥ずかしいから!)
では、これから火・土の更新と相成ります。どうぞご覧下さい。
「最上さん。今日、俺と相手して?」
「ちょっと待った!俺と組んでくれるって先週言ったよね?」
「僕もお願いしたいな。二人の後でいいから相手して欲しいんだけどな。」
「えっ…?」
最上キョーコは柔道場で同期の新人たちに声をかけられ、素っ頓狂な声を上げた。
「何だ何だ~?最上、えらく人気があるじゃないか。調子に乗るなよ?」
「村雨先輩!大丈夫です。調子になんか乗ってません。皆さんがお相手してくださるのなら嬉しい限りです!」
「大きく出たな。おい、お前ら下がってろ、最上、俺が相手だ。今日こそはけりつけてやる!」
「はい!望むところです!」
「まあまあ、そんな二人とも熱くならずに…とりあえず、キョーコちゃん、先に俺とやってみよう。」
「光っ!ずりぃぞ!俺が先だって!」
「そんなこと言って、先週もお前が相手してたんじゃん。」
ぎゃあぎゃあと誰がキョーコと相手をするかと揉めるのは、班で一緒に活動している村雨泰来と石橋光だ。
「あ~~、じゃあ光先輩、先にお願いします!村雨先輩とは次で!」
「何でだよ~~!!」
「よし!じゃあ、お願いします!」
道場の中央に立ち、石橋とキョーコが礼をするのをみて、近くで見ていた上官、社が声をかけた。
「相手は決まったのか?じゃあ光、キョーコちゃん、準備はいいな…はじめっ!」
任務 1〈彼女ハ、有段者ナリ〉
「いでっ…いででででで~~!!ストップ!ストップ!」
「どうですか?ギブですか?」
石橋光に腕ひしぎ十字固めをがっちり決めた最上キョーコは、ふふふん…と楽しそうに、腕を引っ張る。
「ギッ…ギブ!参りました!」
光はバンバン!と畳を叩いた。
「ふう!やったぁ!今日も勝ちです♪」
「強過ぎだよ…痛ててて…」
「すみません、光先輩、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。ア~~、もう、肩無しだ…。」
「光、次はお前の得意な空手で勝負すればいいと思うが、こう研修生にやられてばかりじゃ困るな、柔道が苦手なのは前からだけどね。」
「すみません…」
社は、水分補給をしているキョーコを見やった。
「キョーコちゃん、結構やるよね。」
「ですよ。俺なんか歯が立ちませんもん。可愛いのに…ちょっと悔しいなぁ。」
「何?やっぱり悔しい?」
「悔しいッすよ!当たり前じゃないですか!年下で、しかもまだ研修中だってのに、副班長だって、いい筋してるって褒めてたじゃないですか!」
「まあ、そうむくれないで。光には光のいいところがあるんだからさ。」
「柔道では村雨にも勝てないし、さっきもキョーコちゃんに一本取られたし…ホント、畳の上はむいてない。」
社は、一人ぶーたれる石橋光にぷっと吹き出した。
「社副班長~~!笑うなんて酷いっす!キョーコちゃんが強すぎなんです。」
「ははは、違いない。じゃあ、次は泰来が相手な。」
会社の道場でのトレーニング。この会社では、修練の時間が義務付けられている。
柔道、剣道、空手、レスリング、陸上…いつも、身体のコンディションを最適に保ち、いざという時にすばやく対応するためだ。
何故、すばやく対応する必要があるのか?
実はこの会社は、護衛に関しては大手の警備会社JPSS(ジャパン・プライム・セキュリティ・サービス)という会社である。
主に要人警護を中心業務として大きく成長した企業だ。
この春、入社したばかりの新入社員は、3ヶ月の一般基礎研修を終えて、3ヶ月ごとの実務訓練に入った。今、実務訓練で二つ目の部署に移動したばかりの最上キョーコは、今年の新入社員の一人である。
ここに勤務する社員の多くは体育会系だ。
体育大学出身者や自衛隊を除隊したもの、村雨のように昔ヤンチャしたものもいれば、社や光のように情報系であるけれども、武道や格闘技の有段者といった顔ぶれがならぶ。
会社内は総務部・警備部・護衛部に別れており、業務成績によって格付けがなされ、手当ても変わる。
最上キョーコは現在シングル・スター、警備部・護衛部の中では一番下っ端。
実績と信頼度が上がるほど星が増え、フォー・スター以上が各部内の実務班をまとめる資格を有する。そして、ファイブ・スターと呼ばれる、星が5つ付いた襟章が、ボディー・ガードとして尤も優秀なスペシャリストの証である。
勿論営業や事務的な業務を行う社員も多くいるが、警備・護衛部に所属する社員のほとんどは護衛のスペシャリスト、即ち5スターのボディ・ガードを目指して、研修・訓練に励んでいるのである。
そんな実務研修中の最上キョーコは、畳の上で次なる練習相手の村雨と睨みあっていた。
「じゃ、お二人さん、怪我しない程度にね。……はじめっ!!」
社のその声に、村雨はぶわっとキョーコに襲い掛かる。
どちらかというと実戦的なケンカ戦法で責めてくる村雨。その村雨の組み手を嫌うが、撥ね退けた筈の手が次々と素早くキョーコに伸びる。
上背もある村雨に奥襟を取られたら、一溜まりもないキョーコは防戦一方だ。
「おいこら!ちょこまかと…」
「ふっふーん!逃げるのも勝負の内ですもん。」
「このっ!こらっ!待ちやがれっ!」
ぐわっと伸びてきた手首に隙が見えた途端、キョーコの目はそれをスローモーションのように捉える。油断した手首を掴んで流れるように懐に入った瞬間、ふわりと村雨の身体が浮いた。
ズダーン!!
「一本!それまで!」
「ありがとうございました!」
「…ッたぁ~…こらッ!お前、柔道っぽいけど、今のは合気道MIXだろうが!」
「あや?そうでした?」
「そうでした?じゃねーだろー!」
「だって、実際の現場では何でもアリだって松島部長が仰ってましたもん♪村雨先輩だってケンカ柔道じゃないですか。」
「はあ?最上!おいっ!待ちやがれ!!」
「お生憎様です~!待てって言われて待つ人間いませんよ~」
おほほほほ~~と、道場内を軽やかに逃げるキョーコと追う村雨に、社が溜め息をついたところへ、柔道着を身に付けて道場に現れた人影…
村雨から逃げ惑っていたキョーコは、前に振り向き様、その人物の胸元に顔から突っ込んだ。
「わっぷ!」
「こら、道場内では走らない。」
大きな手がやんわりと肩を掴んで、キョーコを真っ直ぐに立たせた。
「ひゃ…ひゃい!すみません!班ちょ~」
「班長!」
「敦賀班長!」
キョーコが鼻をさする中、慌ててキョーコを追いかけていた村雨がピシッと立ち止まり、光も一際大きなシルエットの男性の側に駆け寄った。
その男は現在の研修先である敦賀班・班長の敦賀蓮だ。
「蓮、打ち合わせ、終わったのか?」
「ええ、遅くなりました。ところで社さん、これは、何の騒ぎです?」
「ああ、キョーコちゃんと組みたくても滅多に組ませてもらえない若いもんが、組んだ途端にあっさり投げられて、納得いかずに追いかけまわしているの図。」
「何だ、そんな事?」
「う~ん…そんな事でもないんだな。光と泰来が続けて負けてる。」
「へぇ、それは凄い。」
「まあ、他の班の野郎がキョーコちゃんと組みたがる思惑も若干透けて見えるけどね、女子だと侮ると痛い目を見る。そう簡単に組める相手じゃない。」
「なるほど、じゃあ、俺が相手しようか?」
周囲がざわっとどよめいた。
この時間に道場に来ているのは、1つの班だけではない。個人的に練習に来ているものもあるのだが、何せ、敦賀班の班長自ら道場で手合わせをするというのは珍しいのだ。
なぜなら彼は“ファイブ・スター”
それゆえ、蓮をリスペクトして止まない村雨や他の社員たちは、班長自ら相手をしようと告げたキョーコを羨望の眼差しで見つめた。
(続く)