満開の桜にそえて

アナウンサーシリーズの番外編です。
時間軸は結婚式から約2ヶ月後、ちょうど季節は今(春)です。
思いつきSSな感じで読んでやって下さい。




満開の桜にそえて
~ハレの特異日番外編1~




『こんにちは。東京の桜が満開となりました。昨日、今日と日中はぐんぐん気温が上がり、一気に開花が進んでいます。この週末は各地で桜の見頃を迎えます。お出掛けの際に傘の心配はありませんが、夕方にかけて西から天気が崩れ、風が強く吹きそうです。また、週の半ばには気圧の谷の影響で天気がぐずつきますが、東北、北陸でも開花が進みそうです。こちらは来週の見頃となりそうです。では、今日と明日のお天気です。』


桜前線の北上に伴い、この週末、折しも満開となった桜の花。
朝はまだ蕾だったはずなのに、昼過ぎには薄桃色の花を咲かせている。
気温の上昇に急かされるように勢いよく、開花がどんどん進んでいくのを見ると、「お花見しなくちゃ!」と気分も急かされてしまう。

画面の中でにこやかに天気を伝えるキョーコは、いつも通りの可愛さで蓮の頬を緩ませる。

全国の皆さんに天気を伝えているその弾ける笑顔が素敵な女性は、可愛い可愛い新婚2ヶ月の新妻だ。

勿論、自宅で頬を緩ませるくらいならいいが、最近の蓮は自宅外でも相好を崩してしまうこともあり、キョーコによく叱られる。
当然、社にもだ。
この二人から見ると、蓮の崩れっぷりが半端ないのだが、まだ世間様には柔らかい表情として映るらしく、“恋人にしたいアナウンサーランキング1位”から、“結婚したいアナウンサーランキング1位”に置き換わっても、“好きなアナウンサーランキング1位”であることには変わりない。
イケメンで蓮が担当する番組は当然視聴率もよい。…が、最近ニュースの他には、顔が出ないナレーションを好んで仕事に入れている。歴史探訪や旅物語、自然ドキュメンタリー番組のナレーションだ。他局ではいくつかバラエティーに出るが、さほど多くはないし、番組も選んでいる。
バラエティーはキョーコの領域と割り切り、敢えて断りを入れ、フリーアナウンサーとしてのスタンスを取っていた。

今日の蓮は朝からオフ
仕事に向かうキョーコをギリギリまでベッドに引き止めて送り出した。

あれ程仕事に厳しかったはずの自分が、彼女…いや、妻を引き止めて困らせるなど笑止千万だが、最近では箍が外れたように欲望に忠実になってしまっている。
それこそ、仕事に差し支えるほどではない場所に独占欲の証を刻みつけたり、キョーコがオフと分かれば、足腰立たない程に貪り尽くしたりする。
そんなこんなでキョーコに叱られつつも、ご機嫌伺いのために、今だっていそいそと洗濯物を干して畳んで、妻の帰りを待ちわびる。

「こんな姿、社さんに見られたら、未来永劫遊ばれるな。」

相変わらず頼りになる先輩アナウンサーのからかう気満々な顔が浮かび、妙な気分だ。

今日はキョーコが帰ったら、花見に行こうと約束をした。
今更ながらそんな事が嬉しくて、堪らなく待ち遠しい。
迎えに行くとやっぱりキョーコに叱られるので、こうやって自宅で大人しく待っているなんて、自分でも可愛いと思う蓮なのだった。


* * *


“ピンポーン”

「おかえり、キョーコ。」

「ただいま帰りました。」

玄関で靴を脱ぐ時間も待ちきれず、キョーコを抱え上げ、キスの雨を降らす。

「もう!手を洗ってうがいしてからですってば!」
「いいよ、そんな事。」
「何言ってるんですか。風邪菌を持ち帰ってたら、大変ですよ?」
「はい、はい。だけど、お花見に直ぐに出るんじゃないの。」
「晩御飯はどうします?食べてからにしますか?」
「久しぶりに外食しようか?食べたい物があれば。」
「うーん…。特に無いんですよね。この前から飲み会が多くて、アッサリした物がいいと思ってたので、お家ご飯にしようと思ってましたから。」
「じゃあ、うどんが食べたいな。前に作ってくれた、おろし梅うどん。」
「それなら、直ぐに出来ますよ?」
「でも、帰ってからにしようか?まださほど空腹を感じて無いんだ。」
「分かりました。それなら、先に出掛けましょう。」

荷物だけ先に置くと、少しの準備をしてから出掛けた。

さすがにもう隠すこともしないし、サラリーマンが花見に行くくらい、なんて事はない。

だが、やはり蓮は目立つ。

一際大きな背丈
遠目でその身長に目を奪われると、次に飛び込む秀麗な美貌。
夕方、胸に迫る程に満開の桜並木にあって、提灯の灯りの中でさえ美しい顔立ちに目を奪われる。

桜を愛でるために来たであろうに、道行く女人達は皆頬を染めて振り返り、隣のキョーコに気付く。
大きな蓮の身体に隠されるように、大事に大事にエスコートされるキョーコは、さながら桜の精のように可憐で、端から見るとただのバカップルの筈なのに、この二人だと切り取った映画のワンシーンのように美しい。

いつもテレビで見るあの顔だと気付くのは、すれ違ってから随分と後の事で、その時には余りに見惚れて惚けてしまうのである。

すっかり闇が濃く色づいて、ライトアップに花びらが白く浮き上がり、夜桜が風に吹かれながらひらひらと舞い始める。

「風が出て来たね。」
「はい、折角満開になったのに、風のせいで散り急いでしまうのは、寂しいですね。来週、雨が降ったら持たないかもしれません。」
「今日の天気予報でも言ってたね。」
「あら、ご覧になっていました?」
「勿論見ますよ?可愛いキョーコの姿はいつも見たいですから。」
「もう!今日は可愛く映っていません。ギリギリだったんですから!明日も早いので今日は別々に寝ます。いいですね。」
「や、キョーコ…お願いだから、それは勘弁して?もう引き止めないから。」
「嘘つき。この前もそう約束したのに、守ってくれませんでした。」

プックリと頬を膨らませて、睨みつけるキョーコも、また可愛いくてニヤける。

「だって…あんまり可愛いから…」
「なんて顔するんですか!ここは公共の場所ですから甘えないでください。全くもう、どこまでも天然タラシ。」

ぶちぶちと文句を言いながら、蓮にエスコートされるまま歩みを進める。

「桜の花…満開で凄く綺麗ですね。本当にいい匂い…。今年はしっかり堪能しました。」
「去年はデートもろくにできなかったからね。」
「はい…だからこそ、余計に嬉しいです。また、来年も一緒に見ましょうね。」

蓮を見上げるキョーコの顔が悪戯っ子みたいだ。

「仰せのままに。」

ゆっくりと近づく蓮の顔…
キョーコは優しい眼差しで蓮の顔を両手で挟み、横に向けた。




「はい。続きは帰ってからにしましょうね。お腹がすきました。」

にっこりと微笑んで、蓮の意識を周囲に向ける。


(参ったな…)

顔を赤らめてこちらの方を窺い見るギャラリーが目に入る。

(またまたキョーコに煽られて、自分を見失うところだった。危ない危ない。)

結婚以来、ずっとキョーコに敷かれっぱなしな敦賀蓮。
だけど、彼はそんな自分が嫌いではない。
むしろそれは心地よく、心の底から幸福感に満たされる。


「ご飯を食べたら、続き…していい?」

「……。」

ツンとそっぽを向いて先に歩き始めるキョーコの耳は、夜目に分かるほど真っ赤に染まっている。

「くす…。楽しみだな。」

蓮はすぐに追いつくと、するりと傍に引き寄せた。
二人はさらに寄り添い、幸せを噛みしめながら家路に着いた。



(終)



凄く糖度が高いかも。
ここまで甘いのはかなり久しぶりです。
ベタ甘蓮さん。いいのか?
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