疑問符の行方 7

7話まできました。
キョコさんがいなくなり、蓮さんどうする?の巻

行ったりきたりでごめんなさい…。
もう少しお付き合い下さい。




疑問符の行方 7




「社さん、最上さんが、キョーコがいないんです!」

開口一番、社に問いかける。

「何だって?どうしたんだ、蓮。キョーコちゃんがいないってどこに?」
「うちにです。」


「…妄想?」


「違いますよ。うちから最上さんがいなくなりました。」
「はぁっ!?…蓮、お前まさか…、俺に内緒でキョーコちゃんをマンションに連れ込んだのか?」
「は…?いや、だから最上さんがうちにいますって報告…。」
「います。だと~?まさか純情乙女のキョーコちゃんに、ホントに何かしたのか?」
「した…というか、してませんけど、社さんも容認してたでしょう?」

「俺が容認!?したとかしてないって…れ…蓮?何言ってるんだ?意味が分からない。」
「意味がわからないのはこっちです。一体何なんです?最上さんが急に現れたり、消えたり、社さんの言動までおかしい。本当に何も隠してないんですか?」
「何の事だ?何を隠すって…全く何の事か分からない…、蓮、何がどうおかしいんだ?」

さっぱりかみ合わない会話。

やはり、社は演技ではない。これはいったいどういうことなのか…。
だが、そんな事を考える余裕は今はない。
とにかく、キョーコが今、どこで何をしているかどうかが重要なのだ。

「すみません。社さん、おかしな事情は必ず説明しますから、すぐに最上さんのスケジュールを調べてもらえませんか?今どこにいるか知りたいんです。」
「なんだか納得いかないが、取り敢えず分かった。お前はそのまま撮影に入れ。」
「はい。お願いします。」

慌てて出て行く社を見送り、深く溜息をつく。

(何もなかったというのか?無事だといいんだが…。)

気になる事は勿論だが、仕事を放り出すわけにはいかない。
蓮は“敦賀蓮”をしっかり貼り付けて、スタジオに足を運んだ。


* * *


「キョーコちゃんは今日1日オフだ。今、学校に行っているらしい。だるまやにも連絡を入れて確認した。」
「そうですか…。」

ホッとしたように、蓮が俯く。

「蓮、それでどんな事情があったって言うんだ?分かるように説明してくれ。」
「ええ、実は…。」

一週間前の朝、キョーコが突然家にいた事。二人は一緒に暮らしている設定らしい事。社に確認したが、キョーコが家にいる事が「当たり前」的な発言をした事。そして、今朝眼が覚めたら、キョーコの痕跡が綺麗に消えて、社も元に戻っていた事を説明した。

「はぁぁぁ?何なんだ、それは…。お前、よくその状況で一週間過ごしたな。」
「ええ…状況的にはまあ…。」

(うわ!そうか!こいつにとっては好都合だった訳だ!だから何も言わず受け入れたんだ…。怖~、キョーコちゃん逆に戸惑ったろうな…。)

「なぁ蓮、まさか…とは思うが、キョーコちゃんに何かしたなんて事は…」

ふい…と蓮が横を向く。

(何~~?ま…まさか本当に何かしたのか?)

「れ…蓮君?ま…まさか、世間様に顔向けできないような事…。キョーコちゃんは未成年だぞ?」
「社さんの思うような事はしてません…が、一緒には寝ました。」

(なにおぉ~?)

「本当にそれだけです。カインの時と何も変わりませんよ。きっと社さんの想像の方が過激です。」
「(ぐ…)そ、そうか。で、これからどうするんだ?俺は全く覚えていないし、困ったな…。」
「でも、仕事の内容は記憶がないわけではないんですよね?」
「ああ、昨日お前が撮影を巻きに巻いたあと、別れて社長のところに行って…」
「それです。多分おかしいのはそこなんです。もしかして、一週間前にも社長と会ってませんか?」

社はパラパラとスケジュール帳をめくる。

「いや…それはない。だけど、何だ?この記号。」
「記号…?」

社の手帳に記された、星のマークとMのイニシャルが気になる。

「おそらく、それ…でしょうね。やっぱり社長に行き着くようです。社さん、今日遅くなっても、社長と会います。それと、お願いがあります。どんなに短い時間でもいい。最上さんと会う事はできませんか?」

蓮の目は真剣だ。
突然に極上の宝物を与えられ、突然にその宝物が奪われるのだ。苛立ちは相当に違いない。

社の中では確定事項だったキョーコへの思い。
いつもはスマートにごまかすくせに、今日はごまかせない。
隠すどころか駄々漏れな様子を見て社は密かにニヤつく。

「分かった…。夕方、次の移動途中に学校に寄って20分が限界。捕まらなかったら22時過ぎまでアウトだ。」
「分かりました。少し巻いてみます。」
「無理はするなよ。」
「ええ。」


*  *  *



キョーコは昨夜、荷物を撤去したあと、痕跡さえも綺麗に消してだるま屋に戻った。
蓮から言われた言葉は、自分にとっての“負け”を示す言葉だった。
だが、蓮からふいに与えられた温もりと、カインの言葉ではない敦賀蓮の言葉。
妹にではなく、最上キョーコに与えられた言葉は、キョーコを起動停止にするには十分な破壊力で…今日は丸一日オフの筈だったが、いても経ってもいられず学校に登校した。
勿論、授業になりはしなかったのだが…。

蓮の言葉を反芻する度、おそらく間抜け・腑抜けな表情をしていただろう。
そんな事を思うと不意に己を罵りたくなり、突然ポカポカと自分を殴ってみる。
敦賀の坩堝の中で、それは洗濯機にかき回されるようにぐるぐると回る世界。

放課後、脱水まで終了済み、絞れるだけ絞った魂の抜けた様子で正門をくぐると、ふいに聞き覚えのある声がした。

「キョーコちゃん!」

ふと顔を上げると、道の向かい側で手を振る社。
キョーコは急いで駆け寄った。

「社さん!どうなさったんですか?学校まで!」

ビックリした様子で駆け寄るキョーコに、社はホッとした表情を浮かべる。
キョーコがオフのときの下校時間は、社は既に調査済みだ。
偶然とはいえ、きちんと正門を通って出てきてくれた事に感謝する。

「うん、ちょっと用事があって…、今日オフだよね?そこの角に蓮が来てる。少しいいかな?」
「つ…敦賀さんが?」
「うん、20分でいいんだ。」

「…分かりました。」

顔面は蒼白。
だが、ここで賭けの全貌を明かすわけにはいかない。

社に連れられて角を曲がると、いつもの見慣れた高級車が止まっている。確かにこんな車で正門まで乗りつけると大騒ぎだ。

“コンコン”

ガラスをノックすると、すーっと開く窓。

「やあ、最上さん。会えてよかった…探したよ。乗って。」

ホッとしたような笑顔とは裏腹に、キョーコのアンテナはピョコッと反応した。

(どうしよう…怒っていらっしゃる…当然よね。)

いつもの後部座席に導かれ、小さくなるキョーコ。
何も言わない蓮との間に、沈黙の時間が流れる。

「あの…敦賀さん?」

重苦しくて口を開いたキョーコだったが、じーっと蓮にキョーコの顔を見つめられ、瞬きさえ出来ない。

「よかった…消えたわけじゃなかった…。」

切なそうに見つめる蓮の顔を見ていたら、何もかも言ってしまいたいような衝動に駆られる。

「なんで突然消えたの?君を抱きしめた途端に消えるなんて…拷問だ。」




キョーコは息を呑んだ。
脳裏にある場面がフラッシュバックする。


(あのときの顔だ…!)


なんて事をしてしまったのだろう?
いつか坊に“大切な人は作れない”と苦しそうに言っていた蓮。
そのときに見せた苦しそうな表情でキョーコを見つめる。


(どうして、そんな表情…。)


蓮はすっと手を伸ばし、キョーコの頬を撫でる。

「よかった…ちゃんといて。君がいないと思った瞬間、生きた心地がしなかった…。」

するりと首の後ろに手がのび、キョーコの体が引き寄せられた。

(!)

ぎゅう…と無理な体勢のまま、キョーコを抱きしめる。
切ないくらい苦しくて、幸せな時間を過ごしたのが昨日の夜までなんて、信じられない。
キョーコの胸に何かが込み上げる。

「敦賀さん…ごっ「最上さん」」

謝罪の言葉は蓮によって遮られた。
その代わりにさらに近くなった耳元に囁かれる、低く甘美な声。
耳元にかかる息に、顔が沸騰する。

「…最上さん、お願いだから黙っていなくならないで。君が…好きだ…。もう、君無しではいられないんだ。」




(続く)
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