ヒカル君 4

第4話です。

ゆっくり更新を続けておりまして、申し訳ございません。

えーい、こいつも出演させてしまえ==
なんて、思い切って出している人も…。









光ル君 4




翌日、宮中に出仕してみると、同僚である光の様子が明らかにおかしかった。

「はぁぁぁぁぁぁ~~~っっっ」

「…光殿、如何なされました?」

蓮の問いかけに、ちらりと目線を返すが、再び俯いてにまにまと顔を赤くしたと思うと、また深い溜息をつく。

「はぁぁぁぁぁぁ~~~っっっ!」

「困りましたね。どうなさったんです?心ここにあらずですよ。」
「蓮殿が羨ましい…。」

その台詞を聞いて、一瞬蓮はドキッとする。

「どうしました?そういえば昨日、二条の屋敷にお寄りになったとか…。」

わざとカマをかけてみると、見る見る光の顔がぱぁぁぁっと火照る。

(まさか…)

「蓮殿…私は蓮殿が宴を催されない理由が分かりました。昨日…天女に会い、一瞬で心奪われたのでございます。」

蓮の目の前が一瞬で真っ暗になる。

(やっぱり…)

今まで隠してきたキョーコの存在。
兄の立場を崩せぬまま裳着から4年が経ち、みるみる美しくなるキョーコを誰にも渡したくなくて隠し続けてきた。
ようやく16歳になり、弾けんばかりに美しく輝くキョーコ姫に、自分の理性さえも押さえ切れなくなってきたところだ。

「お願いでございます!蓮殿、姫を…姫を私に下さりませ!」

何と言うことだ。
昨日のキョーコ姫の様子からは全く接点がなかったのだろう。だが、光がキョーコ姫をどこかのタイミングで眼にしたのは間違いない。

迂闊だった…。

チッと小さく舌打ちし、苛立ちを隠す事もなく、すっくと立ちあがる。

(い…今、舌打ちした?蓮殿…が?)

恐る恐る見上げると、元から自分より背の高い蓮が更に大きく見え、怒りを孕んだ冷たい目線で見下ろす。

「光殿…先ほどのお話はお受けできません。」
「……」
「二度とこの話はしないで下さい。…絶対に。」

“ごくっ…”と光が息を呑む音がして、すうっと闇が遠ざかる。

「今日は、これにて失礼する。」

くるりと踵を返し、蓮は宮中を後にする。
残された光は、すとんとその場にへたり込み、赫々と震えた。

(こ…怖かった…。)

威嚇されただけまだいい。
もし、『姫に手を出したら…殺すよ?』なんていわれたら、立ち直れない。
そんなところへ、のんきに頭の中将・貴島が現れる。

「あれ?光の中将、青い顔をして、どうなされた?」
「はっ…貴島殿。」
「ん?どうなされた?」
「いや…、何でもござりませぬ…。」

あの恐ろしい蓮の姿を思い出すと、迂闊に貴島に言う事はできない。

「変な光殿…ところで例の宴の話、蓮殿にした?」
「(ひゅっ!)しししし…しました!が、断られました!」
「ふ~ん、やっぱねぇ…どうにかして蓮殿の子猫ちゃんを拝みたいんだけど、ガードが固いなあ。文も取次ぎやしない。あそこは結束固くて崩しにくいや。ねぇ?…どしたの?顔が赤いよ?」
「いや…何でも…。」

(そうか~、貴島殿が宴を所望されたのはキョーコ姫をいただくためだったんだ。あぶない危ない…。と言う事は、キョーコ姫を見たのは…もしかして、俺だけ?思い出しても心ときめく…キョーコ姫ぇ…)

むふふふ…と、若干さっきの恐怖が遠のいて気持ち良くなる。

「本当に今日は変な光の中将殿だね。それじゃ。」

あくまでも軽い様子で去っていく遊び人…。
自分はあれほど軽くはなれない。
でも、あこがれる部分もある。

気を取り直して、仕事に向かう。
今日は蓮の君が先に退庁してしまったため、一人でこなさなければならない。
まあ、もともと今日の前半は自分が使い物にならず、蓮にすべて任せていたので自業自得といえるのだが…。

そうこうしていると、珍しい客が訪れた。

陰陽道の若きホープ、零乃だ。
光はこの零乃がなぜか好きになれない。

「おい…、ここに参議殿はおいででなかったのか?」

参議殿…、それは蓮の事だ。
蓮の君は近衛の中将と言う従四位の官位のほか、参議と言う正四位の位も持っており、宰相中将と呼ばれてもおかしくない立場であり、実質は自分より上の位だ。
こういうとき、臣籍に下られたと言えど帝のお血筋なのだから、仕方がない。
だが、同い年と言えど、身長も外見も実は仕事の内容も、光は蓮の君に勝ったと思えることが一つもない。
残念ながら、引き立て役に甘んじている…との自覚はある。

「先ほどまでおいででしたが?」
「左様か。お前…秘密の匂いがする…。」

右大臣家の息子、しかも近衛の中将である自分を捕まえて、“お前”とは無礼千万である。だが、この零乃は陰陽師の中でも悪霊払いを専門としており、それは光にとっては穢れの部分。空恐ろしくて仕方ない。

「秘密の匂い…とは?」
「クッ…、秘密の匂いは分かるまい…。先ほど恐ろしい猛獣が放つ匂いに中てられたであろう?さては、闇の猛獣を目覚めさせたな…気の毒な男よ。」

クツクツと笑って、零乃はその場を後にする…
いったい何しに来たんだ?

「ああ、言い忘れた。」

急に戻ってきたので、もしかして口から知らぬ間に言葉がこぼれたのではないかとぎょっとする。

「いや、何も口に出してはおらぬ。お前は心がおしゃべりすぎるので、気をつけよ。」
「…は?しゃべってない?」
「そうだ、心が非常にしゃべるようだな…。それとは別に、参議殿に伝言を頼みたいのだ。貴殿の宝物はいずれ手に負えぬようになる…とな。」
「なっ…なっ…なんと?」
「なんだ?そなたも天女と思うたのであろう?間違いなくアレは人を惑わす。」
「そなっ…そなたっ、見たのか?」

零乃はにやりと笑って優雅に答える。

「見たと言えば見た。見ておらぬと言うなら見ておらぬ。」
「……は?」
「確かに魅惑のオーラを纏ってはおるな…。だが、まあ良い、俺は面倒くさいのは嫌いだ。だから猛獣に関わる気はない。最近の、あまりの妖気が気になって忠告だけはしておこうと思ったのだ。そうしたら…猛獣とセットとは驚いた…。では、伝言を頼んだぞ。」

オーラって何だ?猛獣?光の頭の中は不思議ワードでいっぱいだ。
そんな光の姿に不敵な笑いを漏らし、不思議な言葉も残したままで、ようやく零乃は仕事場を出て行った。

光にとっての長い、長い一日がようやく終わりを告げた。



* * *



「殿、お帰りなさいませ。」

いつものように社が出迎えるが、蓮の様子がおかしい事に気付く。

「どうなされました?殿…………蓮様?」
「社…困った事になった。」
「蓮様?どうなされた?何が困ったのです。」
「姫が…キョーコ姫が見られてしまった。」
「まさか!右大臣家の光殿ですか?」

コクンと頷く。

「申し訳ございません。私の失態です。」
「いや、仕方ないのだ。いつまでも隠し通せるとは思っていない。それよりも…いや、なんでもない。今日はもう休む…。」


つらそうな表情で、寝室に赴く蓮の後姿を見送る社。
社はこの不運な乳兄弟を不憫に思っていた。


蓮の母君である梨壺の更衣・樹里の君は帝のご寵愛を受けながら、出自のせいで周囲からつらく当たられ、寂しい思いをされた。
そのせいで母君は蓮を産み落としてから心痛のあまり病床に伏せられ、十歳ほどにも満たぬ蓮を残して先立たれた。

蓮も寂しい思いをしたはずだ。
いざ元服の折には、東宮の母である承香殿の女御に厭われて、臣籍に降下された蓮。
早速正室にと太政大臣の姫を娶られたはよいが、既に頭の中将・貴島のものであったというとんでもない災難。
受難を受難とも思わず、煌びやかに、そして堂々と成長あそばされた若君。
それからは兄代わりとなり、奏江と共に成長を見守ってきた。

そんな社が唯一驚いたのが、蓮が女人にはあまり興味を示さなかった事。
まさか、前の正室の影響でと心配されたが、それは違った。

樹里の君を失い、母恋しのあまり病に伏せられた幼少のみぎり、吉野に療養に行った先で出会われたと言う女の童。
その女の童に『官位をいただいたら、お迎えに参ります』と約束を残し、京に戻った蓮。

約束どおり、元服して官位を授かった折、吉野まで出向き連れ帰ったのがキョーコ姫であった。

それから4年…蓮はキョーコ姫を妹と称し、掌中の珠のように慈しみ育てて来たのだ。

さっさと娶れば良いものを、何だかんだと理由をつけては婚姻を先延ばしにする主人を見ていると、不憫を通り越して情けない気持ちさえしてくる事もあったが、最近はキョーコ姫のあまりの美しさに戸惑っておられるご様子であったのは間違いない。

京の公達にキョーコ姫を見られたのはまことに大失態。
だが、これがきっかけとなればと社は思わずにいられなかった。




(続く)


さあ、そろそろ独占欲の塊が疼き始めますよ?
次はちょっと回想シーンが入ります。

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