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完全防御(前編)

防犯対策 → セキュリティー強化  の続き的なもの
今回で完結?になります。(多分)

ヘタレたままで、キョコさんの完全防御を成立させてみましょうかね。




“ピンポーン”

「はあい!」

パタパタと、玄関先に駆け寄るキョーコ。
ガチャっと元気よくドアを開けると、腕を組み、いつもは輝くばかりの笑顔とはうらはらに、若干怒りを含んだ面持ちで共有廊下に立っている一人の男。

「…不合格」

その男が発したのは、その一言だった。



完全防御 (前編)



「スミマセン…」
「最上さん、一体いつになったら確認して出てきてくれるの?」
「ハイ…面目もございません…」

招き入れられたリビングで、胡坐で説教をするその男。
今をときめく抱かれたい男No1の俳優、敦賀蓮。

そして、叱られている女。
最近赤丸急上昇中のタレント兼女優、京子こと、最上キョーコ。

当然、叱られているキョーコは正座でしゅーんと頭を垂れている。

「本当に気をつけないとダメだろう?いくら俺だからって、簡単に扉を開けられると困るんだ。」
「敦賀さんでもですか?」
「そう。ちゃんとインターフォンを使ってカメラで確認して。」
「はあ…。」

そういって、プリプリと蓮がお説教をするには訳があった。

下宿先であるだるまやを出て、一人暮らしを始めたキョーコだったが、そこは近所に下着泥棒が横行するような環境だった。
そんな状況を打破するため、アール・マンディの限定下着をキョーコに持たせたことにより、転居を余儀なくされたキョーコ。
どこに引越しを…と考えていたところに蓮が提案したのはマンションの下層階への引越し。

ようやく念願叶い、自分のマンションと同じ敷地内に住むことになったのはいいが、キョーコの防犯意識の低さにダメ出しを行っていたところである。

どこがいけないかと言うと…
 まずは冒頭のチャイムを鳴らすと、相手を確認せずに出てくるところである。
これは、一階のエントランスからはセキュリティーを経由して入るのだが、誰かが通過するときに、さっと入ってくる不届き者がいないとも限らない。
そうなると、エントランスで防げなかった輩が住居スペースに勝手に潜り込んで来る可能性を示す。
そんな不届きな輩がいるかもしれないのに、来客の顔を確認しないで出るなんてありえない。
上層階はエレベーターさえも専用が用意されており認証式の箱だから安心だが、ここはまだキョーコのお財布に合わせた下層階。どんな住人がいるのかさえ怪しい。

次に蓮が気になったのは、キョーコの近所付き合いの仕方だ。
キョーコはほとんど素顔では、『京子』と分かる事がないからか、引越しの際には向こう三軒両隣にご丁寧に挨拶した。
今では、おすそ分けなどを持っていったり、貰ったり…そんなお隣ライフを過ごしている。勿論、愛想のいい家庭ばかりではなく、近所付き合いお断りの家庭もあるようだが、これも蓮にとっては微妙…というか気が気じゃない。

「君は、もう忘れたの?例のストーカー君。ああいう輩がいないとも限らないんだよ?」

それは流石に思い当たる節があるのか、ますます縮こまる。

「だからね?ちゃんと俺だって確認できるまでは、入れちゃダメだよ。」
「すみません…、以後気をつけます…」

上目使いに、みるみる萎れていくキョーコを見て、蓮は深く溜息をついた。

(まったく…、こうやって可愛い顔をして返事をするから、ついつい信用してしまうけど、困るんだよね…もう)

腕組みをしているのは、キョーコをふいに抱き寄せたりしないための処置だ。

実は、蓮はたびたびキョーコの部屋を訪れるようになっていた。訪れたきっかけは、引越しを甲斐甲斐しく手伝って、こうやって同じマンションにいることが嬉しいという、ただ単純な理由。

そして、食事を作ってくれるのはどちらの部屋でも良かったが、自分の部屋からキョーコの部屋に移動する間も心配で、それなら蓮自身が動いたほうがキョーコが危険にさらされる瞬間が少ないと思うようになった挙句に、週二日と空けずキョーコの部屋のチャイムを鳴らす。

それほどまでの警戒振り。

それもその筈…『京子』の周辺では最近、殊に馬の骨率が高くなり、一部の熱狂的なファンが事務所を通じて熱烈なアプローチを展開しデートを申し込む。
それが一般市民のみならず、なぜかキョーコの周りに群がるのは、貴島を始めとする石橋光、村雨泰来など、共演した有名無名人気芸能人ならびに芸能関係者も多いのだ。

それゆえ、共演者キラーと異名までつくようになってしまっていた。

この前なんか、某有名番組プロデューサーに誘われて、スタッフ共々仲良く一緒に食事に行ったのはいいが、帰り際に送るという言葉を無下に断れず、マンションを特定されるまでに至っている。
勿論それは蓮にとって不都合な事ばかりではなく、キョーコを送迎する理由として“事務所の借りているマンションが同じ”と言う理由付けができ、堂々と送迎が出来る面では寧ろ好都合と言える。
…が、周辺へのセキュリティーレベルを上げたにもかかわらず、キョーコ周辺の貪欲な男どもはセキュリティーを掻い潜ってキョーコに接触を試みる。


それは、いまだ告白も出来ずに先輩後輩の位置に甘んじる、蓮の独占欲を刺激するには十分すぎるほどだった。

社いわく、「お前さ、いい加減、その凶暴すぎる独占欲を周囲に振りまいてないでさ、キョーコちゃんに一言言えばいいんだよ」だそうだ。
それが出来ないからこうなってるんじゃないかと思うのだが、今更キョーコに嫌われるほうが堪える。

「最上さん…本当に気をつけないと、気が気じゃないんだ。もう君は駆け出しのタレントなんかじゃない。れっきとした女優なんだから。」

やれやれと言うように溜息をつく蓮を見て、キョーコは頬を染める。
ずっと恋心を自覚してから今まで、何かと後輩の世話を焼く蓮を更に近くに感じる。
これは、親切な敦賀さんの好意、好意…と事あるごとに繰り返さなければならないほどに勘違いの毎日。
でもそれはキョーコにとっては凄く危険な事であり、最近では顔を見ないと落ち着かない。勿論キョーコも表面上は、親しい後輩以上の関係を望む事もなかったのだが…。

(こうやって敦賀さんが部屋に来てくれる事が…本当は贅沢な話なのよね…。)

だが最近は、奏江や千織にまでほとほと呆れられている。

「アンタがそうやって、敦賀さんは紳士だの先輩だの言ってるから、向こうもその一線を越えられないんでしょー!!」
「そうですよ、キョーコさんはもっと自信を持たなきゃ」
「だいたいねぇ、付き合ってもいないのに引越しの手伝いよ?普通はしないのよ!」
「それにほぼ毎日、部室や部屋にあの人が来てるのも不自然なのに、来てないと落ち着かないって…キョーコさんも相当、重症なのにね」
「アンタさあ…、アレが分からないって、相当よね…。イライラする」と、特に奏江は若干引き気味だ。





「・・・分かった?」

蓮がキョーコの頭に手を載せて、ふわりと撫でる。
そんないつもの当たり前の仕草にも、ドキドキと心臓は早鐘を打ってしまう。

「ごめんなさい…」

上目がちに謝ると、ふいに蓮の手が止まった。





“ピンポーン”

チャイムの音に慌てて蓮は手を引いた。

(危ない…今の間は危険だろう…)

「誰だろ…はあい!」
「最上さん!…ああ、もうまた確認せずに…」

その場の空気をごまかすようにするりと抜け出し、言ったそばから確認せずに出て行くキョーコ。
ダッシュで玄関先に向かったキョーコを追うことはせず、そこで引いた手を握り閉めた。


「・・・・・」
「・・・・・」

玄関先のかすかな声に耳を澄ます――――その時



ガタガタッ!ドサッ!!

「…いやっ!!」

キョーコの悲鳴が聞こえた。



(後編に続く)
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