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完全防御(後編)

防犯対策 → セキュリティー強化 → 完全防御(前編) の続き的なもの

さて、キョコさんの危機(!?)に蓮さんが取った行動は…実にベタな展開ですが、お楽しみいただけると嬉しいな。






“ガタガタッ!ドサッ!!”

『…いやっ!!』



神経を集中させた先にその声を聴いた瞬間、呼吸がとまった。



完全防御 (後編)




「うわ!やべえ!本物!」
「すげぇ!!!」

くぐもって聞こえたのはそんな呟きだった。

玄関を10cmほど開けた瞬間に視界に入ったのは、見開いた二つの眼。
一瞬で背筋がぞっとして咄嗟にドアノブを引こうとした瞬間、その眼の下にドアを握る指先が見えた。

“しまった!”

そう思ったときには、二つの眼は四つになっていた。

必死にドアを閉じようとするが、ドアをがっしりと掴んだ男の手に敵うはずもなく、じりじりと膝下をドアの隙間にねじ込まれる。

勢い良くドアが開かれ、その反動でキョーコは思わずノブを持っていた左手を引いてしまった。
その拍子に三和土に思わず膝を付く。
慌てて身を起こしたとき、手前の男がドアノブから離れたキョーコの左手首を掴む。
ざわざわと言いようも無い不快感が手首から背中に走り、鳥肌が立つ。

自分の城であるこの空間で、演技も何もなしに他の男に触られることへの嫌悪感。


―――嫌だ。


それが、来客かどうかなんて関係なくて、
ファンだとかどうだとか関係なくて、

咄嗟に拒否した。


「…いやっ!」





ばんっ!


その時、リビングの扉が空気を振るわせた。

キョーコが振り返るまもなく、一瞬で自分の前から嫌な気配がなくなった気がした。


あっという間に蓮に肩を攫われて、顔は蓮の胸に押し当てられた。
つかまれた筈のキョーコの腕は自由を取り戻し、蓮の右手が男の腕を掴んで離さない。


「…この手は…なんだ?」


ぎりぎりと男の腕が捩じ上げられる。

「ひっ!ち…ちが…」

「この手はなんだと聞いている」

「…つ、敦賀…れ…ん…が、何で…」

もう一人も、蒼白の状態であわあわと腰を抜かす。

「ぐわっ!あがぁっ!!」

キョーコを左腕に囲ったまま、少しずつ玄関の外へ男を押しやると、捻り上げられた腕が相当痛いのか、男が悲鳴を上げた。

その悲鳴を聞きつけたのか、隣の住人が顔を覗かせたらしい。「ひいっ!」と小さく叫ぶ声が聞こえた。

「お騒がせしてすみません。申し訳ないですが、警察とマンションの警備を呼んでください。」

蓮がその双眸を男から離さぬまま、低い声で依頼した。
その険しい横顔と剣呑に満ちた声ですべてを悟ったのか、隣の住人はすぐに部屋に戻り、数分の内にマンションの警備員が駆けつけた。




マンションの警備員に男を預け、警察が来るのを待つ。
その間、蓮の左腕がキョーコを離す事はなかった。

警察が駆けつけてから、少しだけ肩を抱く力は弱くなったものの、一向に離れる気配はなかった。


警察の話から、入室した男は某テレビ局の新人スタッフである事が判明した。キョーコの出演番組のスタッフであったと言う。その男の友人であるIT関連会社に勤務するもう一人の男が、同じこのマンションの住人だというのだ。それも、始めにキョーコが住もうかと考えていた階の住人らしい。
ある日エレベーターの中で、偶然キョーコと一緒になったIT関連会社の男は、あまりの可愛らしさと礼儀正しさのギャップに興奮し、キョーコの大ファンだと盛り上がっていたテレビ局に勤める男にその話をして意気投合し、今日の犯行に至ったようだ。
最も、始めは手荒な事をするつもりはなく、サインでも貰えたらいいくらいの気持ちだったようなのだが、キョーコの姿を見たらそうはならなかったのだろう。

事情聴取をキョーコが受ける間だけは、蓮は辛うじて手を離したが、腕組みをしたまま隣に立ち、終わればまた静かに引き寄せる。

同じ階の住人が、その一部始終を見つめていた。









「…とまあ、そんな事がありました。…事後報告ですみません。」
「ふ~ん…で?」
「それで、昨日…泊めました…」
「ふ~ん…そう。」
「あの…、社さん?」
「いや?いいよ別に…。ちゃんと警察呼んだんだし?社長にも報告済みだし?何の問題もない」
「いえ、でも…」

蓮が淹れたコーヒーに手もつけず、社はじろりと蓮をねめつける。

「そう!お兄ちゃんは怒っている!どうして、こんな写真があちこちにツイートされてるのかな!」

そう言って、社が取り出したタブレットには、蓮の背中が映っていた。

警察の事情聴取の時のものだろう。蓮の広い背中に隠れて見えにくいが、キョーコらしき茶髪の後頭部が見える。そして…左腕は、しっかりとキョーコの背中に回されて…

その所作もさることながら、服装もジーンズとニット風なのがいかにもオフで…“僕たち付き合ってます”または、“僕たち一緒に住んでます”的な雰囲気を醸し出す。
そんな写真を、個人のツイッターや掲示板に上げられてはどう対処のしようもない。

「お前、事後処理…、適当に流しただろう…。これ幸いとばかり、黙認したな?」
「そんな人聞きの悪い。あまりに気が動転していて、お礼は伝えましたが隣の方たちにお願いするのを忘れていたんです。」
「ほらな、お前がお礼をする時点で周囲はどう思うんだよ」
「だって、最上さんにはとても…」
「しかも、この写真も計算ずくだろ。顔とか、角度…微妙にキョーコちゃんを遮って」
「そんなわけないでしょう。偶然ですよ、撮られている事も全く気がつかなくて…」
「いーや!確信犯だ!全くもう…これだから…」
「なんですか?」
「何でもない!!この後のワイドショーの攻撃、覚悟しとけ!」
「事実しか言えませんけどね?」

はた、と社がとまる。

「…まままま…まさか…いきなりお前…」
「なんですか?」
「いやいやいやいや、どんな事実だよ!」
「まあ…それなりの」

しれっと答える。

「おおおお…おまっ…お前、キョーコちゃん泊めて…」

ニコリ…と春の日差しのような笑みを漏らす。

「…まだですよ?」

(!??ふぉぉぉぉ~~~っ…セーフ…)

「今のところはね?」

(うひぃぃぃぃ~~!!?!??)



来客が社と知ってもゲストルームから現れないキョーコ…

それが指し示す暗号なんて社には想像もつかないし、蓮がまだだと言うからにはまだなんだろうとは思う。
けれど、数日中にキョーコの荷物がここに運び込まれるであろうことは既に想定内。
そうなれば、蓮の手中に収まるのはもはや然るべきで…

次に来るだろうスキャンダルに備えなくてはならない。
いや、もしかすると一足飛びで金屏風コースかもとあらゆる状況を見越す。

だがしかし…これで防御の体制は確立された。
馬の骨に完全に知らしめる事となったからには、この強固な体勢が崩れる事などありえない。




“完全防御”



最上キョーコを取り巻く蓮の包囲網は、まさにその言葉が相応しいだろう…




(END)


えっとー、某芸能人夫妻の交際発覚時のものを参考にしてみました。
大好きな俳優さんと女優さんです。
こんな偶然をモノにしなくちゃ、男が廃りますよね?





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Comment

策士
かばぷー様

なんか似たようなことあったな~と思っていたら“某芸能人夫妻の交際発覚時のもの”とのこと。結構前の出来事ですよね、約四半世紀前?歯が命の。(違っていたらすみません(^^ゞ)
蓮さまとキョーコちゃん同居確実で良かったのか悪かったのか…
しかし、やはり蓮さま策士でした。キョーコちゃん頑張れ、ですかね‼
Re: 策士
>ひろりん 様

実はね、ずっとずっと書きたいネタだったんですよ。元々山口さんが好きなので。
本当にかれこれ20年以上になりますよね(思い出すわ…若かりし頃!?)

どうやって書こう。
どうやってネタ使おう?
と思ってたら、ふいに思いついて…。
隣の住人に背中を向けたままで格好良くアプローチできるのは蓮さんだけ!!と思いました。
あとは、現代なら勝手にツイートされても仕方ないかな~?なんて…。
防犯対策がスタートなので、防犯ってことで!

  • 2016-06-06│20:55 |
  • かばぷー URL│
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