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どっちも、どっち?・その後

どっちも・どっち? の続編です。

ちょっと暗めテイストになりました。






どっちも、どっち?~その後~



「前の彼女とは7年間付き合ってたんですけどね、別れたんですよ。ほら、7年も付き合ってるでしょ?もうそろそろ結婚しようと思っていましたし、やっぱりその付き合ってる彼女と結婚するんだろうと思ってたんです。だから、あるとき、占い師に二人の相性を見てもらったんです。そうしたら、言われちゃいました。二人は別れるって。」
「え!?まさか、占い師に言われたから別れたの?」

「いやあ、違うんです。出来ちゃったんです…今の嫁に…だから別れちゃいました。」



「はぁ…?」

キョーコの顔が、女優にあるまじき表情で歪んだ。

(え…ちょっと、待って、待って!ソレは何ですか?7年付き合っている結婚を考えた彼女がいたくせに、他の女とHしてたってこと?)

隣では、プロデューサーがうんうんと頷く。

「あ~~分かるな~~。魔が差すって言うかさ…」

(魔が差す!?)

「据え膳食わぬは男の恥って言うかさ…」

(据え膳!?相手のせい?)

見開いたキョーコの眉間にじわじわと皺が寄ってきた。

番組の打ち上げで、なぜか知らないが結婚を控えたスタッフの暴露話になった。
始めは祝福モードの筈だったのに、結婚するまでどれくらいかかったかとその場にいた全員が暴露し始めたところ、なんだか雲行きが怪しい方向に…

「京子さん、大丈夫ですか?顔、青いですけど…」

ふと指摘された顔色。

「(はっ!)いえ、なんでもないです。あの、すみません。今日はとても楽しかったです。実は明日も早いので、お先に失礼してもよろしいですか?」
「あ…ああ、お疲れ様。じゃあ、次の収録またお願いね?」
「はい、失礼します。」

キョーコは相変わらず美しい礼を残すと、軽やかにその場を後にした。



公共の場で平静を保とうとして、いつになく無表情になる。
そんな表情しか出来ないようでは、女優とはいえない。
タクシーを停めると、キョーコは運転手にあいまいな笑顔を浮かべ、涼やかに笑ってみせた。

行き先を告げ、車窓を流れる光の帯を見つめる。

キョーコが蓮と出会ってから20年が経った。
正式に付き合うようになってから18年…22歳と18歳の若い恋。
順調に愛を育んできたが、20歳のキョーコには順調に仕事が舞い込み、24歳になった蓮はハリウッドへの進出を決めた。
二人の心の距離は縮まったままだが、身体の距離は少しずつ離れていった。
勿論そんなことは当たり前だったし、そのときはそれでよかった。
蓮に愛されていると実感していたし、蓮以外の男性となど考えた事もない。

だが、今日みたいなふとした瞬間に、キョーコの不安は加速する。

(二股…か。そんなに皆が二股って当たり前にするものなのかしら…)

こんな時に限って、20年前の苦い出来事を思い出す。
自分の出生にまつわる暗い過去を知ったのは20年前のことだった。

結婚前にキョーコを妊娠した母。
それを知らぬまま姿を消した父。

御園井と名乗った男にも、もしかすると誰かいたのかもと今更ながら考える。

あれから20年…
今は、母に認められる自分になったと自負している。

助演女優賞、主演女優賞を始め、数々の受賞歴を得た。
今現在は、テレビ・映画を抜け出し、舞台でも活躍している。
CMの女王とも呼ばれた時代もあったし、お嫁さんにしたい女優No1にも輝いた。

そしてその隣には、常に当たり前のようにあった、にこやかに祝福してくれる蓮の姿。


だが、自分は愛されていないのかもと言う不安は、ふいに鎌首を擡げるものだ。
母に愛されていないのでは?という不安も
蓮はどうして自分を愛してくれるのだろうと言う自信のなさも
もうあれから何年も経って、心の奥で満たされていると思っていたのに…

ふうっと溜息をついて、携帯を取り出す。


“…system is not getting the response from subscriber's mobile phone…”


電源を切っているのか、全くつながらない。
仕事中なのだろうか?留守番電話にさえ繋がらない蓮の番号を見つめ、メール画面を起動して、やめた。

この前は半年振りに蓮と逢う事ができた。数日前の事だ。
今までにも1ヶ月、2ヶ月は会えない事もざらにあったが、半年と言うのはなかなか無い。
蓮に空港からファンサービスもそこそこに連れ去られ、文句を言ったのは記憶に新しい。
異国の地で頑張っている恋人を恨めしく思うことさえ無かったのに、こんな風に急に切なくなったときに近くにいないことが寂しいと思わせる。

メールを打ち込めぬまま、目を閉じる。

蓮と出会って20年…片思い期間を経て両思いになった時の喜びは今も忘れる事はない。
蓮から送られる熱い息も、囁きも、キョーコの心を震わせた。
蓮の温もりはキョーコを安心して眠らせた。
蓮に抱かれるたび、女として花開く自分を感じた。

ずっと、ずっと甘えてきた自分

蓮から与えられるものに胡坐をかいてきた自分がいる。

切なくて自嘲の笑みを漏らし、もう一度電話をかけてみる。
繋がったと一瞬思った。


“RRRRR  RRRRR  …Thank you for calling. I'm sorry but I can't answer your call right now. Please leave a message at …”


「情けないなぁ…もう…」

留守電の声にも涙が出そうになる。

タクシーがマンションのエントランスに寄せられ、キョーコは車を降りた。
当たり前のように移り住んだ蓮のマンション。
いつものエレベーターで最上階まで上昇する。

カードキーを取り出し、暗証番号を打ち込むと当たり前に開く鍵。

一人寂しく玄関扉を開け、薄暗いリビングで一人呟く。

「ただいま…」











「お帰り」

ふわり…と後ろから蓮の匂いが身を包んだ。




高鳴る心臓に息が止まりそうになる。

「…ど…して…?」

「ん?なんだかキョーコに逢いたくなったから、帰ってきちゃった。」

まだ、一週間しかたってない。
蓮がアメリカに戻ってから、まだ一週間しかたってない。

だけど…


蓮の胸につつまれて
体温と心音を頬に感じて

胸が苦しくなる…


「…?キョーコ?どうしたの?」

バッグがすとんと足元に落ち、キョーコの腕がぎゅうううっっと、蓮を抱きしめる。

「キョーコ?」

「…何でも…何でもない」

はらはらと落ちる涙に唇を寄せ
キョーコの涙を愛おしそうに掬い取る。



「うん…流石に半年空いた後は…向こうに戻ってからもしんどくて…君で埋まらないんだ…。ごめんね?連絡しないで…びっくりさせようと思ったんだ。」

手のひらに収まる小さな顔をその大きな手で包み込んで、更に口付けていく。

「うん…っ…ひくっ…」

「キョーコに逢いたくて…ダメなんだ。やっぱり…」

「うん…っ」

「この涙は…俺のせい?」

「ううん…っ…ちが…」

キョーコが言い終わらぬうちに、蓮の唇がキョーコの唇を塞いだ。

ゆっくりとキョーコを確かめるように、舌を這わす。
甘くて、切ないキス

初めて口付けた時のように、心が震える…
脳が痺れて、何も考えたくない。


「嘘つき…不安にさせてごめんね?」



“ごめんね”


その言葉がどれだけ心に染み入るか、蓮は知らない。

こんなに待たせたのは自分なのに…
うんと言わなかったのも自分なのに…

それでも、遠い海の向こうから、いつも自分だけを思ってくれる愛しい人

- - - もう、離れたくない


キョーコは、とめどなく溢れる涙を押さえる事もせず、蓮の唇を啄ばんだ。



(終わり)



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  • 2017-03-10│00:28 |
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