魅惑の産婦人科医7

あらー…意外と長くなってしまった。






「キョーコ、送るよ」
「え?いいよ、蓮兄。もう遅いし、タクシーで帰るから」
「だめ、じゃあ泊まって帰ればいい」
「だって、あのお二人…泊まるんでしょう?」
「俺は気にしない」
「だっ…!ダメに決まってるでしょ!大丈夫。一人で帰れる!」

結局、男3人のバカ話にアルコールは必需品で、お茶を濁すだけでは足りなくなり、デートの終わりにそんな押し問答を繰り広げて、キョーコはタクシーを呼んで帰宅した。



魅惑の産婦人科医 7




(ああ、疲れた…)

佐藤さんと鈴木さんと会ったことも予想外だったが、蓮の友人医師の毒気にも当てられたといっていい。特に貴島医師…。隙あらば蓮の尻に手を伸ばし、撫でる。それを見て「懲りないね」と笑う社医師。そんな風な友人を口では何だかんだ言いながら、部屋に上げる蓮兄。

あの二人はどうなっているのだろうと、ちょっと興味が湧かなくも無い。それに、貴島の「ご用命」にも吃驚した。
しかも、蓮兄がトイレに立った一瞬の隙に、「キョーコちゃん、俺、両方イケル口だから、敦賀に飽きたら連絡頂戴」なんて、名刺を滑り込ませてきたのも吃驚だ。

恐ろしい…

まさか両方…って、蓮兄もそうなのかと思ってしまう辺り、キョーコも一応“出版業界”の人なのだ。
しかも、蓮兄は自分のことを隅々まで知っているのに、自分は全く蓮兄のことを知らない。
それもまたキョーコにとっての不安材料で、何故自分の事を蓮が好きなのか分からない原因となる。

「あ~あ、年上の女性と遊んでたのか…なんかショック…」

帰宅して部屋に入った途端、そんな言葉が漏れた。

「あれ…?」

気付かぬうちに、涙が頬を伝う。

(私…泣いてるんだ…)

今日は楽しかった。幸せだった。
でも、知りたくなかった…。

今更ながら“素うどん”と呼ばれたことや、“蓮兄の経験値”を聞かされた事が自分の心の削傷となってしまっている事に気付く。

蓮兄がどんな気持ちで自分と付き合っているのかを理解できない不安が押し寄せて、堪らず胸のネックレスを指先で確かめる。

(…蓮兄の気持ちが分からない…)

キョーコが、今大事にされているのは分かる、でもこの先は?ずっとこのまま?
そんな気持ちがムクムクと湧き上がってきたのも事実だった。

「しばらく、連絡…やめてみようかな…」

まるで、蓮の寝室にいるような本来の自分の寝室。
キョーコは、「えいやっ!」とシーツを剥ぎ取った。





「敦賀先生。眉間に皺が寄っているわよ。」
「…」
「あ~あ、いい年した大人が、何拗ねてるの。シャキッとしなさい。」
「…」

不躾に遠慮なく言うその口は、看護師長だ。
年齢不詳のこの師長、見かけだけは若くて可愛いが、実はかなり熟達した切れ者。敦賀クリニックの采配には無くてはならない女性だ。

「だから、言ったでしょう?蓮ちゃん。女の子の扱いには気をつけなさいって。」
「…テンさんに言われたくないです。」
「ふんだ。で?一週間連絡が無いくらいでその体たらく?情けないわね。キジーに何かされたんじゃないの?」
「もう、10日です…。貴島の線を疑ってみましたけど、社さんもいたので大丈夫だと思いますが。」
「ヤッシーもキョーコちゃんの肌、好きそうよね?キョーコちゃん綺麗だもの。だけど蓮ちゃん、あなたどんだけ見せびらかして餌ばら撒いたの」
「(ム…)ばら撒いてません」
「じゃあ調子に乗って、ほいほい趣味晒したの?普通の娘なら引くわー」
「だから、今凹んでいますから、追い討ちをかけないでください」
「ダーリンもねえ、心配してたのよ」
「教授が?」
「そうよ~。過保護じゃないかと思う位ね。ダーリンが蓮ちゃんに入れ込んでいる気持ちは並大抵の事じゃないから。」

ダーリンこと、宝田氏は大学病院の院長だ。
大学での教鞭も執るこの有名外科医は、何かと蓮に肩入れをしていた。外科でも優秀な成績を残していた蓮を、外科医として育てたい意向を示していたが、産婦人科医を志望した蓮の後押しをし、今回の開業に当たっても、何かと親身になって世話をしてくれ、テンを師長として送り出す事も厭わなかった。

「蓮ちゃん、拗ねてないで連絡を入れなさいよ」
「してますよ。…つながらないだけで…」

あら、重症ね。見限られたのかしら?というテンの呟きに、更に地中深くに沈み込む。

「まあ、そのうち連絡あるでしょうよ。ああ、もう忘れるところだった!佐藤さんと鈴木さんが急に辞めちゃって、シフトがいっぱいいっぱいなのよ。早いとこ人員補充お願いしますよ。敦賀先生!」

「了解」

それを聞くと、看護師長はにっこり笑って部屋を出て行く。
もうすぐ勤務時間は終わり。日勤の看護師が片付けを始める時間だ。

そのとき、胸元の携帯がブブブッと着信を知らせた。

ポケットから取り出した携帯の画面を見て、蓮の口元が緩む。


“今日、診察後にお邪魔していいですか? キョーコ”


食い入るように画面を見つめる蓮の顔が、言いようも無く崩れたとしても、それを怪訝に思う人間は、既に敦賀クリニックにはいなかった。



(続く)
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

かばぷー

Author:かばぷー
ス/○/ビ大好き!
脳内妄想☆大暴走中
思いついた言葉を書き連ね
作品置き場にしています。

☆当サイトはリンクフリーではありません☆
二次ルールを守っておられる「ス/◯/ビ」二次サイト様に限り、相互リンクさせていただきたいです。お手数ですがリンクを貼られる前に必ずご一報ください。尚、原作者様の作品画像やアニメ画像を無断掲載をされているサイト様からのリンクは固くお断りさせていただきます。
(リンクはトップページにお願いいたします)

ようこそ
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
リンクご案内
ちょび様
陽のうらうらと
ピコ様 Bubble Shower
sei様
風月様 popipi様 ちなぞ様 惣也様