Beautiful Vampire 6

いつもよりスピードUP投稿をしてきました。残りは二話となっております。
我輩にはちょっと控えめ仕様なので、さらっといっちゃいましょう。







Beautiful Vampire 6




最終話撮影当日
キョーコは現場のスタッフがいつも以上に慌しくしていると感じた。

絢子のメイクを施している間にも高まる緊張感。

配役は既に決まっており、回想シーンの男の手のみが映し出された回の放送も終えた。
その手のシルエットは、キョーコの心を躍らせるには十分な情報を与えていたが、なにぶん意図的に曖昧にされたその手の表情は、視聴者に期待を持たせ、キョーコには確信を持たせなかった。

どこか遠くで悲鳴に似た歓声が上がり、その声はキョーコの心を落ち着かせる。

「はい、仕上がったわよ。今日も綺麗ね、肌コンディションも最高」

メイクさんの言葉にすうっと眼を開けたとき、鏡の中に映るのは、妖しいほどの美しさを湛えたヴァンパイア…

“絢子”


「ありがとうございます。今日の俳優さんが到着されたようですので、ご挨拶に伺います」

にっこりと絢子が微笑むと、化粧を施した筈のメイクさんまで頬を染めた。



キョーコがスタジオに入ると、ピンッと空気が変わる。
監督と談笑する共演の俳優の前にすっと立ち、丁寧に腰を折った。

「おはようございます、敦賀さん。今日はどうぞよろしくお願いします」

「…おはよう、最上さん。共演できて嬉しいよ」

にこやかに微笑む先輩俳優がそこにいた。


* * *


財界、政界が一同に集まる盛大なパーティ

絢子はそこに社長秘書として同席していた。

(…感じる…)

いつもとは違う空気。
有能な彼女は言い寄る男をあしらいつつ、秘書業務を怠らない。

だが、違和感を覚える。
その違和感は決して不快なものではなく、寧ろそれは懐かしく暖かいもの…

そこに感じる―――視線

彼女を舐めるような色のついたものではなく、もっと真っ直ぐに感じる“愛情”
そう、絢子はこの視線を知っている。
そして、この匂いも知っている。

渇いて仕方がない喉も、心も、匂いだけで満たされていくようなそんな感覚。


  ---ナカマガイルヨ?

  ---ホシイ…?アゲルヨ?


ゴクリ…と渇きに耐えかねたように喉が鳴った。

弾かれたように振り向いた時、視線は流れるようにその“男”を捜す。
一瞬で…視界にはこの人しかいないと思えるほど一瞬で絡まる視線。

穏やかに、そして美しく佇む“彼”

絢子と視線が絡まるのを待っていたように、男は薄く微笑んでその一歩を踏み出した。



「カーット!はい!OK。 いいねぇ~敦賀君、流石だよ。見とれちゃった。」
「ありがとうございます」
「京子さんも、この緊張感、ゾクゾクする」
「そう言っていただけて嬉しいです」
「うん、振り向いて貰えるかどうか分からなくて、緊張した。」
「そんな…」
「二人の間合いは、僕が言わなくてよかった。絶妙なタイミングで振り返ってくれたね。次のシーンもすぐに行くから、頼むよ」

二人は「はい」と同時に返事をした。


* * *


パウダールームで鏡の中の自分を見つめる絢子。
自分は綺麗だろうか?あの人をがっかりさせたりしないだろうか?
絢子の思いが自分と重なる。

非情なまでに男の生き血を啜ってきた絢子。
男は一時の渇きを潤す餌でしかなく、そこには一滴の想いもない。

だが、“彼”は違う。

 ―――ホシイ…ホシイ

 ―――――――…ホシイ

魂が彼を求め、身体全身が沸騰するようだ。
火照る身体を悟られぬよう、パウダールームを後にすると、ロビーに彼がいた。

柱に身を預け、視線を絢子に向ける。
その姿を見ただけでも、足がすくんで動けなくなる絢子の元へ男は再び、ゆっくりと近づいた。
先ほど自分の社長に挨拶をした時のように、優雅な仕草で、一歩一歩近づく。

「…随分と綺麗になったんだね。見違えた」

自分に向けて発せられる低音は、脳を直撃する。
先ほどの挨拶から、ずっと絢子の脳はその音に痺れたままだ。

そんな絢子の戸惑いを知っているのか、大きな身体を少しだけ折って、耳元に唇を寄せた。

「待っている」

立ちすくむ絢子の胸元に静かに忍ばせられたのは、ホテルのカードキーだった。





パーティーがお開きとなる時間、既に彼は会場にはいない。
次々に与えられる挨拶も、社交辞令も、もはや絢子には意味を持たない。

エレベーターで一人になった絢子が押すのは、上層階のボタン
押した番号の背面が光り、静かに動き出す箱
無機質な音を響かせて開いたドアのその先に、ハイヒールが一歩を踏み出す。

部屋の前に立ち、カードキーを取り出したとき、その扉は勝手に開いた。

「…お帰り…」

(ずるい…)とキョーコは思った。台本にそんな台詞はない。完全な蓮のアドリブだ。
台本の『どうぞ…』といわれてそのまま無言で部屋に入る流れが、そこで途切れた。

絢子の目から、一筋の涙が流れる。

「…ずるい」

絢子は右手を“彼”の頬に滑らせた。
今まで無表情を貫いてきた絢子が、劇中、はじめて涙を流した。
切なくて…苦しくて…漸く逢えた魂の半身がそこにいる。


「生きて…生きててくれて、ありがとう」




(最終話へ続く)
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