Beautiful Vampire 7

最終話になりました
上手くまとめたつもりですが、気に入っていただけるといいな。






Beautiful Vampire 7



「顔を良く見せて…」

ベッドに腰掛けた男の膝に、絢子が座る。
腰を抱かれたまま、男の顔に手をやり、じっと顔を見つめる絢子。

本来ならこのシーンの撮影は、スイートルームのリビングで行われる予定だったが、今は既にベッドルーム。場所もお互いソファとその背もたれに座る構図がベッドと膝の上に変わった。
それだけでも、スタッフはドギマギする。

それなのに、監督は何も言わない

これまでも、キョーコの相手俳優のアドリブに付き合ってきたこの監督は、余程大らかというのか、それとも懐が深いというのか…。



   *



「…いつ、戻ってきたの?」
「少し前だ…政界に先に繋ぎをつけておいたんだが、間違ったか?」

絢子はゆっくり首を横に振る。

「そうか…今のお前に相応しい立場をと思ったが、随分と長い間、待たせたようだな。」

切れ長の瞳が絢子を捉えて離さない。

「すまない…予定外にお前を待たせてしまった…」

真剣な瞳で見つめられ、絢子の瞳が揺れる…

「お前は俺をどうしたい?」

絢子の動きが一瞬止まる。

「この身は既にお前のもの。お前に選択権を与えよう。」

(このまま口付けたい…)

それは、絢子の想いだろうか?それとも、最上キョーコの願いなのだろうか?

“愛しい人…”

病という死の淵にある絢子に、吸血という行為で永遠の“命”を与え、戦地に赴いた男

空に飛び立った男は、海に消えた

ただの吸血ならば、同じ吸血鬼となることはない。
夢を見させ、一瞬の快楽を与えるのみだと、絢子が知ったのは随分と後のこと。

だが“彼”は与えたのだ。

絢子に永遠の“命”を…

いつ果てるとも分からない、永遠の時を共に刻む相手として、絢子を選んだ。
それが分かるまで、気の遠くなるような時間を一人で過ごしてきた。それは即ち、男は絢子に出会うまで、ずっと一人で気が遠くなるような時間を過ごしてきたことを意味する…

その男が言ったのだ。選ばせてやる…と。

『共に生きるか、共に果てるか…』

絢子の瞳が赤く輝く

それを見て、男は口角を上げると一言だけ呟いた

「…好きにしろ」

自ら目を閉じる。
絢子はその両の手を、指を美しい男の顔に這わせる。
眉を、瞼を、鼻を、耳朶を…一つ一つを確かめるように、慈しむように撫でる。

その瞼の奥に潜む瞳の熱に吸い込まれるような錯覚。
やがて美しい男の唇に、絢子は自分を重ねた。
柔らかな唇を確かめるように、唇を啄ばんだ。
深く、深く…
絢子の睫毛から一筋の涙が落ち、それが男の頬を伝う。
互いを求める気持ちはもう隠す事ができない。
その気持ちは絢子のもの?


・・・それとも・・・


こうして、美しいヴァンパイアの物語は幕を閉じる


ドラマの最初から、最後まで、一貫して男を翻弄し続けた絢子。

その役柄とは裏腹に、濃厚な吸血シーンでも、キスはおろか、直接相手役の肌に唇が軽く触れる事さえしなかった。
どんな場面でも相手役に呑まれることなく、淡々と場面を紡いだのはヴァンパイアに相応しい、妖しい魅力を秘めた、若く美しい女優、京子。

その女優が初めて見せた絢子の涙。
そして、彼女が求めた初めての唇。


それを引き出したのは…やはり美しきヴァンパイア

敦賀蓮

…その男だけだった。




(FIN)




お付き合いくださいましてありがとうございました。
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コメント

これでドラマの中の二人の人生には

未来へと続く道が見えましたね。

さてさて、女優として俳優としてではない二人の方はどうなったのでしょうね。

キョコさんもでしょうが・・・蓮さんキョコさんからの熱烈なキスで昇天したんじゃ・・・笑 ←演技中は俳優としてちゃんと動いているけど、そこから離れたプライベートの男としての思考は大変なことに?

Re: これでドラマの中の二人の人生には

> まじーん様

お越しくださり、ありがとうございます。

> さてさて、女優として俳優としてではない二人の方はどうなったのでしょうね。
どうなっちゃったんだろう…そこまで今回は考えてなかった…(汗)

> そこから離れたプライベートの男としての思考は大変なことに?
多分そうなんでしょう!
いや、絶対そうなんでしょう!!
「え!?そうくる?それは…最上さんとしてのキス?それとも…絢子としてのキス?」
なんつって、迫り来る色男が見えそうです。
でもなー、スイートだしなー。
そのまま、「ここ、使っていいですか?」なんて、撤収後に有無を言わさず…なんてあったりして…(はっ!妄想!控えなくちゃ。)
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