愛しい朝約束の時 3

第3話は、キョコさんが大人になって、冴菜さんといつかはこうなるといいなあって妄想。







愛しい朝約束の時 3




「なあ蓮、キョーコちゃん、遅くないか?大丈夫なのか?」
「いや、でも社さん、流石に義母さんも行ってますし、女子トイレまでは」
「クオン、お前、何か聞いてないのか?」
「いえ、俺は何も」
「もしかしたらになるが…心当たりは?」

「…ない訳がないですよ。」

男三人が、顔を突き合わせて心配そうに入り口を見つめる。

「そうか、まあ心当たりがない訳ないわな。だが、最上君がきちんと言うまで待ってやれ。最近のお前は辛抱が足りん。」
「すみません、自覚しています。」
「本当に気をつけろよ、アメリカでの敦賀蓮…いや、クオン・ヒズリは年相応だったから、俺も心配してる。」
「酷いですね、社さん。」
「何を言うか。このだだ漏れ男!これじゃあ、離れた後も先が思いやられる。」

その言葉に、クオンは一瞬動きを止めた。

「やはり、そうなりますか。」
「まあ、そうだな。社は日本に呼び戻す。こいつが退職してまで敦賀蓮のマネージメントをすると言やあ別だがな。お前が日本で仕事をするときには一番に当ててやるさ。」
「すまん、蓮。ずっとついていてやれなくて。」
「いえ、本当に長い間、社さんにはお世話になりました。言いようがありません。」
「うん、お前のマネージメントが出来て、本当に良かった。充実していて幸せだったよ。キョーコちゃんと幸せになってくれ。」

クオンと社は、がっちりと硬い握手を交わした。

長年…17歳で日本に来たときから、陰日なたなく自分に良くしてくれた男性。兄のように、友のようにいつも万全のサポートをしてくれた頼れる相棒。
自分にキョーコとの未来があるように、この人にも別の未来を返す日が来た。
そして、この偉大なる恩人とも

「社長、あなたには感謝してもし尽くせません。先が見えなくなって、自暴自棄になっていた俺を、あなたは救ってくれた。そして、未来を…未来を手に入れていいのだと、あなたは教えてくれた。本当になんとお礼を言っていいのか。」

社長は葉巻を燻らすと、「ん?」と言って、外を見た。

「湿っぽいのは無しにしようや。この先会えないわけじゃないし、ガラじゃないだろう?寧ろ、こっちがお礼を言いたいくらいだ。面白い愛のドラマ!しかも、どんでん返しまで見させてもらえたからな。」

食えない笑いを浮かべる社長に、クオンは蓮として頭を下げた。





ようやく涙を止めたキョーコは、「えへへ…お化粧が落ちました。」と笑って冴菜を見た。
その表情は女優・京子であり、冴菜の知らないキョーコの顔。

(これが、私の娘)

過去を呪い、許されぬほどに遠ざけ、拒絶し続けた。
それでも、自分を諦める事を諦めるといった娘。
穏やかな顔で『その時は、頭を撫でてもらっていいですか?』と、そう言った娘はもういない。

芸能界という表舞台に立ち、昔と変わらぬ笑顔の娘はいつのまにか輝くばかりのオーラを纏い、脚光を浴び、名声を得て誇らしげに静かに大人になった。
自分の成し得なかった事を手に入れた、あの小さかったキョーコが脳裏を掠める。

すっと冴菜は右手を伸ばす。

「これからも頑張りなさい。けれど、困ったらいつでも戻ってきなさい。」

そう言って、キョーコの頭をゆっくりと撫でる。

「まぁ…あの男、あなたを一生離しやしないでしょうけど。」

その言葉に、仕草に、再びキョーコの涙腺は緩み、思わず母の肩に頭を置いた。
冴菜は自分より背の高いキョーコの後頭部を撫で続けた。
それはまるで、失った時間を惜しむように…。



やがて、化粧室から戻った二人は、何事もなかったようにソファーに腰を下ろした。

「大丈夫なの?」

心配そうに久遠が聞く。

「ごめんなさい。大丈夫です。社長にも社さんにもご心配をおかけしまして。」
「…いや、気にせんでいい。どうやら、お母さんとのお別れもきちんとできたようだな。」

何もかもを見透かしたような社長の言葉に、思わずキョーコの頬が緩む。

「はい。ありがとうございます!」

いつもの元気な笑顔が戻る。
泣いた後はいつもすっきり!綺麗に化粧直しをした後でも、クオンはその表情で泣いた事に気がついていた。
浮かれていた自分が情けないと思い、気を引き締める。

こうやって、キョーコはいつも自分を知らぬうちに育ててくれる。
何があったかはこれからゆっくり話してくれるだろう。


これからの時間、大切な時間を二人で紡いでいく。
それは変わらない確定事項。

けれど、約束の時…その時は訪れる。

“敦賀蓮がクオン・ヒズリに還る日”

それが今日
記者会見をクオンの姿で行う事の意味を、育ててくれた日本の皆さんは感じてくれただろうか。
敦賀蓮を育てた恩義有る日本を離れ、自分の国に帰る。

今なら、クーが保津周平の葬儀を出した意味も分かる。

だが、湿っぽい感傷は一瞬でいい。
最上キョーコという最愛の伴侶を得て、これからより輝くために、より大きく羽ばたくためにこの日があるのだ。

社長が笑みを浮かべてクオンを鼓舞する。

「さあ、クオン、門出の時だ。お前が日本で得たもの、お前が掴んだ物を世界に見せて来い。そして、振り返るな!前に、光に向かって進め!」

クオンの瞳が輝いた瞬間を、社長と社が誇らしげに見つめた。
それは、同時にキョーコの瞳も、輝いた瞬間だった。



(4へ)
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コメント

あぁ~っ(*´ω`*)
なんかあっかいものが込み上げてくるーっ(*´-`)
社さんとお別れする……なんて考えてもみなかったけど、そっかぁーあり得ないことじゃないんだねぇ(;_;)
しかも冴菜さんがとっても「お母さん」だぁーーっ(´;ω;`)
とっても素敵……うん。きっとこれも決してあり得ない未来なんかじゃない!

はー♡ほっこり切ないあったかさをありがとうー♡
次話も楽しみに待ってまーす(*^^*)
Re: あぁ~っ(*´ω`*)
> popipiさま

ほっこり、切なく。
甘封印後は、近未来のお別れを書きました。
きっといつかは…なんて、ちょっとしんみりと。

冴菜さんもこれくらいはしてくれるんじゃないかと思います。
だって、キョコさんは冴菜さんの想像の上を行く女優さんになるはずですからね!!

お楽しみいただけたようで、何よりです!
  • 2016-10-11│19:27 |
  • かばぷー URL│
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