Osmanthus

季節がら、ふっと降りてきました。






Osmanthus




車から降りた瞬間、キョーコはふわっと香る懐かしい空気を嗅いだ。

「…金木犀」
「ん?どうしたの、最上さん」

キョーコが住むマンションのエントランスに程近い路上。
蓮が窓を下げ、立ち止まるキョーコに声をかけた。

「あ、何でもないです。今朝は感じなかったのに、さっき金木犀の匂いがして。」
「金木犀?」

蓮も興味深そうにあたりを伺う。

「あ…この匂い、Osmanthusだね。」
「オス…?」
「Osmanthus fragrans 英語ならA fragrant orange-colored olive 確か、香水の原料になるんじゃなかったかな。」
「そうなんですか?私、この匂い好きなんです。」
「…そうなの、初めて聞いた。」

(あ…今、データインプットした。)
助手席の社はふと思った。

「じゃあ、最上さんが好きなら、今度アルマンディの撮影で海外に行ったとき、金木犀の香水、探してみようか?」
「いえっ!滅相もございません!!お気持ちだけで十分です。それに…」
「それに?」
「その…金木犀が御不浄の匂いだっていう方もあるので、あまり…その…」
「ゴフジョウ?」

それって何だ?護符…状?ゴフジョウ…後で調べておこう。

「でもまあ、好きな匂いがあると分かってよかったよ。」
「えへへ、だって甘い匂いがしませんか?なんだかホッとするような」
「うん、そうかもしれないね。そうか、そんな季節になったんだ。」
「はい!1年って本当に早いです。でも、去年は金木犀の香りに気付いてなかったような気がします。」
「そう?何か変わったことがあったのかな?」

その問いかけに、キョーコはえへへへへっと笑った。

「敦賀さん、今日も送っていただいてありがとうございました。お気をつけてお帰りください。」
「どういたしまして。さ、行って?」
「はい!失礼します!」

ぺコンと、勢いよく腰を90度に折り、駆け足でエントランスの中に入っていく。二枚のガラス戸の向こうで、もう一度キョーコが振り返り、挨拶するのを確認してから、エンジンをかけた。

「蓮、お前、次のロケは金木犀の香水か?」
「いやですね、社さん。」
「何?決定事項だろうに。」
「ええ、まあ。偶然リサーチできたのは嬉しかったです。」
「へーへー、ご馳走様」
「ロケに出たら、また最上さんのマネージャー…するんですよね?」
「さー…どうかねぇ。嫉妬深い男がいるからなー。でもほっとくと馬の骨、増えるしなー、どっちがいいかなー?」
「またそんな、意地の悪い。からかわないでください。」
「へーへー、まあでも、お前の逆鱗に触れない範囲で仕事するからな。変なヤキモチ焼くんじゃないぞ」
「…了解」

金木犀の仄かに香る夜の空気の中、蓮は車を発進させた。




キョーコはベランダの窓を開け、車のテールランプが遠ざかって行くのを見つめた。

最近、いろんな物が色づいて見える。

景色は季節ごとに輝き、色彩を放つ。
木々はそれなりに美しく、雲もそれなりに美しい。

花の匂い、緑の煌き、風の音、星の瞬き…
すべての物が微笑みながら自分に語りかけるような錯覚
 
そしてその向こうに感じるあの人の姿

キョーコは頬を染めて、テールランプを見送った。




(おしまい)



ある日の夜、仕事帰りに車から降りたとき、ふっと香った瞬間に生まれたもの。
なんとなく、ほわっとした感じで読んでいただけると、嬉しいな。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

もうそんな季節Σ(゜Д゜)

金木犀、いい香りですよね。私も大好きです(*´∀`)

すごく素敵なお話でした。キョーコさんが、いい恋をしているなあって(*^^*)蓮さんの、「さあ、行って」も好きです(*´∀`)

……あ~。ほんとにいいなあって思ったのに、それを伝える文章力がありません(・・、)

Re: もうそんな季節Σ(゜Д゜)

> ぽてとたべたい&ぽてとあげたい

ふわっと香っちゃったんです・・・ある夜のぬるい空気の中に。
そしたらね、ふと降りてきたのです。

気に入ってもらえて嬉しいな。
ちゃんと伝わってるよ。ありがとー

うふふ

金木犀、良い香りですね!
ここ何年か、金木犀の木欲しい→マンションのため、地植えじゃなく鉢植えとなり、成長キープが必要。でも鉢はある程度大きくないとダメらしい→一年に1回のお楽しみのために大きめサイズの鉢植えを増やしたくない→やっぱり香水?でも、御不浄(笑)の匂い扱いされるし〜→安い香水の方が金木犀単体の匂いに近いみたいなので、それでも嗅いで我慢するか〜となってます。
(*´∇`*)ハハハ

ふわっと香る金木犀から生まれたお話、楽しゅうございました。

Re: うふふ

> まじーんさま

はい。金木犀の香り、期間限定な感じが好きなんですよね。
我が家では小さな頃から金木犀が香ります。
小さいころは小さなボトルにあの小さなオレンジの花を詰めて、においを嗅いでいました。
母は嫌がりましたけどね…えへ。

お楽しみいただけてよかったです。

プロフィール

かばぷー

Author:かばぷー
ス/☆ビ大好き!
脳内妄想☆大暴走中
思いついた言葉を書き連ね
二次作品置き場にしています。

☆当サイトはリンクフリーではありません☆
お付き合いある「ス/☆ビ」二/次サイト様、マスター様のリンクをいただいています。リンクをご希望の場合、お手数ですがリンクを貼られる前に必ずご一報ください。尚、原作者様の作品画像やアニメ画像を無断掲載をされているサイト様からのリンク、多くのサイトを無断で紹介されているサイトは固くお断りいたします。

Attention!
The all of this are NOT related with the Author and/or the Publisher. Not allowed to permit from all illegal actions by the website rules. No reproduction and/or republication without any written permission from blog author and/or web site owner.
Each blogs has the copyright after publication showing on the web site and each web page by the author.
注意!
この中の全ての物は、原作者及び出版社とは関係ありません。
ウェブサイト会社規約、全ての違法行為を禁止します。著作者の許可なく摸作・転作などの行為を禁じます。
各ウェブサイト又は各ブログ執筆者により書かれた、もしくはデザイナーに描かれたそれらの創作作品は、公共へ配信された時点で著作権は著者が所有しています。 

ようこそ
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
リンクご案内
ちょび様
陽のうらうらと
ピコ様
sei様 風月様
popipi様
ちなぞ様 ぞうはな様