Peach Time 4

4話ですよ。
そろそろ…路線が変更になるかな。




「せ、せせせ…先生~…」
「ん?何?」
「こっこっこっ…ここここ…」
「どこかにニワトリ?」
「いや!こここ…この最新刊」
「うん、だから何?」
「はっはっはっ…」
「おや?今度は散歩中の犬?」
「はっ…ははははは…破廉恥ですぅ~!!!」

蓮はにっこりと笑う。

「そりゃそうだよ。官能小説だもん」



Peach Time 4




住み込みを始めて一週間がたった。
初日に大失態をしでかしてから、その後は大きなトラブルもなく、今後の参考にと貸し出しを願った数冊の小説。
勿論キョーコが未経験な事は初日に発覚。
無理そうなら辞めてもいいといわれたが、最上キョーコ、19歳、現在無職
背に腹はかえられないのだ。
せめて次の職探しが軌道に乗り、貯金してアパートの敷金が貯まるまでは頑張らないといけない。

残念な事に家事の手際がいいキョーコは、5時間も掛からず家事業務を終えてしまい、アルバイト代も伸びない。蓮からは、「真面目だねぇ」と呆れられるが、住み込み雇用という契約上、だらしがないところなんか見せたくない。

何とかアシスタントとしてのスキルアップを果たし、上乗せ能力給の支給を目指すぞ!と、こうやって蓮の作品にチャレンジするも…あえなく撃沈。

やたら滅多ら性描写が多く、いくら未経験のキョーコでもその状況を容易に想像できてしまい、文字自体を正視できない。
あーんなことや、こーんなことが脳裏に浮かんで、まともに読めるどころの騒ぎではないのだ。

「だからね、無理はしなくていいんだって。受け付けない人もいるジャンルなんだから」
「いえ!でも、それを生業となさっているからには、アシスタントの私が全く存じ上げずにお手伝いするわけには参りません!」
「本当に律儀と言うか、何と言うか…参るな」

半ば本気で呆れたように呟いた蓮は、前髪をゴムで結び上げると、パソコン画面に向かった。
こうなると、一気に仕事モードに入ってしまい、蓮は猛スピードでキーボードをたたき始める。

仕事モードに突入した蓮の横顔を、キョーコはじっと見つめた。


はじめに惹かれたのは、声だった。
甘く響く声を聞いて、心が震えた。

次に好きだと思ったのは、匂い。
ふわっと香る匂いは、男性経験のないキョーコには恐ろしく直感的なもの。
高校の時もさして気にしたことのなかったソレが、急速にキョーコの心を蝕む。

最近、好きだと思ったのは指先
パソコンを打つ長く骨ばった指先が目に焼きついて離れない
綺麗な箸使いにも見とれてしまったのはつい3日前の事。

色恋とは一切無縁の生活を送っていた筈のキョーコなのに、“敦賀 蓮”という人の持ち物だけで、心が引き止められてしまっていた。

超絶男前なことも先日気がついたばかり。あれだけ集荷に通っていたのに、全く意識してなくて、現実は予想を超えてイケメン過ぎる。
綺麗な鼻梁、すっきりとした口元とあごのラインは見えていたはずなのに、眉から切れ長の目に至る配置が足されると、それはもはや芸術品といっていい。

(どうして先生はいつも長い前髪で隠してるのかしら。お仕事中みたいに、もっとすっきりなさったらいいのに…)

そんな事を思いながら、綺麗な横顔をぽや~っと見ていたら、電話が鳴った。

「はい、もしもし?」
『あ、LME出版の社ですが、もしかして君、新しいアシスタントの子?』
「いつもお世話になっております。先週からこちらに伺うことになりました、最上と申します。今日はどのようなご用件でしょうか?」
『ああ、はじめまして、担当の社です。樋摺先生の進行具合はどうなってます?来週入稿の120ページ』
「今、作成中で、半分済んだところです」
『そうなの、それなら今日中に一度伺います。ウ~ン、時間は未定。樋摺先生に伝えるのは、休憩に入ってからでいいから、伝言頼める?』
「はい、分かりました」

一旦電話を切り書斎に向かうと、電話があったことなど意に介さないように、一心不乱にキーボードを叩いていて、キョーコは声がかけられなかった。





「よしっ…!く~…」

椅子の背もたれで思いっきり背伸びをすると、不意に声がかけられた。

「終わりました?」
「ね?終わるまで声かけたって無駄だって言ったでしょ?」

「社さん、いらしてたんですか。」

「ああ、ご苦労さん、原稿一旦チェックしていい?」
「どうぞ」
「先生、お疲れ様です。ご飯出来てますが、こちらにお持ちしますか?」
「いや、そっちに行くからいいよ」

そういって、食卓に移動した。

「は~…生き返る…」
「あの~、先生、7時間も飲まず食わずでお仕事って、きつくないですか?」
「まあ、集中するときにはそんなものだよ。浮かんだときにしか書けないんだ」
「肩凝り、酷そうです。」
「職業病だね。今日も美味しかったよ、ご馳走様。」
「お粗末さまでした」

そんな会話をしていると、書斎から声が掛かった

「おお~い、蓮、ちょっとここ!ここなんだけど~」
「はい、今行きます」

肩を押さえながら首を回して歩く姿は、この一週間で何度か見た。きっと酷く辛いんだろうと思う。

打ち合わせの間に洗い物を済ませ、お茶の準備をして書斎に向かった。

「失礼します」

二人は、返事もせずに原稿を見て議論中…なのにちゃっかり出されたコーヒーと茶菓子に手をつける、編集の社さん。

(そういえばこの人、さっき先生のことを“蓮”って呼んでたな)

「新しいアシさんに無理は言えないかもしれないけど、ここを何とかしてくれよ」
「いや、だから彼女はそういうんじゃなくて…」
「そういうんじゃなかったら何だよ?ただのおさんどんか?メシスタントか?お前らしくもない」
「とにかく…直しますけど…」
「何だよ、歯切れ悪いな。ちょっと手伝ってもらったらいい事だろう?」

「あの~」

二人がはっとしたように顔を上げた。
「な!いたの!!?」
「ハァ…さっきからずっとここに…」
「イヤだなあ、声かけてよ」
「いえ…お茶、お出ししましたけど…?」

社は自分の手に持っているコーヒーカップに目を落とす。

「ほんとだ!糖分補給まで済ませてる。ごめん、気がつかなかった。君、忍者の末裔か何か?」
「そんな訳ないです!」
「社さん、冗談は休み休み言ってくださいよ。とにかく、ちょっと直してみます」
「うん、よろしく」

「あの~、私にお手伝いできそうな事ですか?」

二人は顔を見合わせた。

「この人の言っている事は気にしなくていいよ。今日はもう休んでいいから…」
「なに?住み込み?じゃあもっと好都合。お前そこまで理性的だったっけ?」
「何気に失礼な。とにかく、最上さんはそういうのではないので、この話は終わりです」
「はいはい。まあ、必要なら人、送るから」
「もう、LMEの紹介は御免ですよ。自分で何とかします」
「そうか?それじゃ来週よろしく」
「ええ、お疲れ様でした」

そう言って社は席を立った。そのあと、玄関先で振り向きざま、

「そうだ、今日のご飯、本当にめちゃくちゃ上手かったよ、ご馳走さま。最上…キョーコちゃん!」

そういってさっさと出て行った。

「…ねえ、ご飯食べたの?あの人」
「はい。あ!ダメでしたか?」
「いや…ダメじゃないけど、今までそんなことは一度もなかったから」
「そうなんですか?先生がお仕事をなさっている間にいらして、お待ちの間に“いい匂いだね”って台所にふらりと来られたので、差し上げました。美味しいって完食なさいました。」
「そう。(餌付けに成功したんだ。あの人、超グルメなのに…)まあ、あれが俺の担当さん。いい人なんだけど、仕事熱心すぎてね」
「楽しそうな方ですね」
「…うん、まあ…そうだね」

複雑そうな顔をして、蓮は首に手をやったまま天井を見上げて小さく呟いた。

「締め切りまでにもう一度来るだろうな。あの人。」




(続く)



さて、ここでこのお話…進路がいくつか分かれます。書きたいお話がいくつか湧いてしまったのです。
そこで、お好きなほうにお進みください。ただし、保障はしませんよ?

① さらりと微キュン→このまま通常・微桃コース Peach Time へ (火曜更新)
② S系な絶叫妄想→限定・中桃コース Peach Time (5)へ (木曜更新)
③ さらにドン引き?→危険物・大桃コース Peach Time  Bitter 5  別館へ (土曜日かな?)
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コメント

5の3コース
こんばんは。
更新楽しみに待ってました。
わたくし、5の3コース、すべて堪能いたしたく存じます!

待っておりますので、どうぞ宜しくお願いいたします。
  • 2016-10-16│20:13 |
  • harunatsu7711 URL│
  • [edit]
Re: 5の3コース
> harunatsu7711 さま

コメありがとうございます!!

フルコース行っちゃいますか!?
楽しんでいただけると嬉しいです。
  • 2016-10-16│20:45 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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