Peach Time 5

今回から、火曜日投稿です。
ソフト路線バージョンですから、安心してご覧ください。




Peach Time 5 



カタカタカタカタカタカタカタ…
書斎に響くキーボードの音が、不意に止まる。

「ん~…今日はこんなところかな…う~…きつい…」

肩凝りは職業病。
ずっと同じような姿勢で、何時間もキーボードとにらめっこしていると、目は疲れ、肩は緊張を重ねて硬くなる。

リビングに行くと、キョーコが洗濯物を取り込んでいた。

「あ、お疲れ様です。先生、お茶でもいかがですか?」

つい先日、求人募集でやって来た彼女。
他の作家のアシスタント募集とは異なり、なかなか蓮のところにはアルバイト希望者がこない。職場環境が古くさくてダメなのか、住み込み可としているのが悪いのか、それとも小説のジャンルが悪いのか…とにかく、あまりに募集を掛けても、家事手伝い希望者が来ないので、しばらく出版社に頼んでいたが、それはなぜか長続きしないのだ。

「今日は休日だよ?若い女性が一日家にいるって、どうなの?」
「え?いいじゃないですか家にいたって!心配なさらなくても、これは私の休憩のついでです。あ、さっきキャラメルを作ったんです。糖分補給にいかがですか?」
「ああ、この甘い匂い、キャラメルだったの。いや、甘いものはちょっと…」
「そう仰ると思って、少し甘さ控えめにしてるんです。お一つどうぞ?」
「じゃあ、一つだけ…」

そういって、小さな一切れを口に入れた。

(……美味しい…)

優しい甘さが口に広がる。想像していたより、ずっとコクがあってまろやか。

「どうですか?お口に合います?」
「うん、美味しい。スーッと溶けていく感じだ」
「あ~、良かった!先生ってば、ずっと書斎に閉じこもりっきりで、書いてらっしゃるんですから、ちょっとは血糖値上げないと、脳みそが働きませんよ?」
「でも、今日は土曜日だよ?」
「だから、私のおやつのついでですってば!」
「そうか、ありがとう」

どういたしまして。と鼻歌を歌いながら、洗濯物を畳む彼女を見ていると、そこには自分のものが含まれているではないか…

「あれ…?それ、俺のだよね?それなら出勤…」
「あ!!すみません。休日だからと思って先生の分も少しだからついでに一緒に洗っちゃったんです!ごめんなさい!」

そうか、基本的についでだって言ってやっちゃうんだ。
この子は損する娘だなあ…と、楽しそうなキョーコの横顔を見た。
そういえば、いつもタイムカードも5時間未満。確かに手際がいいのは認めるが、時間外勤務が多いのに文句も言わない。
気がつくと、庭は手入れもされ、花まで植えてある。
来月からは、月給制にしてみようか…とふと浮かんだ。

(…来月…)

その瞬間、もう、彼女を続けて雇う気でいる自分に驚いた。
ふっと笑みが漏れる。


“ピ!”

「…?先生?」

いきなりタイムカードを押した蓮を不思議そうに振り仰ぐ。

「じゃあ、最上さんにお願いするよ。ちょっと肩凝りが酷くて。それが済んだらマッサージお願いできる?」
「はい!喜んで」

ぱあぁぁっと、笑顔が咲いた。





「どう…ですか?」
「うん…いいよ…うっ…!そこ!」
「ここがいいですか?」
「ああ…、そこがクル…ね。」
「凄く硬くなってます…外から見てもパンパンになってて…気になってはいたんです…」

ベッドの上で馬乗りになって、ソレは行われていた。

「漸く汗が出てきましたね…少し…緩みましたか?」
「うん…身体が熱い…」
「ここがコリコリしていますね…えいっ!」
「うぅっ…はっ…!」
「気持ちいいですか?」
「凄く…指先まで痺れる…」
「先生…それは相当ですよ?えいっ!」
「ぐぁっ…!待って!キツイ!」
「もうちょっとです…イキますよ?やぁっ!」
「うぁぁぁっ!はっ…はっ…はっ…凄い…きた…」

ベッドの上でうつ伏せのまま、ぐったりと脱力する蓮…

男性の力でも、ここまでピンポイントで揉み解されるなんて、滅多にない。

「はじめ指が入らないんですもの…酷すぎます…肩凝り…」



「何だよ…何をおっぱじめたかと思ったら……」

「社さん!?」
「こ…こここ…こんにちは!」

「いや~、さっき来たら、玄関は開いてるし、中からいい声が聞こえてくるし、昼間っから…と思って焦ったぞ」
「何ですか?来るなら来ると一言…」
「言っといただろう?昨日、時間は未定だと。ほれ、原稿見せろ。」
「折角のいいところに…」
「ああ、お邪魔だったな」

勝手に入ってきた社に、蓮の背中に馬乗りになってマッサージをしている姿を見られ、キョーコは赤面した。

(はっ、破廉恥な格好に思われなかったかしら?誤解!誤解なの~)

はじめはソファーで座って始めたマッサージ。けれど、あまりにゴリゴリ、パンパンに腫れ上がった肩甲骨には、指一本も入りやしない。
これは覚悟が必要だと、蓮にうつ伏せになってもらうことにしたが、いかんせん長身の彼がうつぶせる事ができるのは床か、ベッドしかなかった。
挙句の果てには、体重を掛けるためとはいえ、生まれて初めて男の背中に馬乗りになり、そこまで揉み解しにのめりこんだなんて、破廉恥極まりない。
今となっては畳でも良かったかもしれないが、後の祭り。
かくして、蓮の背中が(おそらく)真っ赤になり、汗が吹き出るほど揉み解したのだった。



「何だ、直ってるじゃないか。瑞々しくて…ふ~ん…」

社のニヤニヤが止まらない。これは、何かを勘違いしてそうな顔だ。

「何です?」
「頼んだんだろ?いい効果だな~っと思って」
「何もしてませんけど?」
「またまた~。さ、甘い匂いの元、貰って来よ~っと!」

いそいそと、台所に向かった。

「キョーコちゃん、こで…おいひいね…(もごもご)」
「ありがとうございます。あの…詰め込みすぎでは?」
「いいろ、いいろ…(むぐむぐ)おいひぃ…」

確かに作った量は少なめだが、社はあっという間にキャラメルを平らげて、お茶を啜った。

「いや~、さっき見たら、原稿、良くなってるの。初々しくて、瑞々しくて…キョーコちゃん効果だね。…で、二人の関係はいつから?」
「?初めてお会いしたのは半年ほど前かと」
「え?気がつかなかったな、ふう~ん、あいつ、優しいでしょ?」
「はい。とっても!」
「おお~、言うね。彼女を側に置くなんて初めてのことだけど、内助の功は有難いね」
「…は?…彼女?内助……」
「いや~心身ともに満たされていると、原稿も進むね!見たところ顔の色艶も良くなってるし!」
「心身ともに…って…! ち…違います!誤解です!」
「またまた~。性欲も胃袋も満たされたら、そりゃ良いもの書けるって!ん?逆かな?満たされないから書けるのか?」
「性欲…っ!みっ…満たしてません!本当に誤解です!私、ただの住み込みアシスタントです」
「その通り、誤解ですよ?」

蓮も遅れて居間にやって来た。

「あれ?俺のキャラメルが…」
「もう食べた」
「社さん…」
「あっ!先生!またそのうちに作りますから!ちょっと待っててください。お茶入れます」

いそいそと台所で準備を始める。

「(誤解って何だよ)」
「だから、そんな仲じゃないんですって」
「(え!?冗談だろう?)」
「冗談ではありませんよ。彼女は本当に契約でやって来た家事アルバイトです」
「うっそぉ~~~」
「何ですか?それ」
「だ、だって…、アシスタントが入ってからざっと二週間近くになるよな。出会ったの半年前って言ってたぞ?その間、なんもなし?」
「無しです」
「マジで?」
「マジで、その通りですよ。半年前って言うのは面識があっただけで…」
「冗~談きついよ?え、何?不能になった?…な訳ないか。じゃあ何だよ」


「……未経験の未成年に簡単に手なんか出せるもんですか。常識で考えましょうよ」

頬杖をついてぶすっという蓮に、社はあんぐりと口を開けた。



6話に続く)
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コメント

手、出しちゃってください(笑)
こんばんは。

なんだか誤解のありそうな描写…しかし、健全でしたね。肩と一緒に心も解れちゃってくださいい、蓮さん!という思いです。

また、楽しみにしてます!
  • 2016-10-18│23:16 |
  • harunatsu7711 URL│
  • [edit]
Re: 手、出しちゃってください(笑)
> harunatsu7711 さま

こっちの蓮さんは普通の常識がある男性です。(多分…)
ちょっと爽やかな軽い桃なんですけどね~。あっちの蓮さんと、もっと向こうの蓮さんが破廉恥なお人でして、大暴走してますの。

きっと、この普通バージョンが一番可愛くて、うふふな蓮キョの気がします。
  • 2016-10-20│21:10 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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