Peach Time 6

社さんは敏腕編集者!
蓮さん、官能小説って、どんな話を…?




Peach Time 6



そして、それから3日後、原稿受け取りに社はやって来た。

「へぇ…更に良くなってる」
「そうですか?それなら良かったです。他に直しがないなら、もう入稿できますけど」
「貰って帰るよ。相変わらず仕事が速くて有難い」

キョーコの焼いた小さなピーチパイが、あっという間に社の口に入っていく。

「むほ♡旨いね♪」
「それ、あの娘のお手製です」
「そうらしいね、玄関先に甘い匂いが立ち込めてて分かった。今日の晩御飯、何?」
「まさか、食べて帰る気ですか?」
「だって、俺、これからあと2件、取立てだもん」
「頑張りますね」
「まあね~、これ、次の特集のコンセプト」
「SM…ですか。これはまた過激な」
「まあね。書ける?」
「ちょっとやってみない事には分かりません」
「出来たら頼むよ」

「…出来たら…ね」

曖昧に濁していると、丁度ふすまをノックする音が聞こえた。

「先生、お食事の準備が出来ました。社さんの分も作ったので、温かいうちにどうぞ」
「やった!ラッキー。蓮、先に頂くからな」
「はいはい、どうぞ」

社はいそいそと食卓に向かい、「うまい、うまい」と言いながら、5分で平らげて出て行った。

「社さんって、お忙しい方なんですね~。出版業界ってそんなに皆さんお忙しいんですか?」
「彼は特にね。人気作家を何人も抱えてる。優秀な人だよ」
「そうなんですね。そういえば、先生、入稿が済んだってことは、これからフィギュアですか?」
「ああ、それもいいかな。ちょっと取材に行ってみようかとも思ったけど…まあ、また今度にする」
「取材ですか?次のお話の?」

「……そう」
「次は、どんなお話ですか?」

キョーコは興味津々で尋ねた。

3日前、恥ずかしい思いをした“お手伝い”は、社にも誤解されて弄られた。
キョーコとしては男の背中に馬乗りになるなど初体験、翌日の朝、どんな顔をして蓮と会えばいいのかわからず、顔から火が出るかと思ったくらいに緊張したが、いざ蓮と顔を合わせても、蓮の何気ない様子に自分一人だけが緊張していることが分かったのだった。

(まぁ~…そりゃそうよね。あんな小説書くくらいだもん。きっと百戦錬磨で、女タラシで、女性から触られても平気なのよね…さぞかし経験も豊富なんでしょうから…)

けれど…あの背中の感触をどうしても忘れる事ができない。
指先に伝わる体温と、背中から香る蓮のにおい。

(最上キョーコ、破廉恥よっ!反芻しない、反芻しない~~!!)
と自分を叱咤しても、感触の記憶というのはより鮮明に残るらしい。

そんな邪念を振り払うように、仕事に没頭するしかない。


「先生?」

「いや…流石に…ちょっと言いにくい…」

(へ?)

蓮はまた頭を抱えて、深~い溜息をついた。

「あの…先生?今更…ですか?」
「何?その、今更…って」
「だって、たくさんの官能小説をお書きになって、経験も豊富で、イケメンでモテモテで…」
「それは、どこ情報」
「え?社さん」

(!社さん、なんてことをこの子に吹き込むんです!?)
明らかに蓮の表情にはそう書いてある。
はあぁぁぁぁぁ~~~っと更に深い溜息をついた。

「あのさ、最上さん。社さんから何を聞いたか知らないけど、実体験があるから文章が書ける訳じゃないからね。」
「だって、取材とか…」
「それは行くよ。知らないのと知っているのとは大違い。だけど、全部経験しているとは限らないんだ」
「そう…なんですか。難しい世界なんですね」
「全くだね…さ、ご馳走様」

「で?先生は次に、何をお書きになるんですか?」

ガクッと絵に描いたように沈んだ

「も…最上さん…?」
「え、だって、社さんが今後もお手伝いよろしくね?…って」

(一体なんなんですか!?社さん)

一体、どんな隙に、何を彼女に吹き込んだんだろう?

確かに、彼女に仕事を与えたのは自分。
彼女が金銭的に困っていることは察しが付いた。
理由は分からないけれど、官能小説を書く独身男性のところに住み込むほどだ。余程の事情があるに違いない。
勿論、キョーコがはっきりとそう読んだかどうかは別として、契約内容に身体的補助と書いたのは事実で、身体の関係を求めてもいいですか?と暗に匂わせていたし、今までだって、アシスタントの女性にはそういうことも申し合わせてきた。(断られるほうが圧倒的に多かったが…)

確かに料理の腕は認める。
いつもは食欲など湧かない。まして、パソコンの画面を見続けた後など、固形物を摂取しようなどと思ったことはなかったのに、つい食べてしまう。
そして、気立ても良くて働き者。
集荷に来ていた時の感じのよさは、営業用というわけではないらしいことはすぐに分かった。
けれど…あまりに警戒心のないキョーコに驚くばかり
世間知らず…といっても過言ではない。

(参ったな…)

頼みたくても頼めない蓮の気持ちなぞ知る由もなく、キョーコは元気に続ける。

「先生っ!不肖、最上キョーコ!先生のお世話は、いつでもお申し付け下さい。炊事、洗濯、掃除にマッサージ!他に出来る事があるならば何なりと!」

「あの…ね、最上さん…(じゃあ…アッチの世話も…?)」

なんてこと、口が裂けても言えない蓮は、自分の不健全思考を呪いつつ、またまた深~~いため息をついた。

(ダメだ。やっぱり今回は社さんに取材に行きたいって頼んでみよう。)




 7話に続く)
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コメント

アッチの世話
こんばんは。

別館になるのでしょうが、ぜひとも、蓮さんのアッチのお世話もしちゃってください(笑)

社さんがちょっかい出すようすがツボです。
  • 2016-10-26│21:24 |
  • harunatsu7711 URL│
  • [edit]
Re: アッチの世話
> harunatsu7711 さま

いつも御越し下さって、ありがとうございます。
あっちのお世話は、限定もしくは別館にて取り扱い中でございますので、こっちはかなり生真面目な官能小説家にございます。
こちらとあちら、行ったり来たりで混乱されませんかね?大丈夫なのでしょうか?
本当にあちらでは、こちらの健全ぶりが嘘のような展開になってて、時系列も滅茶苦茶で、混乱を極めていると思うのに、でもなんとなくエピソード自体は似通っているという、奇妙奇天烈なシリーズと成り果てています。
皆さんに呆れられてはいないかと、やや心配中なのですよ。
どうぞ、懲りずにお付き合いくださいませね。
  • 2016-10-27│22:04 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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