Peach Time 8

キョコさん、あなた…器用にもほどがあるのに。
ここでも頑張っちゃうキョコさんですね。





Peach Time 8





キョーコが黒くて怪しい服を広げて見せた。

「あの…これ、どうでしょうか?」

「や…その…いいのでは?」

ぱあぁぁぁぁぁっ!!と笑顔になる。

「本当ですか?ちょっと頑張ってみたんです!」
「うん…いいと思う」
「ですよね?このエナメルの感じとか、いいですよね?」
「最上さん…ところで、それ、どうして人間サイズ?」

「えと、それは…」

今度は、ぼぼぼぼぼっっと赤くなる。

「その…もしかしたら、少しは先生のお役に立てるかなあと…」

(え…?)

「サロンに行くとおっしゃってたので、その…専門職の方には及びませんが、発想の参考にでもなったら嬉しいかな。と」

(そう…か)

蓮の心に何だか言いようのない気持ちが込み上げる。
嬉しいような、気恥ずかしいような…胸がくすぐったくて、むずむずする…。
蓮は、ふわりと笑うと、キョーコの頭にポン…と手を置いた。

「決めた。最上さん…試用期間は終わりだ。」
「はへ?」
「うん、終わり。それと明日、出版社のパーティーがある。それに、出ようと思う」
「そうでございますか。いってらっしゃいませ」
「君も出るんだ」
「へっ………!?わっ…私?」
「そう。君と一緒なら出る」
「えぇっ!?そんな事、無理、無理、無理、無理!」

慌てて首をぶんぶん振るキョーコを見て笑う。

「大丈夫だよ。ちゃんと服は準備してあげる。仕事だから。」
「…お仕事…ですか?」
「そう、アシスタントとして。社さん以外にも紹介するよ。俺の優秀なアシスタントをね。あとは…そうだなあ、そこで会う人の名前と顔を覚えてくれたら助かる。人付き合いが苦手なんだ。」
「あ、それなら…」
「それと…髪、切ってくれる?」
「あの、先生の髪ですか?」
「うん、俺の髪」
「や、それは吝かではありませんが、床屋さんで格好良く散髪されてはいかがかと…」
「最上さんに切って欲しいんだ。ダメかな」

キョーコはしばし、考えた。

「分かりました。では、明日の朝イチで散髪しましょう!」
「お願いします」
「了解です!」





翌朝、キョーコは庭先で蓮の髪を切った。
いつもボサボサにしていた髪は、実はサラサラで、指どおりが滑らかだった。
散髪の心得などない。だが、見よう見まねでサクサクと髪を切りそろえていく。
いつも鬼○郎のように片目だけ見えていた前髪もばっさり切り、ラフに整えてみる。
閉じられた長い睫毛、凛々しい眉が現れ始めるその瞬間に、いちいち自分の心音がうるさい。

「出来ました。いかがでしょう?」

縁側に置いた鏡の中の自分を確認するため、薄目を開けた蓮の表情に、一瞬キョーコの心臓が止まった気がした。

「ありがとう。すっきりした」

鏡の向こうから、神々しく微笑むその男が余りに眩しくて、思わずその場にしゃがみこんでしまった。
蓮は急にキョーコが鏡の視野から消えたので、ビックリしてあたりを見回すと、自分の後ろで縮こまる彼女

「ねえ、どうしたの?」
「いえっ、何でもっ!(ときめきすぎて心臓で爆竹鳴ってますなんて言えないっ!)」
「散髪も上手だとは…本当に器用だね。じゃ、洗ってくる」
「はっ、はい!お片づけしておきます」
「うん、いつもありがとう」

もう、その“ありがとう”は、集荷のとき仄かにときめいた“ありがとう”ではなく、心臓を捻り潰す威力の“ありがとう”
息が苦しくて、顔が火照って、どんな顔をしていいのかすら分からない。

キョーコはあわあわと周囲を片付けた。
それでも、ふとした瞬間に鏡の中の蓮を思い出し、頬を赤らめては起動が停止する。

「最上さん、こっちに来て?」

洗髪が終わったらしい蓮に呼ばれて、はっと我に返り寝室へと向かった。

「もし、気に入ったのがあれば、着て貰ったらいいんだけど…」

奥の納戸から出された桐箱の中に入っていたのは、たとう紙に包まれた和服

「あの…先生、これは?」
「うちの母のものでね、ずっとそのままにしてあるんだ。今日は俺、和服で行こうかなと思うのだけど、一緒にどうだろう?」
「先生のお母様の…そういえば今どちらに。」
「あ、大丈夫。死んでないから。あの人、自由人だから海外を飛び回ってるんだ。ここにあるのはもう着ないお古ばかりだよ」

それにしては上質の物ばかりに見える。大島、西陣、加賀…育った京都の旅館で着物への目だけは肥えている。

「でも!お母様のお着物を私が着る訳には!」
「最上さんに、着て欲しいんだ」

にっこりと有無を言わさない雰囲気で、蓮が言う。

「あ、でも、若い子が着る柄じゃないかも知れない。そうなったら、新しいドレスでも買いに行こうか?うん、それもいいかも」
「せっ…先生~~」
「どっちがいいかな?」

これは…選びにくい
まさか、蓮の母親の着物をほいほい着用も出来る訳もないし、かといって新しいドレスを買ってもらうなんて論外。でも、自分の持っている安くて地味な一張羅の既成スーツなんてさらに問題外。

う~む…と唸るように悩むキョーコを、蓮は傍らでにこやかに見つめた。

「これは、どうだろう?」

蓮が差し出したのは紬だった。藍がベースの地味な柄行だが、帯や小物の使い方によっては、小粋な感じがする。

「きっと最上さんに似合うと思うな。」

見つめられると、顔から火が吹き出そうだ。

「いやでなければ着てくれる?」
「…」

キョーコは、あまりの神々しい笑みに返事すら出来ず、コクンと頷いた。




 9話に続く)
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非公開コメント

イメージだけで、着るんじゃなかったのね。

エナメル質の服?は、着なかったのですね。安心しました。その代わり着物とは!!!

健全で清楚で逆にウハウハです。

更新楽しみにしてます。

Re: イメージだけで、着るんじゃなかったのね。

> harunatsu7711 さま

そうなんです。ボンデージを着るのは限定の方でして、こちらでは着用いたしません!
あくまでも、健全!安心!微キュン!をモットーに(?)運営させていただいております、こちらの通常コースでございます。

どうぞ最後まで、結構普通に格好いい系の敦賀先生をお楽しみください。
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