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看病されてもいいですか?(後編)

 看病してもいいですか?(前編) →  (後編)  
 看病されてもいいですか?(前編)  
と続いているシリーズです。

さて…手、回しちゃった…きゃ!ドキドキしました?

では、どうぞ。





看病されてもいいですか?(後編)





「最上さん…」

蓮の素肌の上にキョーコの頬が乗る。頬に感じる体温はまだ高めだ。

「敦賀さんっ…まだ、体を拭いている途中です」
「少しだけ、こうしていて?」
「少しだけ…」

どうしよう、早く服を着せなければ…ちょっとだけ心を鬼にしたい。

「敦賀さん、服、着てしまいましょう?それから、ゆっくり側にいますから。」
「…ん…」

蓮の体を拭き終え、上半身にパジャマを着せる。
下半身は、まだ勇気がなかった。
蓮がボクサーパンツを愛用しているのは知っていたし、どこに置いてあるかも既に知っている。けれど、流石に下着までは…まだその関係ではない。付き合っているとはいえ、それはあまりに不埒で破廉恥すぎる行為というものだろう。
スラックスだけを脱がし、目を天井に固定したまま直接見ないようにして、これもパジャマを着せた。

「敦賀さん、もういいですよ?お水、飲まれますか?」
「う…ん、水が欲しい。」

よっこいしょと体を半分起こし、コップを差し出した。
辛そうだが、コクリ…と一口飲んでくれた。

(あ…そうか、これで私、飲めなかったんだ)

自分のときは蓮が口移しで与えてくれた水。だけれど流石に自分からは出来そうにない。

「ごめん、…ありがとう。」

横になる蓮の頭に氷嚢とタオルを再び載せ、洗面器を洗おうと腰をあげたときだった。

「キョーコちゃん…」

蓮の手がキョーコを引き止める。
キョーコの心臓がどきんと跳ね上がる。
“キョーコちゃん…”懐かしい響きだ。
もう今は他のキョーコちゃんがいるなんていう誤解はしていない。でも、きっと熱に浮かされた蓮の視界には、あの時と変わらぬキョーコがいるのかもしれない。

「お願い…側にいて?」

(はっっっ!!なんて破壊力!ちょっ…病人よ!?病人の色気?なんてこと~~~)

キョーコの心臓は必要以上にドキドキバクバクしながら、蓮の言葉を受け止める。
さっきも、少し待って、と伝えたばかり。
でも、本当は片付けなんてどうでも良くて…
だって…体を拭いて、着替えて、水分補給をして、氷嚢を当てて、今できる事は全部済ませた。洗面器を流しに持っていくのは後でもいい。
それくらい、キョーコは辛そうな蓮の側にいたくて、仕方がなかった。

「敦賀さん、大丈夫ですよ?すぐに治りますからね」

熱が下がりかけたといっても、まだまだ油断は出来ないが、あの日、蓮の腕の中は温かくて、ホッとして、不安なんて一つもなかった事を思い出す。
たとえ気休めだとしても、蓮の不安を取り除いて、ゆっくり休ませてあげたい。

蓮にそう言って、キョーコは蓮の手を握り締め、隣に横になった。





どれくらい眠っていただろうか?
キョーコはやっぱり少し高めの体温の中で身じろぎをした。

(あ…呼吸、落ち着いてる…)

蓮の息が規則正しく整っていることに安心する。

しかし…いつの間に抱きかかえられたのか、腕枕で寝かせてもらっている事に少し吃驚する。セツカの時にはまんじりとも出来なかった腕枕。

おでこに手をやると、やはり熱は下がったようで、既にぬるくなった氷嚢をどかした時だった。
蓮の目が薄らと開き、キョーコを捉えた。

「最上さん…側にいてくれたの」
「はい。熱、下がりましたね。しんどくないですか?どこか苦しいところはないですか?」
「…ない」

そう言って、キョーコを再びぎゅっと抱きしめたのだ。

「つ…敦賀さん?」
「キスしたい。してもいい?」
「んっ…んんっ…」

まだ気だるさの残る中、蓮がキョーコを引き寄せた。
少し渇いた唇の感触がいつもと違う。

「唇…乾いてますね。お水、持って来ましょうか?」
「…いらない。」
「リップクリームのほうがいいですか?」

「…いらない…。」

蓮は拗ねたようにキョーコの首筋に顔を埋めた。

「…………………のに…」
「はい?」

声が聞き取りにくくて、聞き返した。いつもの甘い声が少しかすれている。

「どうなさったんですか?」

蓮はチラリ…と肩から顔を上げてキョーコを見た後、また顔をキョーコの肌につけた。

「こんな状態じゃなければ、君を抱けるのに…」

次にはっきりと聞こえた声に、みるみるキョーコの顔が赤くなる。

「ななな…何を言って!」
「だって、こんなに近くにいて、抱きしめてるのに…本調子じゃないなんて、悔しい。」

こんなに可愛く拗ねる敦賀蓮は、誰にも見せたくない。
キョーコの中にムクムクと不思議な気持ちが湧き上がる。
 
「じゃあ、そんなに悔しいならリベンジしてください。ちゃんと眠って早く元気になってください。完全回復したら、その時は…」

ちゅ…

思わず蓮の額に口付けた。

「受けて立ちますから!」


そう言って、キョーコは(どうしよう、敦賀さんってば可愛いな、こんちくしょう~)、とか思いながら、ぐりぐりと自分のあごを蓮の頭にこすり付け、赤くなって「参った…」と呟く敦賀蓮を、しばし腕の中に閉じ込めることに成功した。






ようやく二度目の深い睡眠を得て、蓮は目が覚めた。
昨日のような眩暈や頭痛はない。なんとなく気だるいような気はするが、それでも随分と楽になっている。

「最上さん…キョーコ…?」

辺りを見回すと、さっきまで抱きあって眠っていた筈のキョーコの姿は無く、意識を耳に集中させると、キッチンの方から音が聞こえた。
鼻歌交じりのその音はご機嫌な調べで、蓮の気持ちが上がる。

カチャ

「敦賀さん、お目覚めでしたか!調子はどうですか?」

そう言って寝室に入ってきたキョーコ。トレーに小さな土鍋と、おどろおどろしい色をした例のスタミナジュースがのっている。
トレーごとサイドボードの上に置くと、こつん、とおでこを合わせた。

「ん、もう大丈夫そうですね。お粥、召し上がってください。起き上がれますか?」

そう言って、蓮の上半身を慣れた手つきで起こした。

「重くないの?」
「あ、大丈夫です。介護のコツがありまして、それを使ってますから。」
「…介護…」
「すみません!あの、介助です!ごっ…誤解しないでください。」

慌てて訂正すると、蓮の背中に枕とクッションを挟み込んだ。

「もう大丈夫だよ?自分で出来る」
「嘘はついちゃいけません!そうやってすぐに無理をしようとするんですから!はい、口を開けてください!」

キョーコは土鍋からよそったお粥をレンゲですくうと、ふーっふーっと息を吹きかけた。

「はい、どうぞ。……敦賀さん?あーんですよ?」

レンゲにのせたお粥を差し出した。

蓮は一瞬躊躇ったが、すぐに嬉しくなって、その口を開けた。
温かいレンゲのお粥がすっと口に流れ込む。

「美味しい…」
「さあ、じゃんじゃんモリモリ食べて、元気になりましょうね!一杯で何倍も美味しいスタミナドリンクもありますよ?」

炊いたおかゆにお塩と梅干。たったそれだけなのに、とても甘くて美味しいと感じる。

(そうか、これがお粥、覚えておこう…)

キョーコが運ぶレンゲから見えるお米は柔らかくふやけて、キラキラしている。

「キョーコ、もしまた君が熱を出してしんどい事があったら、俺が看病してもいい?次は美味しいお粥が作れそうな気がする。」

キョーコはその質問に面食らったが、ふわっと笑うとまたレンゲを蓮の口元に寄せる。

「はい、是非お願いします。じゃあ、敦賀さんが次にお熱を出したときには、また、私が看病しますね。」
「うん、その時はまた看病…されてもいいですか?」
「はい。勿論です!看病、されちゃってください!」

二人は見合わせて、ふふふっと笑った。





(おしまい)
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