ボン・ボン・ショコラ 8

RRRRRR  RRRRRR  RRR…プッ

「もしもし、こんばんは、最上さん。敦賀です。」

『はっ、はい!最上です!あっ!お疲れ様です。あの、すみません。かけ直してくださってありがとうございます!』

「クスクス…こちらこそごめんね、折角かけてもらったのに返事が遅くなって。今…いいかな?」

蓮は浮き足立つ気持ちを押さえながら、繋がった電話の声を噛み締めた。


ボン・ボン・ショコラ 8




「それでね。頼みたい事は、ある女性がバレンタインデーに向けてのチョコレートをつくりたいそうなんだけど、その製作指導を、君にお願いしたいそうなんだ。」
『はい、先ほどもそのように伺っていますが、私…の知り合いって、どなたですか?』
「当日まで秘密にしてもいい?」
『はあ…秘密…ですか?』
「うん。ごめんね…君が秘密を誰かに話すとは思ってないけれど、彼女のプライバシーにも関わってくる事で…」
『あっ!!そういうことでしたら、伺いません!きっと芸能界にお勤めの方なんですよね?大丈夫です。誰にも言いませんから!』
「助かるよ、ありがとう。」

やっぱりすぐにこちらの事情を察してくれて、こういうところも彼女らしい。

「それでね、次の予定と待ち合わせの場所なんだけれど…」





そう言って、次の定休日の時間を指定され呼び出された場所にキョーコはいた。

“セレブ御用達、超高級スーパーマーケット”

キョーコは有り得ない光景に蒼白になった。
製菓用材料も、お野菜もお肉も、値段に目が点になる。
勿論、店で使っているチョコレートもそれなりのお品で、かなり店長に無理を言って仕入れてもらっている自覚はある。けれど…ちょっとブランドが違いすぎる。

製菓用材料の棚の前で溜息をついていると、ふと視界の端に綺麗な女性が眼に入った。
黒髪をさらりとなびかせ、サングラスをかけたスタイル抜群のスレンダーな美女が、真っ直ぐにキョーコに向かって歩いてくる。

(えっ…!ええぇっ…!?だれっ!?)

目をぐるんぐるんに見開いて硬直していると、キョーコの前でチラリとサングラスをずらし、その女性は動きを止めた。

「よかった…ちゃんといた。」

(こっ…琴南奏江ぇぇ~~~!!??)

「あのっ!はじめまして、最上キョーコと申します。」
「…今日はよろしく…」

そう言うと、女優・琴南奏江はむっつりと黙り込んだ。

「最上さん、琴南さん、待たせてごめん。」
「おはようございます敦賀さん。」
「こっ…こんにちは!」

いきなり背後から聞こえた声に振り返り、ペコリと挨拶をすると、蓮は嬉しそうに笑った。

「こんにちは、最上さん。お休みのところごめんね?今日はよろしく。じゃあ、二人ともどうぞ?」
「さ、行きましょう。」

奏江はさっとヒールを返すと、蓮の後をついていく。
その姿を見て、キョーコは“ああ、なるほど…”と思った。

蓮の斜め後ろをついていく素敵な立ち姿の女優さん。蓮はといえばにこやかでご機嫌がよさそうなのは一目瞭然で、とてもお似合いの二人。

(そか、お二人は付き合ってるんだわ、こんなにお似合いの二人だから当然よね。私と仲がよかったのはきっと琴南さんのことなのね。それもちょっと信じられないけど、…それできっと敦賀さんは私の事を少しだけご存知だったのかも。)

そう思って納得をした…が、ちくりと胸に何か鋭い物が突き刺さる。

スーパーに入ったのとは別の出口に向かっていく。
歩みの速い二人にようやく追いつくと、ガラスの自動ドアを出た先に直結したエレベーターの入り口で、蓮はカードをかざして暗証番号を押した。

開いたエレベーターの意味するところが分からなくて、立ち止まっていると、振り返った蓮に声をかけられた。

「どうぞ?」

「あ…の…」
「うん、今日のお菓子作りの場所に向かうから、乗って?」

既に乗り込んだ二人の後に続いて、キョーコはエレベーターにおそるおそる足を進めた。







「あの…ここは…」

広い玄関先に通されて、キョーコはあんぐりと口を開けた。

エレベーターはものすごい速さで最上階まであがり、開いた先には長い廊下と扉が一枚。
ここは何かの会社かも…と思っていると、おもむろにまたカードキーを出して番号を打つ敦賀さん。
開いた扉の先に見えた光景に、開いた口が塞がらなくて、カチンコチンでこの場所を聞いた。

「ん?俺のマンション。」
「な、ななな…何故に!?こちらで?」
「ん~~~、都合がいいから?」
「あ、あああああの!そそそ…それは!!」
「うん、大丈夫。邪魔はしないから。じゃあ、最上さん、琴南さん、キッチンは好きに使って?必要なものがあったら、声かけて。」
「ありがとうございます。じゃあ、さっさと教えて頂戴。」
「はっ!はい、分かりました!」

持ってきたエプロンをつけると、案内された先のキッチンで、チョコレート作りを始めた。
驚いた事に材料も道具もちゃんと揃っていた。チョコレートもさっき地下で見たような高級メーカーのもので、道具だってこんなに揃っているなんて…。半信半疑でキョーコはその道具たちを見つめた。

「じゃあ、始めます。改めまして最上キョーコと申します。琴南…奏江さんでいらっしゃいますよね?水森都シリーズ、毎回楽しく拝見しています!」

それまで、つっけんどんで無表情だった奏江が吃驚したように目を開くと、やがて、困ったように眉根を寄せて、何かを堪えるように笑った。

「見て…くれてるんだ。」
「はい!勿論です。とても推理が楽しくて…あ、そうだ。今日はどのようなチョコレートになさいますか?」

「ありがと、キョーコの名前は勿論、知ってる…。今日は素人でも簡単に出来るものを作りたい…」

堪えたいものが涙だと分かって、キョーコはわざと元気そうな声を出した。

「では、一番簡単なトリュフにしましょう!とってもお手軽で見栄えもよいです!」
「あんたってば…もー…」

そう言って、奏江はグイッと顔を上げた。

「さ、教えて頂戴、面倒くさいのは嫌よ。」
「はい!簡単に出来ますよ!では、始めます!」

二人は意気揚々とトリュフチョコレート作りを始めた。




(続く)
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

かばぷー

Author:かばぷー
ス/○/ビ大好き!
脳内妄想☆大暴走中
思いついた言葉を書き連ね
作品置き場にしています。

☆当サイトはリンクフリーではありません☆
二次ルールを守っておられる「ス/◯/ビ」二次サイト様に限り、相互リンクさせていただきたいです。お手数ですがリンクを貼られる前に必ずご一報ください。尚、原作者様の作品画像やアニメ画像を無断掲載をされているサイト様からのリンクは固くお断りさせていただきます。
(リンクはトップページにお願いいたします)

ようこそ
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
リンクご案内
ちょび様
陽のうらうらと
ピコ様 Bubble Shower
sei様
風月様 popipi様 ちなぞ様 惣也様