ボン・ボン・ショコラ 10

雪…今週は雪に悩まされました。
通勤に往復3時間掛かるのはやはりしんどいね。圧雪と轍の凸凹で神経磨り減ります。

さて、前回の9話に沢山の拍手を頂き、凄~~く嬉しかったです。

キョコさんとの距離を少しずつ詰めてきています。
どうぞお楽しみください。







蓮はマンションを出てから、ナビを見ることも、標識を確認するようなそぶりを一度も見せずに、だるまや付近に到着した。




ボン・ボン・ショコラ10





「ありがとうございました。すぐ近くまで送っていただいて。」
「どういたしまして。車なんだからどうってことはないから気にしないで。それより、こちらこそ本当にありがとう。」
「いえ!私こそ、まさか琴南さんと仲良くさせていただいていたなんて、恐れ多いんですけど、楽しい時間が過ごせてよかったです。」
「そう?そう言ってもらえて嬉しいよ。」

「でも、どうして私のことを?」
「ああ、最上さんのチョコレートを買いに行ってるってことを、琴南さんに話したんだ。そうしたら、凄く喜んで…もう一度、君にチョコレートの美味しい作り方を教えて欲しいって、琴南さんが…」
「そうだったんですね。とても素敵な方ですね。」
「そうだね。」

蓮は流れるような動作で助手席のドアに回り込む。キョーコは、なんだかむずむずする感じがして、車を降りようとしたその時。

「あ…最上さん」
「はい?」

蓮が躊躇うように声をかけ、そしてまた言葉が途切れた。

「いや…なんでもないよ。」
「…?」
「……」

何かを言いたげで、困っている様子だった。

「あの、敦賀さん。どうかなさいましたか?」

頭をかしげるように見上げると、困ったように眉根を寄せて、蓮は薄く笑う。

「いや…なんでもないよ。それじゃ、本当に今日はどうもありがとう。」
「いえ!こちらこそ!…って、さっきと同じ繰り返しですね。では、私はこれにて失礼いたします。ありがとうございました。」

そういうと、キョーコは急いで車から降り、ぺこっとお辞儀をして、向かいのだるまやに足を向ける。
丁度だるまやの店先に近づいたとき、お客さんを見送りに、女将さんが入り口を開けた。

「おや、キョーコちゃん、お帰り。一人かい?どうやって帰ってきたんだい?」
「ただいま帰りました。今日は送ってきていただいたんです。」

女将さんにそう報告して、敦賀さんが車を止めた方向を見た。

その時…

敦賀さんは、まだそこに立っていた。
そして女将さんの姿を確認すると、ゆっくりとその大きな体を二つに折り頭を下げた。

一瞬…キョーコは動けなかった。

女将さんが一言、「そう、送ってくださったの…」とぼんやり呟いたことをきっかけに、ようやくキョーコは慌ててもう一度腰を折った。
きちんとお礼の気持ちが伝わるように。

「さ、入ろうか?晩御飯、まだじゃないのかい?サバの味噌煮、取ってあるよ。」

やがて、蓮が乗った車を見送るキョーコに、優しく問いかける女将さんだった。



その晩、キョーコはまんじりとも出来ず、長い事布団の中で目が冴えたままだった。

チョコレート作りを教えて欲しいと言ったのは、琴南さん。
それならケーキショップまで来てもらってもよかったのだ。定休日だから、お客さんは誰もいないし、キョーコが商品開発するくらい当たり前にしていたから。
けれど、そのお菓子作りの場所を提供したのは敦賀さんで、敦賀さんが琴南さんにお礼を言っていたという不思議な光景。
チョコレートを作りたいといった筈の琴南さんなのに…?

でも…断片的に蓮の顔がちらついて、まとまらない思考はどんどん変化し、はじめに考えていた事はそのうちどうでもよくなった。


今日、敦賀さんのお宅にお邪魔した。

部屋着の敦賀さんを見て
敦賀さんが嬉しそうに微笑みかけてくれて
敦賀さんがありがとうって言ってくれて
敦賀さんがカフェオレを作ってくれて

敦賀さんが家まで送ってくれて…


今日の午後、半日で見た蓮の姿を思い起こすたびに、ドキドキして胸が苦しくなる。

「どうしよう…やばいなぁ…」

自分の作ったショコラの箱が、あんなに大事そうにガラスのケースに入っているなんて、思ってもみなかった。そして、まるで付き合っている男性がそうするように、女将さんに礼をした敦賀さんにも心臓が止まりそうだった。



…やっぱり、あの人が好き。…かも。

いえ、多分…間違いない。

この感情には覚えがある…いえ、間違いなく私はこの感情を知っている

全く接点の無かった敦賀蓮にこんな感情を抱くなんて、有り得ないことだけど…



キョーコは真っ赤になった自分の顔を覆って、布団の中でのた打ち回った。








「おはようございます。大将!女将さん!朝ごはん、作っておきましたので召し上がってくださいね。では、いってきます」

「いってらっしゃい」

のっそりと奥から出てきた大将の姿を確認し、ちょっとだけクマが出来た顔を隠しながら笑顔で出て行くキョーコを、だるまやの女将は見送った。
座卓の上に並べられた、キョーコの和食に二人揃って手を伸ばす。

「キョーコちゃん、眠れなかったのかね」
「昨夜…遅かったのか?」

「昨夜は…敦賀さんがキョーコちゃんを送って来たんだよ。」
「…そうなのか?」 
「やっぱり、ちゃんと見ててくださってたんだねぇ…」

「…飯」
「はいよ。また、キョーコちゃんのためにうちに来てくれるかねぇ。」
「さあな、もう、二度と来なくていい。」
「お前さんったら、またそんな!次は魚なんかお出しでないよ?」

「…………………知らん。」
「ふふ…キョーコちゃん、やっぱりちゃんと心のどこかで覚えてて、敦賀さんに惹かれていくんだねぇ。」
「お前までほだされやがって…あの、詐欺師。」

ふいっと顔を背ける大将にふふっと笑って、女将さんは目元を拭った。






キョーコは、ちょっとだけ疲れた体に活をいれ、ケーキのデコレーションに取りかった。
白い生クリームの上に、色とりどりのフルーツをかざり、濡らしたナイフで均等に切り分け、セロファンで巻いていく。

午前中に予約のスポンジを焼き、冷ます。
店長との息も合い、作る事が楽しい開店前の忙しい作業。

「キョーコちゃん、何かいいことがあったの?」
「え!?」

不意に店長に尋ねられ、キョーコはむにゅ…と表情が複雑によれた。

「何?いいことがあったんじゃないの?」
「えへへ…ほんの少し。」

そういうと、照れくさそうにショーケースに並べるために、トレーにケーキを並べた。

(危ない、危ない。秘密にしなくっちゃ)

それでも、やっぱりどうしても顔の筋肉が緩む。
午前中の内にケーキの殆どを焼き上げ、昼休憩に入ったとき、携帯電話が震えた。

吃驚して画面を見るとショートメールの着信を知らせている。
そして、それは“敦賀さん”からのもので、キョーコは慌てて画面を開いた。

“昨日はお疲れ様。言いそびれましたが、一ヶ月ほどロケに出ますので、しばらく店に寄ることが出来ません。次回、新作を楽しみにしています。”

え!?とキョーコは目を疑った。
つい先日まで、アルマンディの撮影とやらで日本を離れていたと教えてくれた敦賀さんは、今回は一ヶ月も海外にロケに出る?恋心を自覚した途端に、お預け状態を喰らったみたいで、ちょっとショックだった。けれど、少しだけ気持ちを落ち着けたいと思っていたことも事実で、少し冷静になれそうだった。

しかし…昨日言いたそうにしていたのはこの事だったのかと、蓮の様子を思い浮かべて、なんだか、人気No1俳優らしからぬ姿がやけに嬉しかった。
キョーコはじーっとその文面を見つめた後、返信ボタンをタップした。



“お疲れ様です。ロケ、気をつけて頑張ってきて下さい。私も新作ショコラを頑張ります。お知らせ、ありがとうございました。”





(続く)
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近づいたと思ったら

敦賀さんの部屋でのデート?まで近づいたのに、これから1ヶ月も会えないなんて!!!是非とも敦賀さんには、メール連絡をこまめにしてほしいです!

更新いつも楽しみにしてます。

Re: 近づいたと思ったら

> harunatsu7711 さま


コメントありがとうございます。
一ヶ月…長いですよね。キョコさんにとってはどんな一ヶ月になるかしら?
楽しみにしてくださってありがとうございます。
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