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ボン・ボン・ショコラ 11

今回は蓮さんはちょっとだけなのです。
ごめんなさい。(;д;)







ピロリン!

蓮の携帯に着信の音が聞こえた。

「キョーコちゃん何だって?」
「…社さん、相変わらずキョーコと絡めますね。」
「違うの?」
「いや、違いませんけど…」

敦賀蓮の敏腕マネージャーは、後部座席で画面を見てふっと緩んだ担当俳優の表情を、嬉しそうに眺めた。




ボン・ボン・ショコラ 11




“お疲れ様です。ロケ、気をつけて頑張ってきて下さい。私も新作ショコラを頑張ります。お知らせ、ありがとうございました。”

「え?これだけ?」
「そうですよ。何か?」
「いや~…お前の顔があまりに緩んでるからさ、もっとホラ!こう…甘々~で、ベチャっと喉にくっつくような内容を想像したんだけど。」
「昔からそんなのありませんよ。」

(…そうでした。ささやかな幸せを噛み締める男でしたっけね…)

これ以上のからかいは危険だと察知したのか、遠い目をして在りし日を思い浮かべる。
クオンの出で立ちの時には、表情が更に豊かになるのか、嬉しそうな様子が隠せない。

空港内は流石に金髪のクオンとは並んで歩く事はできない。
駐車場で蓮を先に下ろし、無関係の振りをして搭乗手続きをしてから飛行機に乗り込むことにはもう慣れた。
VIPルームの少しだけ離れた席で、互いに同じ方向を向いたまま、小さな声で会話をするのが精一杯だ。
けれど、その日のクオンはふと、社に視線を向けた。


「社さん。」

「何だ?」
「俺は…焦りすぎなんでしょうか?」
「どうしてだ?」

困ったようにクオンは続ける

「やっぱり、顔を見るたび欲張りになるんです。焦っちゃいけないと思いながらも、キョーコをすぐに抱きしめたくて…この手に取り戻したくて仕方がないんです。もう、どうしようもないくらいに…」


「…だろうな。」

社はコーヒーをくいっと飲み干した。

「お前の気持ちは分からんでもない。でも、今のペースで間違ってないんじゃないか?だって、次のチョコレートの約束ができるくらい近づいたってことだろう?しかも、あのキョーコちゃんが返信してくるくらいだ。警戒してたらそんな返事も出す娘じゃないだろう。」
 
クオンはちょっと納得したようにホッとした表情で、また画面に目を落とした。

(そうですね、くらい言えよ。…って、久々の返信が嬉しすぎるのか。)

とても臆病な、
それでいて、駄々っ子のようにキョーコを求める蓮を知っている。

…もう、限界が来ているのかもしれない。

社も、それ以上は触れる事はなかった。










「おはようございます。」
「おはよう、キョーコちゃん。ちょっとこれ見て」

店長が見てと言ったのは、男性向けのファッション雑誌だった。
表紙には、『もてる男のバレンタイン事情』と特集の見出し。
最近店に顔を出す俳優を意識してか、カフェに置こうと店長が選んだ雑誌は、敦賀蓮を筆頭に最近のバレンタイン事情について恋愛の持論を語ったものらしい。

付箋がある場所を開くと、まさに敦賀蓮の特集ページだった。


――待っているのはたった一つのチョコレートなんです――

編集部:敦賀さんは毎年チョコレートをたくさん貰われているでしょう?でも、ズバリ!本命チョコ以外は受け取らないと聞いたのですが?
敦賀:本命チョコと限定すると少し違うように思いますが、実は、昨年からチョコレートを受け取る事はしていないんです。
編集部:え!?それは驚きです。その理由は?チョコレートがお嫌いとか?
敦賀:そうですね、確かにチョコレート好きというわけではないですが、以前はたくさんの方からいただいていました。けれど受け取らない理由は、嫌いだからではないんです。
編集部:嫌いではない以外の理由を教えてくださいますか?
敦賀:元々、頂いていてもなかなか口にすることが出来ません。きっと想いが込められた物なのに、自分はそれをお返しできない。だから、受け取る事自体が申し訳ない気持ちになってしまいました。
編集部:ファンの方はがっかりされるでしょうね。
敦賀:それについては大変申し訳なく思っています。勿論、事務所宛にはファンの方からたくさんのチョコレートが届きますし、とても有難いことです。敦賀蓮という俳優を愛してくださって、役者冥利に尽きます。けれど、以前共演した方からのものも、すべてお断りしています。本当に嬉しい事ではあるのですが、バレンタインにチョコレートを受け取る事は、昨年同様これからもないでしょうね。
編集部:今後も全くお受け取りにはならないんでしょうか?
敦賀:いえ、すべて受け取らないわけではありません。待っているのは大切な人からの、たった一つのチョコレートなんです。今までも、これからも、そのチョコレート以外は口にすることはきっとありません。
編集部:意味深ですね。それは意中の方からのチョコレートですか?
敦賀:そうですね。そう思っていただいて結構ですよ。そのチョコレートに出会えたら、いつかどこかでお知らせします。




敦賀さんが待っているのは、たった一つのチョコレート…
では、ここで買っていく一粒は?

「彼…チョコレートがあまり好きそうじゃないのに、どうしてキョーコちゃんのショコラを買って行くんだろうね。」
「…店長…」
「それ、嘘じゃないと思うんだな。大切な人からの大切な一粒。キョーコちゃんとどういう経緯か知らないけど、彼…本気だよ、きっと。そうじゃなかったら、こんな小さな店に来るわけがない。」
「でも!」

「…実は俺、キョーコちゃんが女優だったって知ってるんだよ。」
「え…?」
「キュララのCMもダークムーンも好きだったし、結構君のファンだったんだ。だからキョーコちゃんが働く事に同意したんだよ。」
「店長?」

「実は俺は君と同じなんだ。芸能界で宝田社長に随分と世話になった一人。だけど、君と違って俺は芸能界は向いてなくて、早々に見切りをつけた。嫁さんと結婚して、子どももできて…凄く幸せだと思う。芸能界っていう特殊な世界にいたけど、そんな幸せを求めてもいいんだと思ってる一人。」
「店長、それ…」
「うん、黙っててごめん。だから分かるって言うのかな…幸せを見つけたいと思う気持ちがね。ああ、敦賀蓮は真剣なんだなって…。もし、君が芸能界にいたとき、もし彼と接点があったとしたら?有り得ない事じゃないだろう?」

店長は、思い出すように目を閉じた。

「それに…気がついてるかい?キョーコちゃんの作ってるショコラ、全部敦賀蓮仕様だろう?」
「そんな事は…」

否定の言葉は言い出せなかった。
だって、自覚してしまったから。
いつもいつも私の作るショコラは、ほろ苦くて、洋酒の香りがして…敦賀さんのためのショコラになっている。

「だから、キョーコちゃん、作ってみなよ。彼のための新作ショコラ。彼が待ってるのは、きっとキョーコちゃんの作ったものなんじゃないかな。」





(続く)
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  • 2017-02-05│09:55 |
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Re: タイトルなし
> じゅん○さま

コメントありがとうございます。
そうなんです。記憶のある蓮さんはさぞかし辛いと思うのですが、もう一頑張りと言ったところです。
よく耐えてますよね。焦るな、焦るなとずっと言い聞かせるのも大変ですよ。
そして、キョコさんを後押しするのは店長さん!蓮さんの欲しいチョコレートはキョコさんのもの!と断定してくれました。ありがとうございます。きっと自信を持って新作ショコラに取り掛かるに違いありません!!
  • 2017-02-08│19:56 |
  • かばぷー URL│
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