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ボン・ボン・ショコラ 13

(H17.4.25一部修正)










「最上キョーコさん、君と付き合いたい…君が…好きなんだ」


閉店後の小さなケーキショップで、そんなドラマみたいな台詞を言われた。
芸能界一いい男と言われる人で、抱かれたい男No1で、背も高くて、演技力に定評のある超絶男前な俳優さんに。
しかも、有り得ない事に両手でチョコレートを載せたお皿ごと手を握られて、静かな瞳で見つめられて。
映画のスクリーンでもテレビでも、こんな表情は見たことが無い程の甘やかな表情。


これは嘘だ、嘘に違いない。

絶対に…あり得ない。
敦賀さんが私のことを好きだなんて…

…でも、嘘ではないと

噓であって欲しくないと……心のどこかが期待した。





ボン・ボン・ショコラ13




「最上さん、嘘じゃない。君の事が好きなんだ。だから、付き合って欲しい。」


(いや、いや、それはどこの世界のお話しですか?それともドッキリか何かですか?いやモニタリングか何かですか?そうじゃなかったら、本当で性質の悪い冗談ですか?それとも新手のからかいの手口?ありえない…ありえないけど何なんですか?)

随分と長く固まったままのキョーコから漏れ聞こえる小さな声は、きっとキョーコは脳内発言だと思っているのだろう。
蓮は思わず苦笑いだ。


「違う…、全く君は相変わらずだ。どうしてそう、変わらないんだろう?」



「変わら…ない?」

蓮から発せられたキーワードにキョーコがピクリと反応した。

「そう、君を好きだと言ったその日と変わらない。何一つ。」

「その…日? 何…一つ?」


蓮は呆然とするキョーコの手から皿を取り、カウンターに置いた。
そうして、動けないキョーコをゆっくりと、優しく両腕で包み込んだ。

「お願いだから、逃げないで?」

少しだけ身を硬くしたキョーコを優しく抱き寄せて、ゆっくりと力を込めた。
キョーコが逃げない事に、彼女のぬくもりに…
ホッと安堵の息を漏らした。

「最上さん、いや…キョーコ。君が好きだよ。ずっと前から…ずっとずっと前からね。」

腕の中で聞こえる声はくぐもっていて聞き取りにくいのに、何故こんなにも心が震えるのだろう?
そして、敦賀さんに抱きしめられるだなんて、そんな有り得ない事が現実に起こっていると言うのに、どうしてこんなにホッとするんだろう?

もしかして、もしかして…と思っては、その気持ちを打ち消す。





「ど…して?私…」


「どうしても、君。」



蓮が優しい声で語りかける。


「君は…俺の事が嫌い?」


嫌いなわけがない。寧ろ、隠したいほど好きで…


「君は…こうされているのは、嫌?」


嫌なわけがない。凄く暖かくて、ホッとして…
まんじりとも出来ず、声を絞り出すことすらできない。


「信じられない?」


その声に、ようやく少しだけうなずく事ができた。


「好きだよ…」


頭のてっぺんから静かに降り注ぐその声を聞いたら、涙が滲んできた。



やがてその小さな震えが蓮に伝わる。

抱きしめた温もりに、切ないほど愛しい気持ちが込み上がり
蓮はきゅっとキョーコを抱きしめる力を強くして、そっとつむじにキスを落とした。








だるまやに向かう車の中でも、蓮の手はキョーコの手を握っていた。

「もう遅いし、暗いから送るよ。」
そう言って、店を閉めるキョーコに有無を言わせず車に乗せた。

だるまやまでの沈黙の時間が、愛おしいような、まだ夢の中にいるように感じる


「最上さん、返事は…もうそんなに長くは待てないんだ。」


だるま屋に着いたとき、そう告げた蓮のほうを見上げた。
その微笑む姿は神々しいほどに甘やかで息が止まりそうになる。

「バレンタインデー…君に会いたい。勿論、忙しいのは分かってる。でも…」
「敦賀さん、どうして私なんですか?」

思わずふっと出た語気の強い質問だった。

「…知りたい?」

キョーコの瞳がじーっと蓮を見る。

「うん、教えるよ…14日にね。だから、君に会いたい。」


(やっぱり、夢なのかもしれない。でも…確かめたい)


「どこに行けば…」
「俺のマンションの場所は知ってるよね。覚えてる?」
「はい。」


「君を待ってる。」


キョーコは目を見開いた。


「俺はその日は20時ごろには仕事は終わって21時には自宅にいる。他の予定は入れない。絶対に。」

コクン、とキョーコが頷いた。


「それと、君の作ったチョコレートが欲しい。」
「チョコレート…ですか?」
「そう、ワインのチョコレートは、今日食べ損ねてしまったから是非。それと…もう一つリクエストしたいんだ。」
「もう一つ?」

蓮はいつも一粒しか買わない。
それはキョーコにとって当たり前の事だったのに、どうして今、もう一つを欲しいというのだろう。

「それは君が選んでくれる?俺は君からバレンタインデーのチョコレートが欲しいと思ってる。もし君が俺にチョコレートをくれるなら、その一粒は君が選んで欲しい。」

敦賀さんが欲しいといったチョコレート…私の作るショコラで本当にいいんだろうか?

“大切な人からの大切な一粒。彼が待ってるのは、きっとキョーコちゃんの作ったものなんじゃないかな。”

店長が言っていた言葉をキョーコは思い出していた。

「分かりました。少し遅くなるかも知れませんが、伺います。」
「うん、気をつけて。」

名残惜しそうにその手を離すと、蓮はキョーコを見送った。
キョーコがだるまやの勝手口に入っていき、その姿が見えなくなるまで…





(続く)



もうすぐバレンタインですね。
キョコ誕・蓮誕・バレンタインと3つのイベントをまたいでの連載でしたが、残り二話となりました。
長々とお付き合いいただきましてありがとうございます。残りもどうぞお付き合いくださいませ。


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おはようございます(^^)
よく言えました!!蓮くん!男だ!
萌え萌えきゅんきゅんしてます💖
一度経験してるから、二度目は早いのかな。もう、眺めてるだけじゃあ我慢できないよね(T-T)
私も敦賀セラピーしたい(笑)←切実
バレンタインデーはどんな素敵な夜になるのかな…楽しみで楽しみで胸きゅんきゅんが止まらない☆
次も楽しみにしてますー✨
Re: タイトルなし
> じゅんこさま

萌え萌えきゅんきゅん&コメントありがとうございます。

ヘタレていない蓮さんは、やっぱり格好いい気がします。
もう我慢の限界に来ていたでしょうから、キョコさんが自分に気持ちを寄せてくれているのかも…と思ったら、いても立ってもいられなくなっちゃったんですよ。
犯罪者にならなくてよかった…(笑)
記憶をなくしてからの初☆敦賀セラピーはこんな感じで!

私も一度でいいから敦賀セラピーを受けてみたいぃぃぃぃぃぃ~~~!!!
夢でもいいから見たいなぁ…(T・T)
  • 2017-02-13│12:36 |
  • かばぷー URL│
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