恋の炎は消火不能です 3

連続投稿って久しぶり。
最近無駄に話が長くなってしまうので、困ってます。





「なぁ~…気になんねえの?」
「何がだよ。」
「奏江ちゃんがさあ、本当にお前に感謝してたよ?あの子も一言御礼が言いたいって、言ってるらしいって。」
「俺は当然のことをしたまでだ。」
「だけどさ、ちょこーっと位、行ってみねぇ?」
「・・・・・・」
「敦賀ってばさ~こういう時、積極的になんないと、いつなるんだろうね~?な、上杉?」
「そうですよね。敦賀さん、ちょっと真面目すぎっすよ。」




恋の炎は消火不能です 3




村雨と上杉にそういわれて、しぶしぶ行った病院。
小さなバスケットにアレンジされた花を携えて、蓮は病室の前に立っていた。

まあ、実のところ気にならなかったわけではなかった。センスがあると思った救命救急。寒い中、自分を濡らしてでも熱から守ろうと思った回避行動。彼女が凍えるような寒さに耐え、どうしてあそこに蹲って、あんな行動を思いついていたのかについては、自分でも聞いてみたいと思っていたから。

病室のネームプレートを確認すると、そこにあるのは“最上キョーコ”という名前。
蓮は小さくノックをすると、病室に足を踏み入れた。

「こんにちは、最上さん」
「あ!!!消防士さん!?? そっ…その節は、ありがとうございました!!大変ご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ございませんでした~~~!!!」

怪我人だろうに、べしゃっとベッドの上でへしゃげる彼女。

「ちょ!ちょっと…そんな!俺、当然のことをしたまでだから!助かってよかったよ。」
「ほへ?」
「いや、ちょっと気になって寄ってみたんだけど、元気そうで何よりだよ。これ、お見舞い。」

差し出されたバスケットの花に、ぱぁぁぁ~~~っとキョーコの顔が華やぐ。
蓮にもブスブスと突き刺さりそうなその笑顔の花攻撃は、ちょっとだけ罪悪感をもたらした。

(もうちょっと…良い花にすればよかった…)

講習会で見せた真面目で堅物な印象と違って、キョーコは大きな声でよく笑い、よく喋った。
火事の日は、たまたま偶然その日の体育で捻挫をして滅茶苦茶痛くて、ようやく塾に行ったとか、たまたま塾でトイレを利用していて、すぐに火災報知機が鳴っても動くに動けなかったとか、はたまた、水をかぶったのは、歩けずに転ぶ羽目になって、バケツの水をひっくり返してぬれねずみになったところに煙と炎が目の前にやってきて、火を吐く怪獣を倒すべく水道全開にしてシャワーを浴びせまくった結果なのだと嬉々として教えてくれた。

「じゃあ何?君は炎から身を守ろうとしたんじゃなくて、火を吐く怪獣が怖くて…?」
「そう!そうなんです!だって、“ギャオ~~~!!”なんて、雄叫び上げながら炎が襲ってくるんですよ?怖くない訳ないでしょう?」
「焼け焦げるとか、不安じゃなかった…?」
「焼け焦げる…丸焼きになる気はありませんでした!!」

あまりの奇想天外な発想に、思わず声を出してしまうほど、蓮も笑った。

「元気そうで安心した。じゃあ…」
「あのっ!お名前…伺ってもよろしいですか?」
「あ、言ってなかったっけ?敦賀といいます。敦賀蓮。」
「敦賀さん…。本当になんとお礼を言っていいか…」
「いや、助けられてよかったよ。お礼は…もう十分言ってもらったよ。」
「はい!ありがとうございました!」

そう言って、少し近くなった距離感をくすぐったく思いながら、蓮は病室を後にした。





それからしばらくして、キョーコは退院した。
足首の捻挫だと思っていたら、実は骨折しており、それの治療もあったためだ。
ようやくギブスもはずれて日常生活に戻ると、忙しい母の代わりにいつもどおり洗濯物を干しながら、ベランダから消防署の訓練場を眺めた。

消防署の近くにあるマンションに住む…なんて、近くどころか訓練場の真向かい。たった一本の路地を挟んで丸見えの場所に住んでいた。
ベランダからは、するするとはしごや縄を上り下りする消防士の姿が丸見えだったし、放水訓練でホースを出したり丸めたり、大きな声で号令をかけながら、訓練する消防士達…特に、蓮の姿を追っていたキョーコだった。

元々、消防訓練を見るのは大好きだった。小さい頃からずっと眺めてきたそれ。母から「よく飽きないわね。」と言われるほど毎日眺め、その習慣は高校生になっても変わらなかった。そんなある日、新隊員を迎えての初訓練だったのだろうか。整列をするために並んだ大勢の大男の中でも一際目立つその身長と、大きいのに動きが俊敏なその姿が目に入った。ロープをするすると腕の力だけで上り下りするのを見たときには、うっとりと見とれてしまっていた。

それからは、暇さえあれば訓練の様子を見つめ、動く姿を目で追った。だから、救命級講習会で近くの消防署員が来ることを知ったときには、ちょっとだけ期待もしたし、当日になってみればそれはドンピシャで、しかも2組の担当と来た。想定外に緊張しすぎて他の子達みたいにキャーキャーと騒ぎ立てる事もできず、しかめっ面で…至極真面目顔になってしまったのだった。

「“はしか”よ“はしか”、これは“はしか”みたいなものよ。一過性のミーハーな気持ち!アイドルに現を抜かすのと同じよ!顔しか知らない、名前も知らない人に懸想するなんて、有り得ないから!それに、あんな大人がこんな小娘を相手にする訳ないって分かってるって。だから、“は・し・か”!」

そう言って、奏江には言った。
でも、偶然は重なるもので、たまたま偶然の火災で、格好悪く、運悪く逃げ遅れて、救助してもらうなんて出来すぎだ。
しかも、たまたま偶然、奏江に気があるらしい消防士さんと仲が良いなんて、これも出来すぎだ。
お花を持ってお見舞いなんて、たまたま気が向いた偶然だろうと思う。けれど、大好きなガーベラが入っていたくらいで、大喜びするなんて…ああ、浅ましい…とキョーコは思ってしまうほど、ドキドキする気持ちが止められない。

加えて、あれ以来、訓練中や朝礼中に通りかかって会釈をすると、向こうも軽く反応してくれるようになるなんていう出来すぎは重なって、かなり欲張りになっている。

これは“はしか”だ。
熱が冷めればあっという間に完治する…そう言い聞かせても、やっぱり遠目で彼の姿を追う自分がいて、あまつさえ、こちらを見てにこっと笑ってくれる姿を見ることができるなんて、どうしようもないほどウキウキして楽しかった。

けれど、それ以上近づくことはキョーコには出来なかった。

退院からしばらく経ったある日の塾の帰り、キョーコの目は一際背の高いシルエットを目ざとく捉えた。
やっぱり熱病に浮かされている間は、アンテナが高く張り巡らされているらしい。
いつも遠目でも分かるほどに記憶に焼き付けた蓮の後姿は、絶対間違える筈がなった。
こんな街中で、偶然見つけることが出来た事が嬉しくなって、声をかけてみようかと勇気を振り絞って近づこうとした途端に、足が止まった。

人ごみが切れたその先、嬉しそうに笑う蓮の左腕には、長いふわふわのロングヘアーが纏わりついていたから。




(続く)



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