恋の炎は消火不能です 5

事故です
…ベタですみません。(。´・(ェ)・)






恋の炎は消火不能です 5




彼女が大学生になったのは知っていた。
彼女を初めて見たのは高校3年生の救命救急講習会で、その後火災に巻き込まれた彼女を救助した。
塾に通っているんだったら、なんとなく進学するんだろうな…とは思っていた。

消防署での朝礼の時間帯にマンションを出てくる彼女の姿を確認し、可愛らしい笑顔で会釈をする彼女の姿を見るのが、密かな楽しみになった。
そして、夕方に彼女が帰る姿を見かけると、ホッとした。

「な~、敦賀ってば、告白しないの?」

「誰に?」
「誰に…って、最上キョーコちゃんに。」

「…何で?」
「何で…って、違うの?」

そう村雨に言われた。
あながち間違ってはいない…が、告白する気は更々なかった。
たかだか講習会の指導者と受講者としてのつながりと、火災で救助しただけのつながりで、“君に恋をしました、付き合ってください。”と言えるほどのずうずうしさは、生憎持ち合わせていない。
それに、こっちがいいなと思っていたって、向こうだって今時の女の子だ。大学生にもなれば彼氏の一人や二人はいるかもしれない。

「君みたいに積極的には行かないさ。」
「だよね~、結局俺も奏江ちゃんに玉砕しちゃったしさ。くっそ~、上杉の野郎、上手い事掻っ攫いやがって!」
「な?女子高生って…いや、女子大生なんだから年相応の男性と付き合うだろうさ。それに…」

「それに、何だよ」
「んー…面識がほんの少しある程度の男から言い寄られても、普通は気持ち悪いだけだろう?」
「そうかなあ?結構まんざらでもない気がするけどな。」
「気のせいだよ。彼女たちからしたら、間違いなくおっさんの部類だろう?」
「うわ!敦賀く~ん、それは傷つく!」
「それに、しがない公務員だよ。女子大生はもっと年齢が近いとか、華やかな職業の男を選ぶんじゃないかな?」

そう言って、笑って自分を誤魔化し、少しだけ嘘をついた。

訓練の時に、彼女の住む部屋はどこだろうと思いをめぐらし、マンションをチラリと見上げた事もあったし、夜勤の時でも仮眠室から時々遅く帰る彼女の姿を確認したりもした。

それでも…やはり年齢差は大きい。
流石に5つ以上も年下の女子高校生はダメだろうと、無意識にブレーキがかかって、あれから村雨に誘われるままに、いくつか合コンにも行った。
でも、どれもうまくはいかなかった。

原因は…まあ、妹にもあるのだが、やはりそんなに好きでもないのに付き合うのは、自分の性に合わないらしい。

手近なところで手を打つのはやめようと、2年ほど大人しくしていたとき、配置換えの辞令が下った。

初めて採用された勤務地から、次の消防署へ。
彼女にその事を伝える術もなく、俺は荷物を整理し、前の消防署を後にした。


何事もなく過ぎる平凡な毎日。
何事もなかったように、無視し続ける気持ち。
時々、思い出したように彼女の笑顔がふっと脳裏に浮かぶが、そんなものはただの感傷だ。

なんとなく物足りない日々を過ごしていたある日、交通事故の連絡を受けて俺は緊急出動した。
現場は東都大学前交差点。
スピードを出しすぎたまま右折してきた車が、横断中の歩行者に気付かず接触。
接触された歩行者は転倒し、意識不明。外傷のほどは不明。

よくある出来事ではあるが、現場に駆けつけた時、意識なく路上に倒れていたのは、最上キョーコ…彼女だった。







とりあえず心身の状態を確認し、事故状況を把握すると、蓮を含めた救急隊員は、その場ですぐさまキョーコをストレッチャーに乗せ、救急車に運び込む。
意識がないので頭を打っている可能性はあるが、目立った外傷や出血はなく、心肺に異常はない。
一緒に乗り込んできた大学生らしい男性がキョーコに声をかけた。

「キョーコちゃん!しっかりして、キョーコちゃん」
「すみません、関係者の方ですか?」
「はい、一緒にいました。」

彼氏だろうか…そんな思いがふと頭をよぎる。
そんな事を考えている暇はないのに…と冷静になったところに、キョーコが薄らと眼を開けた。

「光さん…」
「大丈夫!心配しなくていいから。」

慌てて喋る男性を制し、蓮はキョーコに声をかけた。

「最上さん、意識ははっきりしていますか?いくつか質問していいですか?」

その声を聞いて、キョーコはゆっくりと蓮の方を向いて目を見開いた。

「敦賀さん…」
「うん、大丈夫かな?まず、お名前をお願いします。」

その時、「え…」と小さく隣から聞こえたが、そんなことはどうでもよかった。

「最上…キョーコです」
「生年月日は?」
「平成○年、12月25日…20歳です」
「意識ははっきりしているようですね。良かった…。現在、救急病院に搬送しています。骨折の可能性と、頭を打っている可能性がありますが、あと数分で到着予定ですので、安心してください。」
「は…い…」
「着いたらすぐにレントゲンになると思います。痛みは酷いですか?」

てきぱきと事務的に業務をこなす蓮を見て、キョーコは思いのほか冷静な自分に気付いた。
普通は事故が起きたら、今の状況を不安に思うはずなんだろうな…なんて思うのに、混乱もせず、全く不安に思っていない自分。むしろ逆に、神経が冴え渡ったかのように蓮の仕事を目で追っていることに気がついた。

「え…と…、確かに痛い…かな?」
「どこが痛いですか?足?頭?」
「左足です。…あのー…敦賀さんは今、どちらの消防署に?」

その言葉に蓮は、ん?と言うように首をかしげると、少しだけ微笑んだように見えた。

「今は、東都大学の近くにある消防署に配属されています。」
「大学の…近く」
「はい。もうすぐ着きますよ」

そういうと間もなく救急車は病院に到着した。
あっという間に病院のストレッチャーに移し変えられ、その瞬間、左足に鋭い痛みが走る。
“うっ…!”と顔をしかめたが、これは仕方ない。
ただ、さっきから断続的な痛みが容赦なくキョーコを襲っていたのは事実だ。

「レントゲンを撮りますから、付き添いの方、こちらへお願いします。」

ストレッチャーを押してくれる白衣の女性たちの隙間から、看護師に説明する蓮の姿が一瞬見えたけれど、それはだんだんと視界から遠ざかっていく。


(お礼を言わなくちゃ…敦賀さんに…何か…)


けれど、ストレッチャーはそんなキョーコの想い等知る由も無く、当然のように病院の奥へと進んでいく。

視界から蓮が消えたと思った瞬間…キョーコは痛みのあまり、再び意識を手放した。




(続く)


痛くないわけがないのに…
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