恋の炎は消火不能です 6

2017.1.18一部修正






キョーコちゃん…さっきの救急隊員の人、知り合い?」
「え?ああ…少しだけ」
「そう…どんな知り合い?」

レントゲン室でようやく意識を取り戻し、レントゲンの撮影を終えて出て来たキョーコに、光はそう尋ねた。



恋の炎は消火不能です 6




「左腓骨の骨折…ですね。あとは打撲に擦り傷。これくらいですんでよかったね。ギブスを嵌めて、3週間ってとこかな?」
「ハア、3週間…」
「うん、脳波も異常ないから入院なし!彼氏もビックリしたでしょ?はい、もうかえっていいよ。お疲れさん。」

「…彼氏…」

いちいち訂正するのも面倒なので、そのままにしていたら、バッグの中の携帯が震えた。

「あっ、すみません、診察ありがとうございました。」

慌てて病室から出ようと腰を上げると、激痛が走る。そんなキョーコの様子を見て、光がかばんをさっと取り上げて、キョーコの脇を支えた。

「じゃ、失礼します。行こう、キョーコちゃん」

そう言って、キョーコを支えて松葉杖を持たせてくれる。

「すみません、ありがとうございます。」
「電話、切れたけど、どうしようか?」
「あ…後でかけ直します。電源切るのを忘れてました。すみません、気を使っていただいて。」
「いえ?どういたしまして。送るよ、家どこ?」
「えっと…近いのは○○駅ですけど…」
「うん、分かった。ちょっと座ってて、会計してくる。」
「いえ!!それは自分で!」
「座って、待ってて!」

光がお構いなしにキョーコを置いて会計に向かった。

(ふう…光先輩、良い人なんだけど…)

キョーコは思わず溜息をついた。

一つ年上の石橋光は、キョーコの専攻している学科の一つ年上の先輩で、新歓コンパに参加したことで知り合った。
それからは専門授業で一緒になったり、研究室に誘われたりしている。
そして…つい先日、告白をされたばかりだ。

『もし、付き合っている人がいないんだったら、俺と…付き合ってくれないかな?キョーコちゃんと一緒にいると、凄く頑張れるんだ。』

だからだろうか?先ほど蓮とはどんな知り合いか聞かれても、答えることなど出来なかった。

(彼は、私の長年の想い人です)

そんな事、光先輩に言えやしない。



光先輩に好かれているのは、何となくわかっていた。

心の中に蓮がいるせいなのか何なのか、それは分からないけれど、当たり障りのない後輩であろうとして、意識的に気付かない振りをした。二人きりにならないように無難に2年間も避けて続けてきたのは事実だ。
だから、そのまま就職活動で研究室に来る機会が減れば、自然にフェードアウトできると思っていたのに、この前期終わりにいきなり告白されて、正直ビックリした。
良い人だと思う。親切で控えめでとても気さくな人だ。ユーモアもあるし、いまどきの外見で清潔感もある。
けれど、正直どうしても付き合う気にはなれない。
それは光に限らず、他の誰でもきっと同じ…



(後で支払いの金額、聞いておこう。)

そうして、若干の気まずい思いを抱えながら、キョーコは光に付き添われて、タクシーで帰宅した。

病院での着信は母からで、丁度仕事が終わったとの事。事故の事を手短に説明し、心配を最小限には減らしたつもりだ。

「あら、彼氏に送ってもらったんじゃないの?上がってきたらよかったのに。」
「違うよ。同じ学科で研究室の先輩。たまたま偶然一緒の時に事故にあっただけ。」
「あなたはそう思ってても、向こうはどう思ってるか知らないわよ?普通はそこまで付き合わないから。」

母に意味深な事を言われ、鋭いな…と妙に納得してしまう。

「あ~…優しい人だからね。きっと責任感も強んだよ。とにかく彼氏じゃないから。」
「そう、分かったわ。」

自宅前まで送ってもらったあとは、部屋の前まで送ると言う光の申し出を固辞した上で、母にはそんなふうに説明した。

ようやくたどり着いたマンションの自室で、グッタリとベッドに横になると、キョーコはふっと頬を緩めた。

(会えた…敦賀さんに会えた。)

交通事故というアクシデントはついていたものの、確かに蓮に会うことが出来た。

“もし、お姉さまとその方の運命が繋がっているのでしたら、10日以内に会えるかもしれませんことよ?覚悟なさいませ?”

ニヤリと悪そうに笑ったマリアの顔が忘れられない。

こっそりとベッド脇の宝物ボックスから、小さい人形を取り出す。
それは、遠目で見たままの、消防服を着た蓮を模した人形…
こっそりと作って、こっそりと大事にしていた人形を見て、キョーコの頬は緩んだ。

1週間で会えた。
それはマリア曰く“運命が繋がっている”と言う事で、どんなご縁かは分からないけれど、この広い東京でもう一度会えたという事はまさに奇跡といっていい。
くはぁ~と枕に頭をこすり付けて、ばたばたと足を動かそうとしたが動かない足に気がついた。あいたたた…と思ったものの、じきに顔がにやけるほどに、嬉しさのほうが勝ってしまった。





(続く)
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