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恋の炎は消火不能です 7

*前回の終わりの部分を、こちらに持ってきました。







事故から2週間が経ち、医師の予想外にヒビの修復は早かった。
少し筋肉が落ちたせいで違和感はあるものの、ギブスも取れた。あれがあると、お風呂に都合が悪かったのだ。念力を送って、回復を早めたからかもしれない。

「お姉様ったら、そんなに急いで回復なさらなくても、一度繋がったご縁はそう簡単には切れませんことよ?」

マリアにそんなふうに言われても、やっぱり気は急いた。

ギブスが外れる少し前、蓮が勤務している消防署に出向いた。…が、蓮は非番でいなかった。
何度かたずねて行ったものの、なぜかいつも非番と被る。
そんなある日、見るに見かねたのか、消防署の人が声をかけてくれたのだ。

「伝言なら承るけど?」

最近の消防士は顔で採用するのか?と一瞬考えるほど、その男性も端整な顔立ちをしている。気さくに話しかけてくるその風貌は、村雨のそれに似ているが、もっと年上なのだろう。声をかけてくれた消防士のネームプレートには、「貴島」と書いてあった。



恋の炎は消火不能です 7




「つーるーがー君♡ 君もやるときゃやるんだね。」

蓮にとっては上司に当たる、救命救急2班の班長である貴島がニヤニヤしながら、蓮に声をかけた。

「何ですか?班長」
「いつの間にあんな可愛い女子大生引っ掛けたんだか?」
「女子大生…ですか?」
「そう、女子大生。松葉杖ついた細身のカワイコちゃんが3回ほど尋ねて来てたな。お前の非番ばっかりに来るもんだからさ、周りの若いもんが騒ぐ騒ぐ。」
「あー…」

その時点でたずねてきたのが誰だか、すぐに判った気がした。

「敦賀君も隅に置けないなぁ。あんまり気の毒だから、電話番号貰っといたよ?」
「…え?…班長、今なんて?」
「電話番号貰っといたけど…いる?」

「要ります!ありがとうございます!」
「ぷっ!珍しいね。その反応。」

思わず、かぶりついて即答してしまったと思いつつ、それを貴島は少しだけ驚いただけで、メモを渡してくれた。

「心配しなくても、俺にはちょっと若すぎるな。はい、最上キョーコちゃんとやらのメモ。うまく行ったら驕りね」

貴島はにやっと笑って、訓練に向かった。





翌日、勤務解除した後、蓮は貴島が預かったと言う電話のメモを取り出した。
女子大生の生活時間帯なんてよく分からない。けれど、朝礼中に大学に向けて出発していた事を思い出し、この時間帯なら大丈夫かもと思って思い切ってかけてみることにした。
電話をかけるのにさえ緊張する自分が少し笑える。

RRRRR・・・RRRRR・・・カチャ

『はい』
「もしもし、えっと…最上さんの携帯でしょうか?」
『えっ…はい。あの…もしかして…敦賀さん…ですか?』
「はい、敦賀です。その…署の方に来てくれたって聞いて、メモを貰いました。」
『はい、すみません、その…お礼をしたくて、ずうずうしくも伺ってしまいました。』
「お礼なんていいのに…でも、少しは回復したなら良かった。」
『一言だけでもお礼が言いたくて、伺ったんですけど、かえってご迷惑をかけてしまいました。すみません。』
「いや、大丈夫。俺も気になってたから。その…折角来てくれたのにいなかったお詫びって言うか、もしよかったら…お茶とか、一緒にどうかな。」

キョーコが、電話の先で動きを止めている様子が感じられた。
しまった…俺こそずうずうしかったかな?と不安になりかけたときだった。

「はい。是非お願いしたいです。」

躊躇いがちに聞こえた声に、蓮は気持ちが一気に膨れ上がるのを感じた。





非番になったその日の午後、現在の勤務地とキョーコの自宅との中間地点の駅で待ち合わせた。こんなふうに待ち合わせをしてデートするなんて、蓮にとっては久しぶりの事だ。

まだ松葉杖であまり遠くまで歩けないキョーコが、改札からぎこちなく出てくる様子にハラハラする。
それでも、蓮の姿を見た途端、今までと変わらぬ笑顔で会釈をしたキョーコに、言いようもない嬉しさが込み上げ、思わず駆け寄って声をかけた。

「最上さん、大丈夫?ごめん、車で迎えに来ればよかった。」
「いいえ、そんな滅相もない。結構慣れたんですよ?ほら!」

片方の松葉杖で、おどけて見せるキョーコにホッとした。

「でも、本当に足は痛くない?」
「大丈夫です!骨は折れても治るもの!!こんな事何でもありません!」

そんなことを言う女子は初めてで、その発想に蓮は笑った。
キョーコが行きたいと言ったのは、駅に程近いカフェ。

「一度入ってみたいと思っていたんですけど、チャンスがなくて。ハーブティーが美味しいらしいんですけど、敦賀さんはそういうのは苦手ですか?」

そう言って遠慮がちに聞くキョーコに、大丈夫と告げた。
店に入ると、ジャスミンティーらしき匂いがふわっと香る。女の子が好みそうな店だったが、控えめなインテリアと匂いに癒されると言うか、意外と落ち着いているような気がして、蓮はホッとした。

「こういう場所、敦賀さんは苦手でしょうか?」
「いや?大丈夫みたい。あまり若い女の子がにぎやかにいる店は好きじゃないけど、ここは…落ち着くね。」

そういうと、ぽわっと嬉しそうに微笑むキョーコを、やっぱり可愛いと思った。

「最上さん、髪…黒くしたんだね。」
「あ、そうなんです。うちの高校はその辺自由だったので、なんとなくそのままにしていたんですけど、流石にもう二十歳過ぎたのに、あの茶髪はないかなと思いまして。」
「そうだ、20歳って言ってたね。ついこの間まで高校生だった気がするよ。この前見たとき、一瞬誰かと思ったんだ。印象が随分変わってたから。」
「あははは…って、その節は本当にお世話になりました!火事で命を助けていただいた上に、今度は交通事故なんて!本当に何度ご迷惑をかけたらいいのか…」
「そんな大げさな。職務だから、気にしなくていいのに。でも、安心した。大事無くて。」
「はい。お蔭様で大事無く過ごしております。ですから、やっぱりちゃんとお礼がしたかったのです。本当にありがとうございました。…でも、すみません。もしかしたら彼女とかいらっしゃるかもしれないのに呼び出したりして。大丈夫ですか?」

蓮のことを心配して発しているだろうその言葉に、ちょっと返事を躊躇ってしまった。

「彼女…は、ここ何年もいないんだ。残念ながらなかなか出会いもなくてね。それこそ、君は?あの時一緒にいた彼、俺と一緒にいたら誤解されたりしないかな。」

キョトンとキョーコが首をかしげる。

「彼氏…はいません。あの時一緒にいたのは学部の先輩なので、違います。」

「そう…なの?」
「…そう…です。」

もじもじと二人は俯いてしまった。

((そう…か、彼氏(彼女)…いないんだ…))

いろいろ、誤解をしていたのではないだろうか?
初めてお茶を飲む機会に恵まれたとはいえ、さほど緊張はしていない気がする。なんだか、会話自体あまりしたことが無いのに、ずっと前からこんなふうだったみたいに、話が進んでいく心地よさ。

本当はずっと会いたかった。
また会話を交わしてみたいと思っていた。
いつも相手のことを考えているけれど、諦めてもいた。
それが…事故とはいえ、偶然会えてこうやってお茶している。
そして、マリアの言葉がキョーコの頭に蘇る。

“運命が繋がっているのでしたら、会えますわよ”


「あの…」

キョーコは、意を決したように口を開いた。

「敦賀さん、お願いがあるんですけど…その…」

キョーコが深呼吸して次の言葉をつむぎ始めた。

そして、その瞬間に蓮も同じ事を考えていた。




「私と…「俺と付き合ってもらえないかな」」





(最終話に続く)
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Comment

おはようございます(^^)
きゃーーーー❤❤なんて初々しいの🎶(*^^*)🎶可愛いカップルだわ。
原作もこれくらいのスピード感ほしいものだわ。
もし次で終わっても、その後の展開とかもたまに小出しでほしいなぁ。
他のお話も楽しみにしてます☆
更新ありがとうございました(^-^)
急接近
こちらの二人は、あっという間に急接近!!ニマニマしてしまいました。
本誌でもこんな感じに進んでくれればと思います。

  • 2017-01-25│18:47 |
  • harunatsu7711 URL│
  • [edit]
Re: タイトルなし
> じゅんこさま

コメントありがとうございます。
初々しいですか?嬉しいです!
ちょっとスピード感ありありです!彼氏(彼女)いないのかー…って思ったら、長い片思いの後はチャンスさえあればこんな風に進むんじゃないかという妄想が膨らみました。
次回もサクサク進みたいですね。
  • 2017-01-25│19:53 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
Re: 急接近
> harunatsu7711さま

コメントありがとうございます。
急接近な二人です。いきなり進むか!?というくらい進んでしまいました。
でも、長い片思いの上にお互い思いは自覚していたくらいですから、曲解思考さえなければこんな風に進むんじゃないかしら?いや、あくまでこんな風に進むと嬉しいという願望です!
  • 2017-01-25│19:59 |
  • かばぷー URL│
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