恋の炎は消火不能です 8

「最上さん、次の休みは間に公休を挟むから、三日連休になるんだけど、どこか行きたいところはない?」

付き合い始めて3ヶ月が経ったある日、蓮はキョーコにそうたずねた。



恋の炎は消火不能です 8




そう、付き合って3ヶ月が経った。
二人の出会いは3年近く前で、ただの救命級講習会の指導者と受講者。そして、火災の救助者と被救助者。ついでにいうと、救急隊員と交通事故の被害者の関係だったはずの二人。
それでも、ここに繋がっているのは、ひとえにキョーコが長い間、密かに蓮を思っていたことと、蓮も密かにキョーコを思っていた事に尽きる。

キョーコは蓮と付き合うことになってすぐに、光にお断りの返事をした。

「そう…か、もしかして、俺がきっかけを作っちゃったのかな。残念。」

そう言ってしょんぼりされてしまったが、こればかりは仕方がない。
マリアにも付き合うことになったと報告したときには、自分のことのように喜んでくれた。…ただ、26歳の消防士ということには、ちょっとだけ難色を示したのは不思議なことだったが。

まあ、そんなこんなで、手堅く付き合い始めた二人だった。
たまたま消防士と言う職業柄、二日に一度は丸一日休みがある。そして、キョーコは真面目なあまり、単位を多めに取っていたことが幸いし、3年の後期は必修以外はあまり授業を取らなくてもよかった。
それで、かなり普通のカップルとは違って、平日の昼間にデートする機会はふんだんにあっといえる。キョーコのアルバイト先に送ったり、大学の帰りに待ち合わせをしてみたりと、蓮が出会いがないなんて言っていたのが嘘のように、暇をもてあますくらい自由な時間があったのだ。

それまではキョーコに合わせた清い交際で…でも、それなりに大人な二人。そろそろいい頃だ。

「旅行ですか?嬉しい!どうしましょう?どこに行きましょう?」

頬を赤らめながら、でも否定はしないキョーコが本当に可愛いと思う蓮だった。

「パンフレットをどこかで手に入れて、うちに来る?一緒に見ようか。」
「あ、それ、いいですね。」

初めて誘った自宅。それまでは、自分の箍が外れそうだから外で会うことにしていたが、そろそろ二人きりになりたかった。
二人で旅行会社をいくつか回って、パンフレットを貰い、その足で蓮のアパートにキョーコを連れてきた。

ところが、ドアを開けたとたんにキョーコは固まった。

鍵を開けたアパートの玄関には、リボンつきのパンプス…。
それを見て、蓮は無言のまま片手で顔を覆った。

「あの…お客様ですか?じゃあ私は今日は失礼して…」

合鍵で入るお客様がいるものか…。
分かりきったような反応に、蓮の頭に何度も邪魔された経験が頭をよぎる。

「今来るか…」

そうボソッと蓮は呟くと、キョーコにそのまま待っているように告げた。

「マリア!マリア!」

今度こそ、邪魔されたくないと強く思う。
何度も邪魔された恋愛模様、今回ばかりは…彼女だけは…勘弁して欲しい。

玄関先で、所在無くぽつんと立ち尽くしたキョーコは、奥で聞こえる声にちょっとだけ関心を払いながら、どんな顔をしていいのか分からずにいた。

「全く…もう、最上さん、待たせてごめん。紹介するよ。これ、妹のマリア。年が離れているせいか、甘えん坊で困る。」

説明しながら蓮が連れてきた女の子が、いきなり叫んだ。

「お姉さま!??」
「マッ…マリアちゃん!!?」

二人の声に、蓮はあっけに取られた。





そう、彼女の名前は宝田マリア。母が再婚した結果、成人した蓮は父の旧姓を選び、マリアは新しい父の姓を名乗っていたが、正真正銘、蓮の妹である。多少、ブラコンが強すぎるのが玉に瑕だった。

「二人が顔見知りだなんて…そういえば学部が一緒だって気がつけばよかった。」
「あら、お兄さま、お姉さまとは学部つながりと言うより、サークルつながりですわよ?」
「サークル…黒魔術何とか…とか言う?」
「「不思議サークルです(わ!)!」」

あら、失礼…とマリアが制した。

「お姉さま、思いを寄せていらした消防士って…お兄さまの事でしたの。マリア、ビックリいたしました。」
「マリアちゃん、恥ずかしいから!」
「呪ってやりたい男って…お兄さまったら罪作りですわね。何年お姉さまの心に火をつけっぱなしでしたの!?それで、ほったらかしにしておくなんて、全く、紳士の風上にも置けませんことよ!呆れてものが言えませんわ!!」
「そう言って、お前は今回も邪魔しようとしたじゃないか。」
「あら、そうですわね。でも、お姉さまでしたら話は別ですわ。お姉さま、お兄さまはモテモテですわよ?ですから、私が目を光らせておりましたのよ。最もここ2年ほどは結構大人しくしていますけれどね?あら?お姉さまと出会った頃と時期がかぶりますわね…」

ニヤリ…とマリアが蓮を見上げると、蓮はバツが悪そうな顔をして、そっぽを向いた。

「先ほども申し上げましたけど、お姉さまなら良いわ。寧ろ大歓迎でございます!お兄さま、浮気なさったら許しません事よ?」
「する訳ないだろう!?」
「あら!殿方は分かりません事よ?けれど…女性も同じね。私の邪魔ごときでお兄様を見限る女性でしたらこちらからお断りですわ。」
「マ…マリアちゃん?」
「マリア…」

マリアはやれやれと言ったように、二人の顔を見た。

「お兄さまのお顔だけ目当てで近寄ってくる女がわんさか居りましたもの。マリアはそうじゃなくて、お兄さまの本体を愛してくださる方なら喜んで受け入れますの。」
「でも…マリアちゃん、私だってもしかしたら、外見だけに見とれてた時期もあったかも…」
「そうなの!?」
「え…や…そうじゃないですけど…」
「何だ…、ドキッとした。」

「(おほん!)いちゃいちゃは、マリアがいなくなってからしてくださいませ!少しは悔しいですから!」

マリアにそういわれて二人は赤面した。

「外見だけの憧れかもしれませんけど、それを3年近く灯し続けたお姉さまですもの。それだけで尊敬に値しますわ。お兄さま!精一杯、鎮火しないようになさいませ!」

「了解、分かってるよ。」

「そうでございますわね。お兄様もきっとくすぶってた物をずっとお持ちだったんでしょうから。」
「そう…なんですか?」
「う…いや、…はい。まあそうです。」

これまたバツが悪そうに蓮が言う。

「嬉しいです。」

キョーコが嬉しそうに微笑むさまに、蓮もマリアも頬を染めた。

「はいはい、邪魔者は退散いたします。では、ごきげんよう。」

至極ご機嫌よく退散して行ったマリア。
マリアのいなくなった空間に妙に気まずい沈黙が流れた。
チラリ…とお互いの様子を伺う。

二人の心の内にずっと灯っていた小さな火。
いつか知らぬ間に消えてしまってもおかしくなかったその小さな火を守り続けた二人。
小さなランタンから取り出した今、それがだんだんと大きくなって、身を焦がすような炎になりつつあるのを感じる。

どれほど大きな炎になるのか…

もう、その炎は消火不能だ。





(終わり)




私が中学生の時の憧れの君は、11歳年上の消防士さん。我ながら渋い趣味だったよ。
その方は腕の筋肉が凄くて、凄く足の速いお方でした。
あの制服(訓練服)の下に隠されたそのほかの筋肉が…じゅる。筋肉フェチだと気が付いたのがこの頃でした。
以来、消防署の前を通るたび、チラッと見てしまう私…。(´∀`*;)ゞ(←ビョーキだね)

消防士蓮さんとキョコさんの次の妄想は、皆様にお任せいたします。
…とか言いながら、一つだけおまけ話をUPする予定にございます。
お付き合いくださり、ありがとうございました。((^∀^*))//♪

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コメント

安定の、パラレル連載。完走さすがです!

そして、おーもーしーろーかったー(* ̄∇ ̄*)
つかず離れずふわふわソワソワとした二人の、出会いも変化していく心情も、順を追っていくと、7話と8話の両想い成立~成り立てな二人が、可愛くて楽しくて仕方ありませんです。
本誌の蓮さんと本質的に違うのが、キャラがライトというか、キョーコちゃんへの気持ちが明るいというか。「重くて暗くて粘ついてない」ところが、また新鮮でした(’-’*)♪

消防士さんて筋肉すごいんですか?知らなかった!!!かばぷー様は、アンテナ色々張っててすごいですね(*≧∀≦*)
  • 2017-02-01│20:48 |
  • ぽてとたべたい&ぽてとあげたい URL│
  • [edit]
Re: タイトルなし
>ぽてとたべたい&ぽてとあげたい 様

コメントありがとうございます!!
面白かったですか?よかったです~~~(*≧∀≦*)今までと傾向が違うのでホッとしました。
消防士さんの制服萌えで書きたかったのですが、ちょっとさらりとライトな蓮さんになりました。
でも、片思い何年も…って、独占欲をむき出しにしないまでもやっぱり何気にねちこいんですよね!

そして筋肉…結構ある方が多いです。だって、ロープをするする腕だけで登るんですよ!?腕とかムキムキ!
実はバレー仲間の旦那が消防士さんでして、そいつは私の後輩でもう40歳過ぎてはいるのですが、背中の筋肉とかも立派なんです。逞しい三角の背中!!
思わずさわっていい?って聞いちゃった。(笑って“いいっすよ!”って。因みに嫁も“こんなんで良ければどうぞ~”って)
変態か!って自分で突っ込みたくなりますけどね。

お付き合いありがとうございました!
  • 2017-02-01│21:17 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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