そこは…どこ?

カツン…カツン…

コンクリートの階段を上っている俺。

どこに行こうとしているのだろう?

あぁ、そうか。

最上さんのところに行こうと思っていたかな。

それにしても、こんなに階段を上ったかな。何階だった?

ふと気付くと、歩道に出た。

階段…上った気がするけど、歩道?

しかも幅の広い歩道の半分は側溝の水が溢れたみたいに、川のようになって流れている。

ふと眩しい方向に目をやると、側溝の向こうには花咲く陽だまりの丘。
何組かのカップル、老若男女が楽しそうに遊んでいる。新緑の草に咲く色とりどりの花。みんなにこやかな表情だ。
凄く気持ちよさそうな雰囲気が漂い、そっちに行ってみたい気がするけど、わざわざ靴を濡らしてまで行くべきだろうか。一跨ぎも難しそうだ。ちょっと躊躇う。

辺りを見渡せば、歩道は左手に緩やかに下っている。その延長上には、向こうの丘に行くための、川を跨ぐ小さな橋が架かっている。
この歩道の水は、また、川になるらしい。

流れが急に速くなってきた。

前方の橋の手前にレトロな茶屋が見える。
軒先にはベンチがあり、時代劇のセットみたいだ。団子の暖簾がヒラヒラとしている。

あぁ、ここにも階段があったのか。

正面にある茶屋の右手には、小さな赤い橋。橋を渡ると眩しく見える緑の丘。
左手には、緩やかな坂道が下に向かって伸びている。坂の両側には、縁日のように赤いのぼり旗がいくつも並んでいて、真ん中には階段もついている。

坂道の下は雲…?霧かな…。凄く長い坂道のようだね。全くその先が見えないや。桜の花びらが、はらはら舞い散る中、桜の木に提灯もぶら下がり、祭があるみたいだ。
どこか懐かしいような気がするけど、初めて見た景色のような気もする。

何となく疲れたかな?ちょっとだけ休憩してみたい。

俺は茶屋の中に足を踏み入れた。

「すみません、誰かいませんか?」

返答はない。

薄暗い店に客はいない。でも、火鉢にはヤカンがシュンシュンと沸いていて、不思議な感じ。店の人が戻るまで小綺麗にしてある椅子に座って待つことにした。

何で俺はここにいるんだったかな…。

何を待っているんだったかな…。


次の瞬間、茶屋の暖簾をくぐり、慌てて声を掛ける人影に衝撃を受けた。


「久遠‼︎ お前なぜここに来た⁈ ここはお前の来るところじゃない‼︎ 早く帰れ‼︎」

「…! リ…リック? 」

「ここはダメだ。直ぐにここから出るんだ。」



リックに促され、茶屋を出た。

「いいか、久遠。この坂を下っていくんだ。直ぐに帰れ。」

「リック?急に帰れだなんて。」

「お前は、まだここに来てはいけないんだ。だから帰れ。絶対に振り向くなよ。久遠…。絶対にだ。」

「リックに言いたい事があったんだ。」

「ああ、分かってる。でも、それは今じゃない。久遠、帰るんだ。さあ、行って‼︎」

リックに背中を押され、促されるままに、俺は坂道を下った。
振り向かず、ただ真っ直ぐに…。

(いいか?振り向くなよ。久遠。大丈夫だから…)

リックの見送る視線を背後に感じながら
霧の中に足を踏み入れた。










「…が…ん。」

「…る…さん!」


「…敦賀さん‼︎」





ふと目を開けると、愛しい最上さんの顔が一番に視界に入る。

「やあ、最上さん。どうしたの…?」

見渡せば、社さんも社長も一緒にいる。

「皆さん、お揃いで…どうかしましたか?」



『…よ…良かったあ〜〜…』


一同が安堵した声を出した。

どうも俺はロケ現場で雪崩れてきた角材から、最上さんを庇って倒れ、意識を失っていたらしい。

脳波に異常なし、でも目を覚まさない俺を随分と心配したようだ。

打ち身もさほどなくて、直ぐに退院してマンションに帰った。



俺が見た景色は、何だったのだろう。

あれは、どこだったのだろう。



久しぶりにリックに叱られた。

叱られることさえ懐かしい。

いつまでも心配掛けてるな。

でも…不思議と心の中がスッキリしている。



リックは俺に分かってると言った。

きっと、そう。分かってる。

君がいる世界には、まだ近づかない。

いつか、君と再び出会うその日まで、
君の世界で、待っていてくれ。


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コメント

不思議なお話も好きですたい
途中で、このお話の意図するところに「あ!」と気付いたら、全身にすごい鳥肌が(*_*)
でも、色んな意味で大好きなお話です(*´-`)
映像化したら綺麗そう(*´ω`*)
  • 2016-08-03│22:31 |
  • ぽてとたべたい&ぽてとあげたい URL│
  • [edit]
Re: 不思議なお話も好きですたい
> 途中で、このお話の意図するところに「あ!」と気付いたら、全身にすごい鳥肌が(*_*)

気付いてくださいました?
これね~・・・実はかばぷーが見た夢の再現なんです。

友人のマンションになぜか階段を使って上がる夢を見て、気が付いたら水が流れるインターロッキングの歩道。
本当に向こうに丘があって、赤い橋と茶屋が見えて、くだりの階段つき坂道や、ぼんぼり、のぼりが見えて…
茶屋の中で待つ私に「けなとこ(こんな所)で、何しちょうてぇ?けなとこ来ちょったらいかんけ、早や帰りぃ。」
と言いに来たのは、母方の祖父(故人)でした・・・。
朝起きて、あまりに記憶がはっきりしていたので、母に「久しぶりに、じいさんが夢に出て来た~」って暴露。
まあ、単純に疲れてたのかね~って終わりましたけど・・・。

よく考えると、怖い・・・かな?
どこだったんでしょうね?
  • 2016-08-04│19:54 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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