不吉な夢 4

大魔王降臨…辛抱が足りません






不吉な夢 4 ~Ominous dream~




「社さん…最上さんのスケジュール、ご存知ではないですか?」
「(ギクッ…)…ああ、ちょっと最近ロケで忙しいみたい」

「何ですか、その反応…………もしかして、何か隠してます?」
「(ギクギクッ…)…いや?どうした?」

社が何気に知らぬ振りをして聞き返すと、蓮は大きな溜め息を吐いた。

「…先日見た夢以降…彼女と会えてないんです。連絡しても一向に返事が返ってこない」

(うわっ…これ、相当キテル!不味い…)

「おまけに、あれから毎晩と言っていいほど、不吉な夢にうなされるんです…」

「ふ~ん…それは困ったな…」
「………………やっぱり何か隠してますね?いつもの社さんなら、弱っている俺を弄くり倒すじゃないですか」

(ぐはっ…不味い!)

「…………何を隠してるんです…?」

ゆらり…と暗い姿を匂わす気配に、社は慄いた。

「………すっ…すまん!新しいドラマの話を黙ってた!」
「新しい…ドラマ?それ位は…」

言いかけて蓮は気が付いた。

「まさか…恋愛物?」

社は縦に首を振ることすら出来ない。
彼の担当俳優は、今回ばかりはうそ臭い笑顔さえ浮かべる事ができずに告げたのだ。





「見学すること…当然、出来ますよね?」

(ひぃぃぃぃぃぃ~~~っ!!)






何とかちょっとした口実をつけてドラマのロケ先に行く事になったのだが…そこで目にした光景に蓮は呆然とした。

照れくさそうに…嬉しそうに…共演男優と談笑するキョーコの姿

それは、付き合い始めた頃の二ヶ月は頻繁に見かけたキョーコの可愛らしい姿と重なる。好きだと言うと照れくさそうに頬を染めたキョーコは、無性に可愛らしくて煽られて…できるだけ欲望を表に出さないように必死で蓋をした。

その笑顔は自分に与えられてきた笑顔と重なり、蓮の心は乱される。
男優の方もまんざらではないらしく、笑うキョーコの肩に触れ、それを許すキョーコ…

(…まさか…、その男が好きなのか?)

「………っ!」

今までの敦賀蓮であったならば、真っ黒いオーラを若干滲ませて、けれどあくまで紳士然として真っ直ぐにキョーコの元に向かったであろう。…けれど、それは出来なかった。
ここのところ、蓮を悩ませていた夢が不意に脳裏に浮かんだから。

蓮は拳を握り締め、くるりと踵を返すと、スタジオを黙って後にした。

そしてまさに運悪く、その後姿をキョーコはアンテナ察知とともに見ていたのである。

今までのように、独占欲むき出しのままでこちらに歩いてくる敦賀蓮の姿ではなく、全く意に介さないように歩いていく蓮の後姿を…



カツ、カツ、カツ、カツ

「れっ…蓮!折角ここまで来たのに、キョーコちゃんに会っていかないのか!?」

「…………行きません…」
「何で!?キョーコちゃんに会うために来たんだろう?」

ピタッ…

「………で?嫉妬に怒り狂って、激流のごとくあの娘に怒りをぶつける様を見たいとでも…?」

「………!!(ひえぇぇ~~~こっちも捻れた~~~)」

久々に見る闇のお国の蓮さんは、本当に…恐ろしかった。





「ひっく…ぐすん…」

「……………(あ~~、うっとおしいわね)」

「モ゛ッ…………モ゛ー子さぁん…」

「………何?…あの人なら、独占欲むき出して怒りをぶつけてくる筈だったのに?」

「もう…らめぇ…絶対、嫌われた…」

「…………(違うってば…社さん曰く、嫉妬に怒り狂って撮影を滅茶苦茶にしそうだったから、必死で逃げたんだって……)」

奏江は何度目かの大きな溜め息をついた。

「もう、それなら敦賀さんにアンタから別れを切り出したらいいじゃない。そのほうがすっきりするんでしょ?」

「…………ッ…ゴフッ……」(←見た夢を反芻して、吐血中)

大きな目に涙を溜めて、だうだうと洪水のように流れ落ちる涙。

「社さんから連絡があって、今、事務所に向かっているところだそうよ?」

ビクッとキョーコは身をすくめた。

「ふえっ…やだ…敦賀セラピーして欲しいなんて我儘、もう言わない…、甘えない…から…。でも、別れるのは…後輩でさえなくなるのは……」




「……誰が別れると?」

いきなり入り口から聞こえたのは、世にも恐ろしい美声の低音ヴォイス…
キョーコのみならず、その後ろにいた社も、キョーコの隣に座っていた奏江でさえもその身を震わせた。

「………一体誰が、キョーコと別れるって?…それは今共演中のあの男の話?」

それはそれは恐ろしい大魔王が凄い形相で立っていた。



「それとも…俺と別れたいってこと?」

「ち…ちがっ…」
「ねえ…何が違うの?君はあの男が好き?そんなのは認められないけど?」

がたん!!と椅子が倒れ、恐怖に顔を強張らせたキョーコがじりじりと後退する。

「………俺が怖い…?そうかもしれないね。俺も怖いよ…」
「…………敦賀さん…が、怖…い?」

「そう…もし、あの男と付き合いたいから別れる…なんて言われたら、君を閉じ込めてしまおうかと思うほどにね…」

「言う訳ないッ…です」
「言う訳ない…?本当に?」
「本当です!それより、つ…敦賀さんのほうこそ、私のことが嫌いなら…飽きたなら…はっきり言って…うううぅっ…」

トン…とキョーコの背が壁についた。
だが、なおも蓮の大きな体はじわじわとキョーコを追い詰める。

「誰が、誰の事を嫌いって…?」
「だって、敦賀さんが私にだ…駄目息…。それと、腕組みして早く帰って欲しそうに…うううっ…」
「何で、それが飽きた事になるの?」
「だって…、私のこと嫌いだから、食事の時間も短時間でッ…一緒にいたくないって…」



「一緒にいたくない訳ないだろう!!!」

「蓮っ!!」

ダンッ!と言う、音とともに、キョーコの顔のすぐ横に蓮の腕が伸びた。


「社さん、琴南さん…すみませんが二人だけにしていただけますか?」

「無理言うな!そんな状態で二人っきりで残せるか!?」

「……お願いします」

切羽詰ったような状況で二人きりにはしたくない。けれど…二人には二人きりの時間が必要なのかもしれない。
社は大きく息を吐いた。

「…ああ、分かったけど、いいか?無茶はするな。」

怒りのオーラをこれほど撒き散らす蓮を奏江は見たことがなかった。
これがキョーコのいう大魔王…恐ろしいと思いながらも、奏江は気丈に告げた。

「わかりました…敦賀さん、とりあえず出ます。その娘…大事に扱ってください?それ以上泣かすと、許しませんから」





(続く)



わはははは…非常にベタな展開です。
怒らないでくださいませ~~(;д;)

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コメント

やっと

双方の不安を互いに聞かせることができましたね〜。

まあ、キョコさんは悲しみと不安で怯え、蓮さんは怯えと嫉妬から怒り狂い...ですけど。

でも、余裕がない二人だからこそ、口にできることもあるかも?

続きも楽しみにしてます。

こんにちは。
きたきたきたーーーー(((^^;)💦大魔王が通りますよー。
さすがにキョーコちゃん卑屈にも程がありますよぉ。へた蓮でもあるけど、さすがにこれは可哀想だよね。
天然ピュアにもねぇ。少し勉強しないと…
蓮さんファイトー!魔王蓮さん大好物です(^^)

Re: やっと

> まじーんさま

お互い進展しない原因はそれなりに違うんですけど、すれ違う時はこんなもんかなって…
でも、切羽詰ったらどたばたでもきっと暴露せずには居れないでしょうね。

あと一話です。どうぞよろしくお願いします。

Re: タイトルなし

> じゅんこさま

うううっ・・・一度だけ、壁ドンをやってみたかったのです。
お互い勘違いしまくり~の、誤解しまくり~の、遠慮しまくり~なんです。
そんな事じゃ歩み寄りなんて出来ませんからね!

大魔王でも何でも!キョコさんをモノに出来るなら、是非とも蓮様に頑張って欲しいものです(←これ、願望!!)
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