Let's make a Body 2

「モー子さん…私、何か不味い事をした?」
「何?何かした?」
「や…さっきから凄く視線を感じるんだけど…」
「ああ、そうね。さっきから見てる人がいるわね」

カウンターにスタジオの鍵を返しに来た時、丁度やって来た蓮の姿が見えた。
キョーコの姿はといえば…ハーフタンクとセミロングのスパッツ…
前回はその姿を諌められたと言うのに、今回も目撃されたのはなんと言う間の悪さだ。

しかも、前回と同じく頭のてっぺんがチリチリするような刺激つき…

キョーコは己の運の悪さを改めて自覚した瞬間だった。


Let’s make a Body 2




「最上さん…」

(ひいぃっ…!!)

ぞわりと何かが駆け上がる瞬間に見えたのは、とてもうそ臭いキラキラを纏った笑顔。

「君…その格好が好きみたいだけど、もしかして露出が好きなの?」
「ち…違います!!すっ…すぐに着替えます!!」
「そうしてもらえる?」
「はいぃぃぃ!!」

キョーコが急いでロッカールームに消えたあと、蓮はふうっ…と溜め息をついて、受付に立った。

「こんにちは、敦賀さん。お怒りのご様子ですが、私どもの服装がお気に召しませんでしたか?」
「やあ、琴南さんこんにちは。気に入らない…というか、あまりに無防備すぎて目のやり場に困る…」
「それは大変失礼いたしました。お気遣いありがとうございます。今日はマシンですか?」
「ええ、お願いします。」
「こちら、ロッカーキーです。どうぞごゆっくり」
「ありがとう」

奏江からロッカーの鍵を受け取ると、蓮はロッカールームに向かった。

(気にいらない…訳じゃないけど、誰に彼にでも見せていいものじゃないだろう)

更衣を済ませ、苛立ちを沈めるようにバイクで黙々と漕いでいる間、いつか見たキョーコの姿を思い出した。


あれは…1年ほど前の事だったか…
仕事が忙しくていつもより遅くなってからジムを利用した帰り、路地裏で男女が言い争う声を聞いた。
男のほうは聞き覚えがある声で、思わず意識を向けてしまった。

そこにいたのは取引先の営業、不破松太郎で
そして女の方は、さっきまでジムにいたインストラクター、最上キョーコ

修羅場を覗く趣味はなかったけれど、キョーコに浴びせられる不破の自分勝手な言葉の数々に不快感を覚えつつ、なぜかその場を離れる事ができなかった。

『お前みたいな色気もねーつまんねー女、俺には釣りあわねーんだよ!!!』

捨て台詞を吐いてその場から勢い良く飛び出した不破の背中
通りの先に待っていたのは、派手な車と派手な女

残された彼女の事が気になって、ふと視線を向けて後悔した。

虚ろな目で静かに涙を流す彼女…

泣き声を立てることさえせず、その場にしゃがみこんだ小さな肩を抱きしめたくなった。

勿論、キョーコはそんな事など知る由もない。

翌日、ジムに来るといつもどおりに笑顔で過ごしている彼女にホッとしながら、でも、声をかけられずにいる自分のもどかしさに気がついて今に至る。

(ああ、もう…泣き顔にやられるなんて、俺もヤキが回ったな…)

ふと目を開ければ、視界に入るのはスパッツの上にハーフパンツをはいて、大き目のスタッフウェアを身に付けたキョーコの姿があった。

(スタイルがいいのは分かってるんだから、あんまり無防備に晒すもんじゃないだろう?あまりに危機感がないから、ほいほい声をかけられるんだ。)

今だって、同じようにサラリーマンに声をかけられて、にこやかに談笑している。
胸の辺りにもやもやとしたものが渦巻くが、それはこちらが勝手に抱いている感情なので、うかうかと表に出すわけにもいかない。

最上キョーコと言う女性にふとしたことから勝手に思いを寄せ、勝手に嫉妬して…彼女に声をかけるのも憚られるし、おそらく名前だけしか知ってもらっていないだろう。自分だって人のことは言えないくらいに手前勝手な客の一人に違いないと、自分自身に呆れる。

声をかけるつもりが…ないわけじゃない。
けれど、ほいほい声をかける軽い人間だと思われるのも癪だ。

(全く…人の気も知らないで)

蓮はその日、黙々とバイクをこぎ続けた。






(やっぱり俺らしくないよな。何時間バイクこいでるんだよ…)

バイクを降りた蓮は、フロアにキョーコがいないのを確認して、帰り支度を始めた。
シャワーを浴び、替えの服に身を包む。

ロッカーキーを返却し、いつものように駅に向かう路地で、また聞き覚えある声に遭遇した。

(……まさか…!?)

デジャブ感が半端なく、立ち止まってその声に耳を傾けた。

「……!!」
「………?……よ!」

「うっせぇな!さっさとしろよ!」
「アンタに貸すお金なんかないに決まってるでしょ!!」

そんな声が聞こえて、瞬時に状況を理解した。

「おまっ…俺に向かってなんて口聞きやがる!!」
「きゃっ…やめっ…!!「最上さん?」…!!」

思わず、路地に向かって声をかけたとき、彼女を掴みかけた男の腕がパッと離れた。

「どこにも居ないから探したよ。あれ…?もしかして…不破君?どうしたの?こんなところで、最上さんと知り合い?」
「つっ…敦賀さん!」
「敦賀主任!?何でここに…」
「こんな所で会うなんて凄い偶然だね。これから最上さんと食事にいく約束してたから、彼女を捜してたんだけど…こんなところにいるなんて思わなかった。二人とも何してたの?」
「………」

そう、こんな場面を取引先の俺に見られて、普通は答えられるはずはないんだ。

「さ、最上さん、おいで?」

彼女に差し出された俺の手を見て、彼女は一瞬の躊躇いを見せたが、真っ直ぐに俺の近くにやって来た。

そう、それで良い

“約束なんてしてましたっけ?”なんて言われたらひとたまりもない。
内心ひやひやしながら、彼女が意図を理解してくれたようでホッとする。

「じゃあ、不破君…これで俺たちは失礼するよ」

さり気に彼女の腰を攫い、その場を後にした。




(続く)
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ちりりの意味

こんばんは。更新があると嬉しいです。

キョーコのつむじ、チリリの原因…。そっかぁ、蓮は1年も前からキョーコを気にかけていたのですね‼

急接近の二人、次回を楽しみにしてます‼

Re: ちりりの意味

> harunatsu7711 さま

コメントありがとうございます。
そうなんですよ。前から気になっていたという設定です。
キョコさんには心当たりがない…というあたりが、罪なんですけどねぇ~
ホント、無自覚な彼女です。
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