避雷針

これはね、○学旅行中に思いついたネタなのです。
しおりにメモメモしておいたものを書き上げてみました。
(↑バス移動中なのに、何やってんの!?)

奏江目線なのです。






避雷針




「京子さん、あのホテルのてっぺん…金色の先端見て。あれ、何をモチーフにしてるか知ってる?」

移動中のロケバスの中で、古賀さんが不意にキョーコに問いかけた。

「え…?うっわあぁぁぁ~~!!ティンカーベル?!はうううっ、綺麗!」

そう、古賀さんは最近あからさまにキョーコの琴線に触れるものをリサーチして積極的にアプローチに使用している。それもこれも、あのヘタレ俳優への牽制なんだろうけれど…

首都高速から見える、夢の国の玄関口に建つ一際大きなホテル。一見煌びやかに見える外観は、一昔前のホニャララなホテルと間違えそうだが、なかなかどうして…決して一人で泊まることはない一泊のお値段は地方都市の家賃かと思えるほどだ。

そして、その夢の国の煌びやかなホテルは当然キョーコのメルヘンチックな世界観にドンピシャリな訳で、当然目がキラキラと輝くのを、行きのバスの中で古賀さんが見逃す筈はなかった。

(そりゃ当然好きそうよね、お姫様とか、妖精とか…)

「あのティンカーベルはステッキを持ってるだろう?」
「はい、天に向かって何か呪文を唱えているのでしょうか?」
「ああ!なるほど、確かにそんな風にも見えるね。でも実はあれ、何かを受け取るものなんだ」
「何か?何かと言いますと?」
「当ててみて?」

そんなクイズ形式でキョーコとの会話を長く楽しもうだなんて、流石抱かれたい男No.2よね。尤も一位の方は無自覚な天然タラシだとは聞いていますけど、あの先輩がこんな風に女性に積極的にアプローチする場面なんて、実は今までキョーコ以外にしている場面は見た事がないし、薔薇の件といいかなりの爆弾投下していると思うのに、キョーコは全く気付きもしない。

「う~ん、何か…何か…神のご加護とか?」
「ぷははははっ!京子さん、面白いね」
「違うんですか?」
「違うんだよ。あれはね…」

「ぬおっ…!」
ブブブブブ・ブブブブブブ…

出た、振動への過剰反応
いい加減、その動きはやめなさいよね。女優の端くれなんだから。

「電話?」
「すっ…すみません」
「いいよ、出たら?」
「しっ…失礼します」

着信の主を確認した途端、微妙な表情を浮かべるキョーコ。
ははぁ…さては、あの人…ね。
一体何のセンサーがついているのかしら?タイミング良過ぎでしょ。

「出ないの?どちら様?」
「いえ…あの…」

「もしかして…敦賀君…だったりして?」
「…………」

あら、鋭い事。なかなかどうして、古賀さんもやっぱり経験豊富な方なのね。
それとも何か察知してる…とか?

ブブブ…ブ。

「うあっ…切れてしまいました!」
「かけ直したら?」
「いえ、私ごときがかけ直すなど、失礼極まりなくてできません。それに…(ブブッ!)」

ほら、すぐに出ないからメールが来ちゃったじゃないの。
キョーコのいう大魔王降臨じゃないの?事実、文面を見た途端、青くなって…白くなって…赤くなって…
まあ、そうよね。一応、顔に出さないように無表情を装っているけど、やっぱりキョーコの顔に誰からのメールか書いてあるの。だから古賀さんもやれやれって顔をしてる。


「終わった?」
「…はい、すみませんでした」
「で、話を戻すよ?あのティンカーベルなんだけど」
「はい、何を受け取るんでしょうか?」


「…雷」

「…………はい?」
「実はあれ、避雷針だそうだよ。あの先端で雷を一身に受けている。凄いよねティンカーベルって」

「……………避雷針…ですか…。」


そう、実は私も知っていた。
あれは避雷針。
ファンシーな見せ掛けとは違って、あれは雷を一身に受けるもの。

アンタってば、何てがっかりした顔してるのよ…雷を受けて平気なのよ?まるであの怖い先輩の怒りの矛先を一身に受けるキョーコと一緒じゃないの。寧ろ喜んだら?
そりゃまあ、怒りといっても独占欲丸出しな嫉妬の塊と俗には言うけれど。

「あんたもまさに避雷針よね」

静観するつもりが、うっかりと声に出してしまった。
だって、そんながっかりしなくてもいいと思うのよね。実際そうだけど、ある意味光栄といえるんじゃないの?

「は!?………………まっ…まさか!!いやぁ~やめて、モー子さん!」


私たちの会話が何を意図しているかなんて古賀さんには分からなくてもいいけれど、芸能人らしくない顔をして、キョーコは己とティンカーベルを重ねているのかもしれない。

激しく動揺しているキョーコが受けているのは、実は雷のような怒りだけではないらしいことは最近ちょっと判明している。


“最上キョーコは、敦賀蓮の避雷針”


そう、絶対に断言できる。キョーコはあの人の避雷針。
他の誰にも平等であったはずのあの人の歓心と関心を、芸能界一のイイ男の感情すべて…すなわち愛さえも、一身に受けているのは他でもないこの娘に違いないのだから。





(終わり)


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