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嫌いじゃないやつ

コミックスでときめいた可愛らしい彼の日常…
こんなだったらいいなあ。って妄想です。








嫌いじゃないやつ





ある日、たまたま仕事が夕方からキャンセルになった。
そんな事は滅多にないことであるが、ぽっかり空いたその時間を俺は持て余していた。

「仕方ないさ、今日は休養日だ。たまにはいいだろ?」

そういう社さんはその日キャンセルになった仕事の埋め合わせをするべく打ち合わせがあるという。申し訳ない気持ちで一杯になりながら事務所に送り届け、俺は大人しく自宅に帰った。

(どうしてるかな…)

こんな時思い出すのはいつもあの娘の事
忙しくしていてもふと脳裏に浮かぶのに、暇な時間であるなら尚更だ。
ふっと表情が緩むのが自分でも分かった。

もうどうしようもないなと自分で呆れながら、この時間にできることを考えた。

(さて、溜まっている洗濯物を片付けてしまおう…)

今日はハウスクリーニングが入る日で部屋はすっきりと片付いていた。
ドライルームに干してあった何枚かのシャツを籠に入れ、リビングにアイロンを出した。

この家事は嫌いじゃない

掃除と炊事はどちらかというと苦手な方だ。特に炊事は…元来食欲が無いのに食べる楽しみが見出せない。…尤も、最近ではそれを口実に彼女に来てもらう楽しみがあるのだが…
けれど、洗濯はなぜか抵抗が無く、特にアイロンかけはどちらかと言うと好きな方だ。

前立て、襟、袖と順にアイロンを滑らせる。
一枚をかけ終わったところで、チャイムが鳴った。

(誰だろう…)

社さんはまだ事務所にいるはずで、そうなると自分の中で一気に期待感が弾む。

「はい」
「こんばんは、最上です。えっと~あの~~…今日はもう自宅にお帰りだと社さんから伺ったのですが…」

予想通りの展開に、インターフォンの画面に口元が緩む。けれど、これから貼り付けるのは先輩俳優、敦賀蓮の顔。
嬉しさのあまり相好を崩した姿なんて彼女に見せられるはずも無い。

「やあ、こんばんは、最上さん。今開けるよ。」

つとめて紳士的に玄関扉を開けると、大きな買い物袋を提げた彼女はペコリと頭を下げた。

「こんばんは!突然伺いまして申し訳ありません!」
「言ってくれたら下まで迎えに行ったのに。重かっただろう?」
「そんな!敦賀さんに下まで降りていただくなんて、滅相も無い!お食事はまだですよね?早速準備を…って…ん?この匂いは…」

彼女は玄関先に入った途端、鼻をヒクヒクさせた。

「あ!やっぱりアイロンの匂いでしたか!…って、え?」
「当たり。さっきアイロンかけてたけど…「え?」って何?」
「え…だって、敦賀さんがアイロンかけるんですか?」
「そうだけど、どうかした?」

最上さんは、凄く不思議そうに首をかしげた。

「すみません…。凄く意外でビックリしました。だって敦賀さんの衣類は全部クリーニングかと…」
「そんな訳ないよ。洗濯だけはたまにするよ?」
「なさるんですね…?信用できませんけど。」

何故そうまでに不思議そうな顔をするかな?

「アイロン、凄くきれいですね。意外と上手です。」

なんでも器用にこなす彼女にそう褒められると、まんざらでもなくて嬉しくなったけれど、俺が全く家事能力が無いと思われているのは心外だ。

「そう?君にそう言ってもらえるなんて嬉しいけど…意外と言われるとは思わなかったな。」
「いやいやいや…あわわわわ…すっ…すみません!」
「くす…冗談だよ」

彼女をからかうと、ホッとしたように頬を緩ませた。
その顔は、そろそろ…危険だよ?

「あ!どうぞ敦賀さんは続けてください。私はキッチンをお借りしてもよろしいですか?」
「うん、自由に使って?もう君の専用みたいなものだし」



「………」

…うん?何かな、その微妙な顔。

「それって…私のこと都合のいい家政婦だと仰っています?」

さり気なく意図が伝わるかと思ったけど、やはりまだ無理らしい。

「そんな訳ないだろう。一番うちのキッチンの事を知っているのは俺じゃなくて最上さんだよって言ってるだけだよ。他の誰にも触らせる気もないしね。」

「つっ…敦賀さん、そういう誤解を招くような発言は控えて下さい!」

そこまでいうと彼女は慌ててキッチンに駆け込んだ。
キッチンの奥でぶつぶつ呟いている声が小さく聞こえるが、どうせまた、タラシだコマシだとか、極悪人だとか言ってるんだろう。
全部、本当のことなのにな。

彼女がキッチンでくるくる動き回る音を聞きながら、またアイロンを滑らせる。
決して一人では味わう事のできない状況に、気分が上がる。

(うん…こういうのも悪くない)

さて、元々嫌いじゃないこれをゆっくり片付けようか。

(今日はこんなに楽しく出来るなんて、思いもしなかったな…)

いつかはこれを日常に出来たらいい
まだ当分は無理そうだけれど、彼女がキッチンに立ちながら、俺はアイロンをかける。そのうち彼女のぶんまでかけたりして…

俺は鼻歌交じりに、嫌いじゃないやつを上機嫌で終えた。





(おしまい)





うふ、ちょっと可愛くない?

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Comment

こんばんは(^^)お久しぶりのコメントになります。
昨日までの連載、ハッピーエンドじゃないとゆー事でなかなか読む勇気がありませんでした💦
また心の余裕が出てきましたら読ませてもらいますね。

今回のお話はほのぼのいいなぁ❤️って感じでほっこりしました(^^)
二人とも心が温かくなって嬉しいんだろーなぁと思うとじれったいけれど、付き合うまでの駆け引きって楽しいなぁとウキウキしてみました。
また色んなお話楽しみにしてますね(^3^)/
ありがとうございました❤️
Re: タイトルなし
> じゅんこさま

我慢させちゃって申し訳ございませんでした~~。(土下座De号泣な上の平謝りです)
一応、最後の方は「ああ…こんな世界観なんだ…」と私らしい(?)仕上がりにはなっておりますが、如何せん昭和の悲恋モノ!!それはそれは、えげつなく、いつの時代の昼ドラじゃ!?と突っ込みたくなる不幸っぷり。
また、気力・体力のございます時にチラ見スルーでお願いします。
ええ、チラ見で結構です!多くは望んでおりません。

そして、今回のお話。
だってー、コミックスのあのスペースにあんな可愛いものが隠されているんですよ?
いつか書こう、いつ書こう?と機会を伺っておりました。
妄想しちゃいますよね、ついつい・・・おにぎりも出来たらいいとは思うのです!あのでかいおにぎり!妄想掻き立てられましたから、いつかご披露できるといいなとは思っております。(期待しちゃいやん!)
コメントありがとうございました。

  • 2017-06-04│21:15 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
No title
この雰囲気好きです(*^^*)
小さな幸せって大事ですよね☆
  • 2017-06-05│22:27 |
  • あやめ URL│
  • [edit]
Re: No title
> あやめ様

コメントありがとうございます。
些細なことに小さな幸せが伴うことを”恋”と呼ぶならば、間違いなく恋の瞬間ですよ!(by坊)
アイロンをかける敦賀さんがあまりに可愛いのです。
  • 2017-06-06│20:46 |
  • かばぷー URL│
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