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Gynoid 4

実は、今回もちょっと切ない系のお話なんですよ。
でも、限定にするほどではないのです。

どうぞお楽しみ下さい。






Gynoid 4




「蓮、お前に見せたいものがある。」

カプセルの扉を強く掴んだまま動く事ができない俺を見て、社さんが大きく息を吐いた。

「とりあえず…離せ。カプセルが壊れるのはごめんだ」

俺は、ようやくキョーコが入っているメンテナンスカプセルから手を離した。


…ヴゥン………

社さんが画面を操作すると、ホログラム映像が目の前に現れる。

「社さん…これは…」
「黙ってみてろ」

画像の焦点が合うと、懐かしい顔が現れた。

『よう…久しぶりだな、蓮』

「……………宝田…所長……」

『お前がこれを見ているって事は、きっとKyo‐koが完成しているんだろう。まずはおめでとう』

おめでとう…か、世界的な人工知能の権威だった貴方にそんな風に言って貰えるとは思わなかった。

『だが、社がこれをお前に見せたってことは、お前が立ち止まったという事だろうと思う。』

その通りです。所長…俺は研究者としてあるまじき方向に進もうと立ち止まってしまいました。

『だがな…それは、想定内だと言っておこう』

想定内…?

『先ず…Kyo‐koはあくまでもプロトタイプだという事だ。勿論、完成品といえるまでの精度で起動させた事に間違いはないだろう。だが、所詮、量産品ではない。』

確かに、これを量産品とするにはまだまだ課題が山積みで…

『それに、プロトタイプのアンドロイドやガイノイドの特性を知り、自由に扱えるようになってこそ、量産できるというものだ。その課題については社の指示で貴島に押し付けてあったはずだったがな…』

ホログラムの中においても、にやりと笑う姿は生前の姿そのままで、口元が緩んでしまう。

『まあ、そういうことだから、解析データはすべて研究所に提供することを条件に、次に君たちは量産型の着手に進まなくてはならないのだよ。因みに、プロトタイプをあちこちで使い倒して破損させるなんて無駄な事を私は好まないのでね。』

それは…

『プロトタイプ・ヒト型ガイノイド“Kyo‐ko”の所持は代表開発者、敦賀蓮に帰属する。そのあとはお前の好きにしていい。…ただし、大事に扱え!仮にも俺の孫なのだからな!』








「社さん、嘘つきですね」
「どこがよ?嘘なんかついてないさ」
「キョーコの開発に何年かかったと思ってるんです?」
「30年だろう?長かったけど、一度出来てしまえばそれは軌道に乗るし、乗せなくちゃならない。」
「けれど…キョーコとしての量産は…」
「そう、完全オーダーメイド!次に作るのはキョーコじゃないさ。そうじゃないと意味がない。だから、お前は心配せずとも、アレが他の手に渡る事はないようにするつもりだ。それと…数年後、研究員としてキョーコが活躍する場を俺は準備しなくちゃならない。」
「研究員として…?」
「当たり前だ。キョーコの頭脳を宝田氏が放っておく訳が無いじゃないか。脳の損傷が殆どないとわかったあの時、キョーコの脳を保存し記憶を取り出した。勿論当時は違法だと知りながらな。だから…だからこそ…キョーコの記憶を引き継ぐ“Kyo‐ko”という器が必要だった…。」

「社さん…じゃあ…」

社はコクリと頷いた。

「そうだ。“Kyo‐ko”は量産型のためのプロトタイプであると同時に、唯一のKyokoとして…復活させようという試みだった。」

壮大な…もしそれが可能であるとしたら…
人々は優秀な知能を情報として残し、アンドロイドにそれを搭載する…そうすればこの世の英知がずっと……ずっと…?

それを…キョーコが望むのだろうか?

外国の研究機関に拉致されかけた俺を助けようとして、楯となり命を失ったキョーコが…

それを…望む?



記憶を消去するつもりはないからと説明し、大人しくカプセルに収まった彼女…メンテナンスカプセルの中で、静かに目を閉じるキョーコを見た。


次に目を開く時、ガイノイドの中にキョーコが記憶を宿して戻ってくる。
それは限りなく嬉しいことである。
だが…生身の人間である俺は老いる。
次は彼女を残して…?
残された彼女は永遠に生き続ける…?
それとも俺もアンドロイドとして残るのか…?

いや…彼女は…キョーコはそれを望まない。

キョーコはKyo‐koの中で永遠に生きることはこれっぽっちも考えていない。




「社さん…」
「…?何だ?」

「俺が死んだら…Kyo‐koの起動を停止してください。」

そう、それが望ましい。
俺が開発したKyo‐ko…キョーコを模した彼女は家庭用ガイノイドのプロトタイプであるべきだ。


「それと…キョーコの記憶…おそらくチップに保存してあるであろうキョーコのデータはいつか俺が死んだ時、俺と一緒に処分してください…Kyo‐koに戻すことなく…俺と同じ方法で…」

「……蓮……」

「俺は、俺の知能は俺自身で終わりにします。そして、キョーコの知能も…それだけで十分です。」



彼女に…キョーコにもう一度触れられた…
それだけで生きていける。


彼女にもう一度名を呼んで貰ったご褒美だけで十分すぎるくらいなのに、次にまたこのカプセルから生まれでる時の家庭用ガイノイド・Kyo‐koは俺に笑ってくれるという…キョーコとして
そして彼女は永遠に老いることの無い姿のまま、俺と寄り添って生きてくれるなんて…


最高の幸福じゃないか?


もし、残りの人生を彼女の記憶と生きることが出来、永遠を望むならば

魂とともに生きたい



そう…彼女の魂とともに生きよう





(Gynoid  完)



近未来?なガイノイド(女性型アンドロイド)は不可能ではない技術です。
もう既に3Dプリンターでは出来ているとも聞きますので、そんなに遠い未来ではないのかと思いました。
けれど、そこに人工知能をどう使っていくかはまだまだ課題が残るのでしょうね。

某携帯電話ショップで働く小さなロボットくんとお話していて、ふわっと生まれたものにございます。
お付き合いくださいまして、ありがとうございました。


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ギャグではなかったですよ~
こんにちわ。

しんみりとしたお話だったように思います。

ギャグっぽかったのは、2.5です!!(笑)


いつもお話、掲載ありがとうございます。
  • 2017-07-01│07:15 |
  • harunatsu7711 URL│
  • [edit]
Re: ギャグではなかったですよ~
> harunatsu7711 さま

はい、その通り、ギャグっぽくはなりませんでした。
本当は2.5を始めに思いついてギャグで行こうと思ったのに、私の脳が暴走したがために、指は違うものをポチポチと打ち続けてしまいました…(超反省)

しんみりシリアス系になってしまったのは、キョコさんの背景を思いついてから。

でもまあ、書きたいシーンは限定ながらも放出できましたので、良しとします。
なかなか思い通りに書くというのは難しいですね。
いつもありがとうございます。
  • 2017-07-01│09:10 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2017-07-02│08:18 |
  • [edit]
Re: すごく切なくなりました‥
> ko□ugiさま

初コメントありがとうございます。
素敵なお話と言っていただけて、本当に嬉しいです。
本当はギャグテイストのつもりで書いたのに、何故だか書き進めるうちに切なくなってしまいました。
困ったものですね。(←えへ)
また、次回作が出来ましたらどうぞお立ち寄りくださいね。

  • 2017-07-02│16:05 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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