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嫁ものがたり 4

こんばんは 

ようやく目処が立ちました。火・土更新の予定といたします。







嫁ものがたり 4




「食事の味が…」

そう言ってクオンは箸を置いた。

「お気に召しませんか?」
「いや、ちょっと…塩辛い…かな?」
「…………」

遠い目をして沈黙するキョーコ
流石にクオンは“不味い”とは言えない。
だって、キョーコの作る料理は本当に美味しくて食欲をそそるので、嘘はつけない。
おまけに量も控えめに作ってあり、完食も可能だから余計に噓をつくことが憚られた。

「そうですか、じゃあ残してくださっていいですよ。代わりに別のものを準備…」
「いや、それは良いから!」

「…?どうなさいましたか?」
「ごめん…本当にここに君は必要ないんだ。俺は君を必要としていない。だから日本に帰るんだね。」
「それは…」
「父に言ってくれって言うんだろう?けれどね、演技の勉強もせずに家事に明け暮れている人間は、役者とはいえない。そんな人間と一緒にいるのは不愉快だ」

ビリッとした空気を纏わせるクオンに、キョーコは一瞬怯んだ。

(この感じ…どこかで覚えがある…でも、どこで…?)

もやもやと考えながらあれこれと思い巡らし、思いついた途端、キョーコはポン!と手を叩いた。

「ああ!それ、先生にもやられました。いじめっ子なのは遺伝ですか?」

「…は?」

「いえ、どこかで同じような台詞を聞いたなと思いまして。ただし先生は塩辛いおやつをたくさん召し上がっていたためにお料理の味をしょっぱく感じられたのでしたけど。あとは…そうですね、初対面の私とちょっと距離を置きたい時に嫌味な男を演じてくださいましたので、その時の状況とよく似ているかと思いまして…」

(な…!?何でそんな事……まさか、根性が据わっているって、こういうことなのか?)

「食事の事じゃなくて、君は女優として活動していると聞いた。仮にも女優を目指している人間がのん気にこんな事をしている場合じゃないだろう?もっと他にやる事があるんじゃないか?」
「まあ!まあ、まあ、何てこと!!!私ごときの心配してくださるんですね!不肖最上キョーコ、先生の下で修行を積むつもりで渡米いたしました!ミスターは先生の下で演技の勉強をすることを認めてくださるんですね?」

「……??(…っ!そんな風に聞こえたか?)」

クオンの話などまるで聞こえていないように、キラキラした目で宙を見上げる。

「嬉しいっ!!神は私を見放しませんでした!ブラボーーー!!」

両手を挙げて舞い踊る姿にクオンは唖然としてしまった…。
どうしてこの展開でこうなるんだろうかと。

「ミスター!いえ、久遠さんと呼ばせていただきます。私の心配をしてくださるならば、絶対に御飯を召し上がってください!!私が演技の勉強を出来るのは久遠さんがきちんと食事を召し上がり、体調管理が整う事が条件なのです!!ああ、これで一歩先生の演技指導に近づきましたーーー!!!ひゃっほうー!」

ブンブンとクオンの手を握り締めて激しく振る。
頭がカクカクと揺れておかしくなりそうだ。

(ダメだ…常識の通じる相手じゃ…無い…)

クオンは嫌味をいう気も起きず、げんなりしてしまった。





『クオン、キョーコとの生活はどうだ?慣れたのか?あの子は奇想天外だがいい子だろう?一度キョーコと一緒に遊びに来てみないか?』

いきなり電話口でクーが切り出す。

「いきなり何ですか?行きませんよ!それより…彼女をお願いですから日本に戻してください。」

『何だ…まだそんな状態なのか…はぁ~…進展がないなんて、何てつまらない…(ガチャン)』


いきなりの電話であっけに取られたクオンはまた今回も文句を言いそびれた。

「つまらないって…何なんだ!?あの人は!」

実はあれから、クオンが繰り出すキョーコへの嫌味攻撃は一切通じることなく、にっこりと流され…かわされ…良いように誤解されていく。
けれども食卓に出される料理は本当に美味しくて、食べる事への億劫さは以前よりも軽減されているのは間違いなかった。

ところが、充実しているのは食事と身の回りのことばかりで、実際にはクオンの心につもり積もっていったのは、毎晩聞く父(クー)への賞賛の嵐に対する不満だった。
普段の食卓にありきたりの食事の感想や柔らかな雰囲気などはなく、いつも耳にするのはクーの武勇伝…こんな風になった状況を非常に面白くないとクオンは思っていた。

自分だって世間の評判は良好だ。
ハリウッドでも主演に近い役柄を張れる様になって来た。今はまだ準主役の扱いが多いが、これから先、もっと演技を磨いて父を超えるという目標もある。
確かに…大きすぎる父の影で苦しんだ時期もあったが、それはもう乗り越えた過去のことで、今はその影に臆することは全くない。
そして、自分にとってもクーは偉大なる父親であるのだが…彼女に嫌味を言う役柄を演じるというギスギスした空気の中で、父への賞賛の声を聞くのは想像以上に苦行に近い。

しかも、キョーコの件でもう一つ面白くない事はある。
それは、男性としての自分自身への興味の無さに関することであった。

…つまり、全くキョーコは男性としての自分に興味を示すそぶりは見せる事がなかったのである。

うっかりもドッキリも通用しないくらい男性として見られていないのだという不名誉な感覚を、ここ数日味わわされているのだった。

(何なんだこれは!?いくらなんでもこれはないだろう?)

女性との恋愛経験が勿論ないわけがない。それどころか数々の女性遍歴たるや相当のもので、いつも女性に言い寄られて関係をもつ事も少なくなかったし、魅力的な女性が自分にアピールしてくる事の多い世界にいるからには、多少の自信もあったのだが……、ここまで全く自分の食事事情にしか興味なさそうにしているキョーコを見ると流石に凹む。

クオンは始めの一週間で、栄養状態とは裏腹にメッタメタの精神状態を強いられたのだった。





(続く)






クオン君の意地悪が通用しないキョコさんって…





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Comment

クオンの意地悪、いつまで続くかな
こんばんわ。更新ありがとうございます。

意地悪クオン、いつまで続きますかね。。。うふふ。
これからラブラブになっていくのが楽しみです。
  • 2017-07-27│22:29 |
  • harunatsu7711 URL│
  • [edit]
Re: クオンの意地悪、いつまで続くかな
> harunatsu7711 さま

いつもコメントありがとうございます。
意地悪クオン君、意地悪になってないですよね?(えへ)
もう少ししたら、何がしかの変化があると思いますので、お待ちくださいね~
ラブラブ…さっさといちゃこらしちゃいたいですね。
  • 2017-07-28│15:43 |
  • かばぷー URL│
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