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嫁ものがたり 15






『クオン、映画が終わったなら一段落しただろう、一度キョーコと一緒に遊びに来ないか?』

電話口でそう切り出したクー

クオンはもう、否という事はできなかった。




嫁ものがたり 15




「やあ、キョーコ!映画出演おめでとう!」
「ありがとうございます!先生!」

にこやかにハグをするクーとキョーコ
だが、その脇でクオンは微妙な表情だ。

「何だ?クオン、眉間に皺がよっているぞ」
「……っ!!原因を作っているのは誰ですか!」
「はははっ!細かい事を気にするな。それよりもキョーコ!見事リッチー監督の映画に出演するとは、流石私の息子だ!父さんは鼻が高いぞ!」
「せっ…先生!それはクオンの前では言わない約束です!!」
「まあ、気にするな!もう一人の息子。いや、娘には違いないのだから」
「先生~~!」


「…約束?」

プリプリと赤くなって怒り出すキョーコは、いつもと違う様子だ。
それに、今なんて言った?もう一人の息子?と、クオンの意識はそちらに向いた。

「息子…って何?」

「えっ…と~、いや、そのぅ~~」

「説明…してくれるかな?」

不機嫌オーラを発し始めたクオンの声にはっとしたものの、その勢いに押され、かくかくしかじか…日本での出来事のあれこれを説明したキョーコだった。





一通り話を引き出した後、キョーコをジュリエナとともにキッチンに追いやった。二人の楽しそうな声が聞こえてくるから、今頃ほっとしながら料理にいそしんでいる事だろう。
しかし、なにやら怒りのようなものが覚めやらないのはクオンである。

「貴方は日本で一体、何をやっていたんですか!キョーコにそんな事をさせて…壊れてしまった息子が残念でならなかったんですか?」

“ぐぬぬぬぬ…”

クオンは、はっ!として慌てて額を隠した。

「ふう、まあそう言うな。あれはキョーコの役者としての訓練だった。見たもの、聞いた事、すべてが演技の糧となる。あの当時は役柄的に“好き”なものしか受け付けないという、稀に見る偏食俳優だったのだが、今はそれも克服したようだから、彼女にお前の役をさせて正解だったんだ。」

「俺の役を?」

「そう。勿論キョーコは私の食事係と言う重要な役割もあったのでね、彼女は美味しい京都のおばんざいを私に提供してくれた。」
「それは…貴方の胃袋を満たしたのなら、相当な腕前だったでしょう。」
「実はそうなんだ!!見事というほかない腕前だった!私の胃袋を満たすことが出来たのには、相当舌を巻いた。」

「…でしょうね。」

「まあ、そこでキョーコの過去に触れる事になったのだが、あの子の親から受けるべき愛情を、満たされない部分を多少でも補う役割を私が担った…ということになるのだろうな。」

ああ、だから彼女はクーをこんなに慕うのだ。
まるで自分が父を好きだったように気持ちがリンクして…

けれど、息子?娘?一体どっちなんだ?

「それは分かりました。一応キョーコは貴方の事を先生と呼んでいるので、師と仰いでいるという事も本人から聞きました。けれど、俺の役をやった筈なのに娘って…何故です?」
「うちの“嫁”にするためにキョーコを呼び寄せたんだから当然だろう?幸いキョーコもお父さんと呼んでくれるし、ジュリもその件については賛成している。我が家の嫁にするには最高の人材だ!予定通り彼女を選んでくれたお前は賞賛に値する!」

「それって…意味がよく分からないんですが?」

「何故意味が分からないんだ?お前は私がキョーコをお前の元に送った意味を正しく理解したのだろう?ここにちゃんと連れてきたってことはキョーコを嫁にする決心がついたってことじゃないのか?ん?」

さっきからクーが言っている言葉で一つだけ引っ掛かりがある。
嫁…?嫁って何だ?

「一つだけ疑問が…そもそも、“嫁”とはどういう意味なんですか?確かに俺はキョーコを連れてここには来ましたが、貴方が“嫁”にするとはどういう意味なんです?」

素朴な息子の疑問にクーは面食らってしまったが、こればかりは仕方がない。細かい日本語のニュアンスは教えていないのだから。

「“嫁”というのは「女」偏に「家」と書くんだ。嫁ぐとも言ってな、昔の家長制度にも由来するのだが家の世話をする女性というか、家に新しく女性を迎え入れるという意味を含んで嫁と言うのだそうだ。」
「それって、女性を家に縛り付けるという意味合いを持つものでしょう?結婚とはそんなものではないはずじゃないですか。」
「まあそう怒るな。最近では結婚は個人でするものという感覚が生まれ、家同士の結婚という感覚がようやく薄れつつあるが、元々日本では家同士の結びつきは古来重要視されてきたのだ。」
「それにしても、貴方が彼女をうちの“嫁”として扱う事には納得がいきません。」

その言葉にクーは内心にやりとした。

「そうか、じゃあ私がキョーコをどのように扱えばお前は納得できるんだ?」
「彼女はヒズリ家の“嫁”ではなく、俺の…」

「………俺の…?」

「俺の………(っ!!??)」

ニヤニヤが隠せなくなったクーの表情にようやく気がついたクオンは、はっとなって口を噤んだ。

(しまった…)

思った時は、遅かりし…だが、どうせもう隠す事も、否定する気もないのだ。

自分がキョーコに心惹かれていることは紛れも無い事実で、キョーコを自分の側にとどめておく事しか考えていない。だからこそキョーコをここまで連れてきたのだ。

あれだけ結婚しろと言う言葉を突っぱねてきたのに、キョーコが送り込まれてきた事に反発もしたのに、結局キョーコと付き合いたいと、結婚までしたいと思うようになるとは、まんまと親の思う壺だ。


「ふふっ…」

突然笑みを漏らしたクオンに、クーは吃驚した。

「ふふふふふっ…ククククッ……」

腹が捩れそうな笑いを堪えながら、クオンは目に涙をためて両手を挙げた。

「ふふふっ…もうダメだ。降参しますよ、父さん。」

「クオン……ククッ!何だ!降参してくれるのか?はははっ…!」

二人は大きな声を上げて大笑いした。
それこそ、揃ってキッチンに立っているキョーコとジュリエナの二人が怪訝に思ってリビングに覗きに来てしまうほどに大笑いした。




(続く)


さあ、ラストスパートです。
次回最終話ですよ。

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Comment

パパ大喜びの
降参宣言がでましたね〜〜!

まあ、自慢の娘に息子が惚れないわけがないという自信はあったでしょうけど。

(∩*´ω`*∩)

親にも白状したし、あとはキョコさんの返事次第?

家族総出で説得?できるのでしょうか。(笑)

最終話も楽しみです!
  • 2017-09-10│21:50 |
  • まじーん URL│
  • [edit]
Re: パパ大喜びの
> まじーん様

降参宣言でましたよ!

嫁にと送り込まれた人材に恋してしまうなんて、なんて親の思う壺。
クーパパ感激の一瞬であります。
クオン君の恋心も駄々漏れでありますが、一方のキョコさんの気持ちは・・・?って所でしょうか。
ちゃんとクオン君に堕ちてくれちゃったのかな?(←ちと怪しい…)
何事も知らされていないのはキョコさんのみ!

> 最終話も楽しみです! 
いつも本当にありがとうございます!
グッドエンディングになるよう、頑張りますよ~!


  • 2017-09-11│07:54 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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