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王様の耳はカバの耳

おとぎ話をこねこねしたした感じのもの。

バカ話ですよ?長いけど。









王様の耳はカバの耳




ここはツルガの国 、敦賀の国ではありません。
四季折々の景色が楽しめる豊かな自然に、美味しい特産物。
効能バッチリのありがた~い温泉も沸き出で、老若男女が安心して暮らせるこの国のお城に住まうのは、美貌に燦然と輝く蓮という名の賢王でございました。

さて、この王様、超イケメンで人望厚く、非常に帽子がよく似合います。治世も行き届き、国民の絶大な信頼を誇るという、いかにも王子様設定のこの王でありましたが、実はとんでもないモノが身体についておりました。
それゆえ王はいつも大きな帽子かぶっていたのです。

勿論帽子は、今をときめく人気帽子職人アール・マンディの特注品ばかり。民はその姿を誇りに思い、美男を何故隠すのかと思うこともなく、多くの国民は蓮王の真似をして帽子をかぶっているのがこの国の流行にございました。

「王様、今年も豊作にございます。民を招いての豊穣祭に参加をなされますでしょう?」

執事の社は厳かに問いました。

「そうだね、この1年の豊かな実りに感謝をせねばと思うのだが…今の私が民の前に出てもいいものだろうか?」
「何を仰います!確かに御髪は伸びてはおりますが、みな王様のお姿を拝見したく、心待ちにしております!民の姿をご覧下さい!色とりどりの帽子を身に付け、楽しそうに笑っている。あれはすべて王様の帽子姿を真似してのことですよ?」
「それは分かっている…けれど、伸び放題のこの髪の毛では、流石に示しは付かないだろう。」
「まあ確かに…多少伸びすぎの感はございますが…」
「だろう?流石にこれは伸びすぎだ。」

さて、実はこの蓮王、かつては散髪もちゃーんとしており、その際には王宮お抱えの理髪師がおりました。
その理髪師の名前をミス・ジェリー・ウッズといい、大層腕のいい理髪師だったのですが、美の追求と称して諸国行脚のためにツルガ国を出たのです。
そうなると、なかなか蓮王の秘密を知りつつも内緒にできる理髪師など、そうはおりませんでした。
そのため、ここ数年は髪を切らずにそのままでいた蓮王でしたが、流石に腰の下まで伸びたサラサラの黒髪を整えなくてはなりません。

「そういえば…ミス・ウッズが旅に出てから早5年。あの時に言っていた弟子は、このツルガの国でまだ仕事をしていると聞きますが、呼び寄せましょうか?」
「どうだろうね?彼女の弟子が国内にいるからといって、その弟子が信用できる人物とは限らない。ツルガの国の王には、世にも奇妙な耳が付いているなどと、そこら中に吹聴されては国の信用問題に関わる。」
「もっ…勿論です!けれど、そのお耳の件で王の婚姻さえ躊躇われるのであれば、私のみならず、民は真に残念がる事でありましょう。」

蓮王はクスリ…と寂しそうな笑みを漏らしました。

「私の代で王位継承者がいなくなるのは忍びないが、これは致し方ないこと。妻となるであろう姫君にこの耳の事で嫌われたくはない。」

王の弱気は社の目下の悩みでありました。
ツルガの国の蓮王の美貌の噂話や、その堅実な治世の様子に、お世継ぎを願う民の声も聞こえてきます。
そして、近隣諸国の姫君たちはこぞって恋心を募らせています。きっと蓮王の美貌をもってすれば、耳の事など些細な事だと思えるのに、王はその耳に自信がないのです。
その証拠に、いくら舞踏会で優雅な姿を見せようとも、姫君たちが眼をハートにしていようとも、蓮王は帽子を脱ぐことは絶対になかったのですから。
本当になんて小心者な…いえ、失言、ヘタレな…いえいえ、軟弱…えっとー、控えめな王でしょう。

(私の耳は、カバの耳…いかな寛容な姫君であっても、この耳を見たらがっかりするに違いない…)

蓮王はそう思わずにいられないのでした。

けれども、そうは言ってもいつかは髪の毛を切らねばなりません。そこで、執事の社は腕が良くて秘密の守れる職人を呼び寄せることにしました。それは、例のミス・ウッズが、弟子の中では尤も優秀であるから、髪の毛を切る時にはこの子にお願いするといいと言い残した、キョーコという名の理髪師でした。

王宮からの連絡を受けて、理髪師のキョーコは喜び勇んで王宮にはせ参じました。

「そなたが理髪師のキョーコか、面を上げよ。」
「王様、初めてお目にかかります。キョーコと申します。この度は王様の髪を手入れさせていただく機会に恵まれ、恐悦至極に存じます。」

眼にも眩しいショッキングピンクの作業着を着て、ひれ伏したその姿勢から遠慮がちに聞こえるその声は、とても可愛らしい声です。
顔を上げると、まだあどけない少女のような顔立ちでした。

「ミス・ジェリー・ウッズからそなたのことを聞いていた。一番優秀な弟子だそうだな。」

その言葉に、キョーコの表情がぱああっっと輝きました。

「はい!美の魔術師の一番弟子、ラブミー床屋一号にございます!」
「は?ら…ラブミー…??」

その奇妙なネーミングに、王も社もちょっと引きました。
けれど、キョーコは構わず鋏と櫛を両手にポーズを決め、ご満悦のようです。
その姿は、とても可愛らしく好感の持てるものでした。

「キョーコとやら、そんなに鋏はシャキンとするものではない。それはそうと、そなた、絶対にこれから見るものの秘密を、王の秘密を絶対に漏らさぬと誓えるか?」
「はいっ!!勿論でございます!!」
「ならば、そなたに私の散髪を任せよう。けれど、どうしても堪えきれぬ時には、この秘密のアイテム、魔法のメガホンに吐き出すが良い。」
「まっ…!魔法のメガホン?」
「そうだ。この魔法のメガホンは、心に芽生えた厄介な悩み事を告げれば、即座に悩みを解決してくれるという優れもの。けれど、一度しか使えぬ。どうしても我慢できぬ時にしか使ってはならないぞ?」
「かしこまりましてございます!」

生真面目にそういうキョーコに、王様はにっこり笑って頷くと、椅子に腰掛けました。
手にしたメガホンはゴージャス且つ洗練された、煌びやかさで、キョーコの目を奪います。また、その先には薄い膜が張ってあり、拡声機能は無視してあるかのように見えました。

「じゃあ、頼むよ?」

キョーコは散髪の準備を整えると、王様の帽子に手をかけました。
その時、王様の肩が一瞬震えました。
王様の帽子を取ったキョーコが眼にしたものは、ぷるりと震えるカバの耳…
緊張しているだろう耳は、小刻みに震えています。

そのカバの耳の可愛らしさにキュンとときめいてしまったキョーコは、しばらくその耳を凝視しました。

「…(ひゃうん…可愛い)……」

そんな不遜で小さな妄想が王様に漏れているなどと、キョーコは露ほども思いませんでした。
まして、そんな事を思っているなどと、知られていいはずがありません。
いくら王様が大変穏やかな気性の持ち主だとしても、一国の主です。可愛いなんて言語道断です。
慌てて鋏を持ち直し、元気に王様に告げました。

「では!参ります!」

キョーコはシャキシャキと、流れる黒髪に鋏を入れました。
あっという間に髪を整え終わると、そこには麗しいと評判で、どこの家庭の暖炉にも飾ってある王様の肖像画と変わらぬ美男子がおりました。
いえ…一箇所だけ間違いはあるのですが、それは触れずにおきました。

「ありがとう、凄くさっぱりした。」

そう言って神々しく微笑む王様に軽くノックアウトです。
脳内キョーコは軽く鼻血を吹いて卒倒してしまいました。
なんてったって、国中の、いや近隣諸国中の若い娘が憧れる美貌の王様なのですから。
しかし、この場で実際に倒れるわけにはいきません。必死の思いで無表情を貼り付けました。

丁重に礼を言う王様と、執事の社さんに見送られ、キョーコは放心状態で城を後にしました。

城を出た後、キョーコの脳裏には、ぷるん、ぷるんと髪が触れる度に擽ったそうに撥ねる耳が思い出されます。
その耳の可愛らしい事といったら、人差し指で優しくなぞってやりたいと思うほどなのでした。
そして、夢にまで見た王宮で見た王子様…いえ、王様の姿に一目惚れしてしまったのかもしれません。キョーコの顔は王様の姿を思い出すたび真っ赤になって打ち震え、その声を反芻して身悶えてしまいました。

何日経ってもキョーコのその思いは冷めやらず、寝ても覚めても王様の笑顔と耳が思い浮かんでしまい、苦しくてなりません。

(この思いをずっと持っていたって苦しいだけだわ。だって、向こうは王様だもの。私のような理髪師が思いを寄せるなんて、不届き千万!元々叶う事などあるはずがないのよ!この思いは奈落の底…いえ、メガホンの底に沈めてしまえばいい。だから、使ってもいいのよね?気持ちをすっきりさせたいの!)

いてもたってもいられず、小さな魔法のメガホンに秘密をぶちまけてしまう事にしました。
キョーコは、すう…と息を大きく吸って、魔法のメガホンに口を当てました。


「おっ…王様の耳はカバの耳~~~!!でも、凄く可愛くて、それが凄く好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き好き、好き、大・大・だ~~~い好きぃ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」


パッカーン!とメガホンの膜が破れ、「おい!お前!なんて声出しやがる!?あいててて…」といきなり黒いカギしっぽをした小さな悪魔らしきものが、そこから飛び出しました。
あまりの大音量に、耳が痛かったのでしょう。
「くっそ~!!敦賀の野郎め!なんで俺様がこんな伝書鳩みたいな事…」と、文句を言いながらふらふらと城に向かって飛び去っていきました。





翌朝、とんでもない早朝に扉をノックする音でキョーコは目覚めました。

「ふわ~い?おはようございます…………っ!!!???王様っ??」
「やあ、おはよう、迎えに来たよ」

扉を開けると、そこに立っていたのは、神々しいまでの笑みを湛えた王様と、ビロードのクッションの上に、なにやら輪っか状の貴金属を載せている、執事の社さんでした。

「なッ…なッ…なななな…なんで?」
「いやだな。アレだけの一大告白を国中にしておいて、知らん振りはいただけないな。」
「はへっ?」
「うん、とりあえず、私も君のことは気になっていたのは事実だし?君からの熱烈なプロポーズを、喜んで受け取るよ?」

ニヤリとあくどい笑みに変わった瞬間に、キョーコの背筋にぞくりと何かが走ったのは、ちょっくら置いといて…
こうして、本当に悩みを解決してしまった魔法のメガホンに感謝しつつ、王様はキョーコをあっという間に王妃の座に据えてしまいましたとさ。





めでたし、めでたし♪





(おわり)

な~んてね。
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コメント

コメント(4)
カバでもロバでも。
こんばんは。

かるーい気持ち?で楽しめてしまいました。
ありがとうございます。
蓮さまの耳がカバでもロバでもOKでございます!

いつも更新ありがとうございます!

harunatsu7711

2017/09/21 22:42 URL 編集返信
No title
カバの耳姿の蓮さん絶対かわいいですよね(*´ω`*)
キョーコちゃんが耳を見てキュンってなってる姿が目に浮かびます☆
いつも執筆ありがとうございます(*^^*)

あやめ

2017/09/23 04:13 URL 編集返信
Re: カバでもロバでも。
> harunatsu7711 様

コメントありがとうございます。

軽く読めたでしょ?長いけど。
少女のような理髪師のつぶやきにK.Oされちゃった蓮王様です。
自分がいやだと思っている耳に、うっとりと「可愛い…」なんてつぶやかれた日には、ときめいちゃうかもしれませんね。この辺は、蓮王様が捻じ曲がり思考じゃなくて良かったと思います。

かばぷー

2017/09/23 10:02 URL 編集返信
Re: No title
> あやめ様

コメントありがとうございます。

カバの耳って、丸っこくて、ぷるん!って感じなんですよ。
ロバの耳はふさふさで長いんです。どっちも可愛いですけど、我輩はかばぷーなので…
まあね~蓮さんですから、ライオンだろうが、ウマだろうが、ゾウだろうが、ウサギだろうが、ネコだろうが、犬だろうが、かわいいのは当然です!

かばぷー

2017/09/23 10:09 URL 編集返信
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