FC2ブログ

それは受難か恩恵か 3

本日は蓮さんの行動から…





それは受難か恩恵か 3




『とりあえず…さ、俺はキョーコちゃんのほうに付くから、蓮、お前はキョーコちゃんとしてCM撮影に行くんだ。しっかり“京子”を演じて来いよ?』


社さんに言われなくたって分かっている。
キョーコを演じるのは、敦賀蓮を演じるのと同じ…けれど、何よりキョーコのイメージを壊さない方が大事で、もしかすると俺がキョーコを演じるよりも、キョーコが俺を演じる方が無難に出来るのではないかとさえ思える。
何といっても少年の時のクオンを演じることができるくらいなのだから。

でも、キョーコは運転が出来ない。

だから、社さんが運転を担当して、俺はいつものキョーコと同じようにバスや地下鉄を利用することにした。敦賀蓮があのままの姿で地下鉄に乗るのは…まあ無理だろうな。


そんな思惑を胸に、蓮はキョーコの撮影現場へと向かった。
いつもなら事務所に一緒に乗っていくのが定番で、本来ならばそれが良いに決まっている。けれど撮影所の方向自体が違ってしまっている今日は、朝のドサクサもあり、キョーコの撮影所を回ってからだと自分の入りが遅れてしまう。かといって車をキョーコの姿で乗り回すわけにはいかなかった。

地下鉄とJRを乗り継いで、現場へと向かう途中の事だった。

(なんだか…凄く視線を感じる…)

キョーコだって一応芸能人だ。いくら顔はあまり知られていないとはいえ、見知っているものもいるだろう…

途中の駅で乗ってきた高齢の女性に席を譲った。勿論キョーコならありえる行動。
それから、なんだか視線を感じ始めた蓮だったが、それは実は仕方のないことだった。

キョーコを模して試みた行動。

けれど、そこで発せられた言葉や仕草は間違う事なき“敦賀蓮”のそれで、紳士的且つノーブルさが滲み出る…キョーコのビジュアルで優雅に微笑むとするならば、やはり周囲の馬の骨は量産されてしまう事に蓮は気がついていなかった。
コレがキョーコならば、平然とスルー出来たのだが…。

目的地の駅について降りたとき、女性を含め何人かに声をかけられた。
“あの、ナツの人ですか?”
“ねえ、君、キュララに出てた子だよね?”
やんわりと断りをいれ、違いますよというのも既に面倒だ。
挙句の果てには、スカウトらしき人間からの声掛けなんかもあったりして、既に芸能事務所に所属しているからと断るのにも一苦労だった。

(何なんだ!?こんなにキョーコは声をかけられていたのか!?…くそっ…やっぱりそろそろ正式な単独マネージャーが必要だろう。これが済んだら社長に相談しよう。)

半ば苛立ちとも取れる黒いオーラをキョーコの姿で撒き散らし始める。
すると…そうすることで偶然いつものキョーコに近くなっていた。
そうなると断然人は近寄ってこないわけで、蓮的には都合がよくなったといえるが、そういえば芸能人がそんなに怖い顔して歩くもんじゃないよ。なんて言っていた過去がしのばれるというか何というか…複雑な心境だった。

「京子ちゃん!おはよう!」
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

ペコリとキョーコがするように礼儀正しいお辞儀をすれば、目を細めてくれるスタッフたち。こうやって和気あいあいな雰囲気でやっているんだと思えば、ホッとする。

メイクさんにも肌のコンディションを褒められた。
際どいところにつけた独占欲がバレやしないかとひやひやしたから、次はもうちょっと気を使おうと少しだけ反省した。

無事に撮影も終わり、挨拶をして帰ろうとした時、事件は起きた。

「京子ちゃん、今日こそは付き合ってね?」

「………は?」

いきなりプロデューサーから声をかけられた。
そういえば…このプロデューサーには覚えがある。
まだ日本で活動を始めて日が浅かった頃、やたらと若い女優たちに声をかけていたこの人物を海外でもよくあることだと思いつつ、あまり視界には入れたくなかったような記憶がある。

…まさか、キョーコが今こいつと仕事をしているとは思ってなかった…。

「すみません、申し訳ないのですがこの後も仕事がありまして、今日はこれで失礼します。」
「またまた~…最近綺麗になったって評判だよ。今後の仕事の話もしたいし、ちょっと位付き合って欲しいな。そんな長い時間じゃないから…ね」

ぞっとするような笑みを向けられ、腕をつかまれると背中に悪寒が走る。
身を寄せられるのを避けようと腕を振りほどきたいが、男の力は意外と強い。
…キョーコは女で、非力なのだと…身の危険を感じた瞬間
ぶわっと自分の中で何かが弾けた。

「それ以上近づくと事務所を通じて法的処理に訴えます!」

一瞬、男の力が緩んだと思った瞬間、その懐から抜け出す事に成功した。
本当なら肘鉄もしくは回し蹴りでも食らわしてやりたい気分だがそうも行かない。

「今回の件…もし、お断りする事で契約違反になるのでしたら止むをえません。事務所に戻り担当と相談してお返事させていただきますが、よろしいでしょうか?」

ぎっと睨みつけて脅しをかければ怯みを見せる。…小さい男だ。
こんな時はLMEが大手でよかったと思わざるをえない。小さな事務所ならば仕事を回さないといわれれば従ってしまうしかないから。

「いやっ…ちょっと!京子さん!そっ…そんなつもりじゃ無いから!じょっ、冗談だから!食事っ…食事に皆で行こうかと…」
「そうですか?でしたら良いのですが、どちらにしても今回は同行できず申し訳ありません。」
「いやっ、忙しいなら仕方ないから!」
「それでは、失礼いたします。」

青くなって両手をブンブンと振るプロデューサーに流石に礼だけはきちんと残し、その場を後にした。
やりきれないような思いが沸々と湧き出す。

まさか、こんなふうに誘われたのは今回だけではないだろう。
やはり、これからは専属のマネージャーが必要だ。ムカムカしながら改めてそれを考えていた時、声をかけられた事に気が付かなかった。



(続く)
関連記事
スポンサーサイト

Pagetop

トラックバック

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

Pagetop


プロフィール

かばぷー

Author:かばぷー
ス/☆ビ大好き!
脳内妄想☆大暴走中
思いついた言葉を書き連ね
作品置き場にしています。

☆当サイトはリンクフリーではありません☆
お付き合いある「ス/☆ビ」二/次サイト様、マスター様のリンクをいただいています。リンクをご希望の場合、お手数ですがリンクを貼られる前に必ずご一報ください。尚、原作者様の作品画像やアニメ画像を無断掲載をされているサイト様からのリンク、多くのサイトを無断で紹介されているサイトは固くお断りいたします。

Attention!
The all of this are NOT related with the Author and/or the Publisher. Not allowed to permit from all illegal actions by the website rules. No reproduction and/or republication without any written permission from blog author and/or web site owner.
Each blogs has the copyright after publication showing on the web site and each web page by the author.
注意!
この中の全ての物は、原作者及び出版社とは関係ありません。
ウェブサイト会社規約、全ての違法行為を禁止します。著作者の許可なく摸作・転作などの行為を禁じます。
各ウェブサイト又は各ブログ執筆者により書かれた、もしくはデザイナーに描かれたそれらの創作作品は、公共へ配信された時点で著作権は著者が所有しています。 

ようこそ

最新記事

カテゴリ

リンクご案内

ちょび様
陽のうらうらと
ピコ様
sei様 風月様
popipi様
ちなぞ様 ぞうはな様
ぽてとあげたい様
ぽてとは揚げて食べたいな