それは受難か恩恵か 4

蓮さんのヤキモチ焼き。
こういうふうに発動するかな?







それは受難か恩恵か 4




「キョーコちゃん、キョーコちゃんってば!!」

はっと蓮は振り返った。

「あ!やっと気がついてくれた。お疲れ!今こっちに来たの?」

撮影スタジオにようやくたどり着いたところへ、キョーコにかけられた親しげな声。
(また男か…)と思って振り向けば、確かに見た記憶がある顔は…LME所属だ。確かキョーコは彼をこう呼んでいたような…

「おはようございます、光さん。今日はこちらで撮影ですか?」
「偶然だね、楽屋に君の名前を見つけたからビックリしたよ。」
「今日はブリッジロックの皆さんは?」
「ああ、うんいるよ?うちの楽屋に寄ってく?」
「はい、後ほどそうさせてもらいます。声をかけてくださって、ありがとうございます。」

ただの挨拶だと思いたい。けれど、何なんだこの親しさは!?勿論キョーコより芸暦が長い彼らだ。挨拶は必須であるけれど、楽屋に自然に呼び寄せるくらい親しくしていたのか?まさか俺以上に?と怒りに似た疑念が湧いてくる。

けれど、その奥の怒りを何とか押し留めたまま、蓮はキョーコとして光に挨拶を残し、別のスタジオで雑誌の撮影とインタビューに応じた。あらかじめキョーコが準備していた資料が非常に役に立った。

何事もなく穏便にキョーコを終えることが出来、スタジオを出てほっとした時だった。

「あ、いたいた、キョーコちゃん!」

ブリッジロックの面々がキョーコを待っていたのだ。

「リーダー、さっさと言ってまえ。」
「あ…でも、「ええから!」」

光が他のメンバーに言われて、もごもごとキョーコに声をかける。

「あのね、キョーコちゃんさえよかったら、来週の気まぐれの撮影の後、久しぶりに一緒に皆で食事でもどうかなって。」

(気まぐれ…?やっぱ気まぐれロックとか言う番組の事か?)

きょとんとした顔で見つめていると、なおも光が頬を染めて慌てて言葉を足していく。

「いや、キョーコちゃんの坊が次回の収録で卒業でしょ!だから最後に一緒に!」

(坊?坊…坊って……まさか、あの鶏!?)

そんな事は聞いた事がなかった。次回で卒業って…まさか始めから?と蓮の頭は混乱した。しかも、光のこの表情は…キョーコに好意を寄せているのは明らかで、他のメンバーもそれを知っていて接点を作ろうとしている。そんなところにむざむざと行かせる気はないのだが、これはキョーコの付き合い…悶々と胸の中にどす黒いものが渦巻き始めても、そんなそぶりは見せられない。

「え…と…、その次回の収録の時にお返事をさせていただいても…?」

困ったように眉根を寄せれば、さらに慌てたように真っ赤になって光が繰り出す。

「もっ…勿論だよ!無理にとは言わないけど、是非皆で…皆で一緒に行けるといいね!」

そうか…彼は、今時珍しい奥手な男なのだとその時点で蓮は気がついた。
関西人の割には初心な…と言ってしまえば語弊があるだろうが、後ろの石橋君たちがやれやれと煮え切らない光に溜め息をこぼしたのも分かった。

キョーコは彼が…光が好意を寄せていることに気がついていなかったのだろうか?
いや…彼女は天然記念物並みの恋愛拒否症だったのは間違いないから、キョーコを手に入れるまでにどんなに自分も苦労したことか。だから、きっと彼の心の動きには気がついていなかったのかも知れないと、そう思いたい。
まして、まだ極近しい人にしか二人の関係を公表していない今、キョーコがきっぱりと断る事などできはしないのだろう。

失礼にならない程度の笑みを残してブリッジロックの面々に挨拶し、早々に撮影所を後にした。





「はぁ~~~~…疲れた……」

キョーコとして過ごす事は、さほど難しくないのだろうと思っていた。実際上手くやってきたし、キョーコの人当たりのよさを考えれば想定内だったと言える。
けれど…やはり、もう絶対に一人では仕事に向かわせられないと蓮は思った。
現時点では社が自分と兼業でマネージャーをしてくれている。そのおかげで彼女との仲が進展し、今に至っているのは間違えようのない事実だ。
けれど、社ほど有能なマネージャーならばTBMでの仕事も知っていた筈だし、キョーコに言い寄る男が多いのにも気がついていた筈だ。
それなのに、社から何も報告がなかったところを見ると、流石に自分には言い辛かったらしい…。

まあ、当然か。

待ち合わせのラブミー部室で机に突っ伏して仮眠を取った。
キョーコの細い身体は予想外に疲れやすく、ちゃんとお腹も減る。ああ、そういうえば今日は昼ごはんを食べてなかった…キョーコにまた叱られるな…と、うとうとした頃に部室のドアが開いた。

「あら、キョーコいたの」
「やあ、琴南さん…お疲れ様」

「………は???」

琴南奏江のきれいな顔が思い切り歪んで、眉間に皺がよった。

「何よ、気持ち悪い。何か悪いものでも食べたの?」
「だったらどんなにいいかと思っているけどね…君はもう終わり?」

そんな切り返しに違和感があったのだろう。

「まさか…そこにいるのが、キョーコの姿をした敦賀さん…なんて、世にも恐ろしいことが起こっているなんてありえませんよね。」

「ごめん…その“まさか”なことが起きてるんだ。」

「っ…!!??」

かくかくしかじか…を奏江に説明した。

「それはまた…仲がよろしい事で…」
「社さんにも言われたけど…なんでそう思うの?」
「いえ、言葉のあやです。どうぞお気になさらず。」
「そうなの。…ところで…聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「キョーコのスリーサイズなら知りませんよ?」
「ぷっ…いや、そんな事じゃなくて…」
「敦賀さんがあの子のことで、ご存知でない事があるんですか?」

そうか、そんなふうに思ってるのか…と思い、ちょっと眉を下げた。

「そうだね、意外と知らないことがあるみたいだ。…琴南さんは、キョーコがTBMのブリッジロックの番組に出てる事、知ってた?」

その言葉に、奏江は渋い顔をした。

「知ってた…んだね。いつから?」

「そうですね…私たちがラブミー部の活動を始めてすぐに…ですから、かれこれ2年くらいになりますね。」
「そう、そんなに前なの。」

(じゃあ、やっぱり…俺はキョーコにキョーコの相談をしてたってことか。何とまあ…)

てっきり男性が入っているものとばかり思っていた。いくら仕方がないといえ、恋愛事情を相談されてしれっと知らん振りできたものだと思うが、今となっては怒る気にもなれない。情けないやら恥ずかしいやら…当時の俺はまだ本当に芸能界で大切な人は作れないと思っていたから。
じゃあ、ゲストで出演した時なんか、大焦りだったんだろうと今更ながら笑いが込み上げる。

「あ~…敦賀さん、キョーコのこと、怒らないでやってください。その番組の収録日は社さんにも必死の形相で断って、ずっと内緒にしていた位なんですから。」
「そうなの?」
「そうなんです」

「ん、そうか…」

思わず入手した情報に多少面食らってしまったが、さあ、どうキョーコに伝えようかな…と思いをめぐらす蓮であった。




(続く)
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秘密は何処まで

今日はかばぶーさま。
毎回のように、キョコちゃんの秘密(本人も知らない)を知らされてしまう蓮さま、ご愁傷様です(笑)。さて、キョコちゃん側はどうなっているのか愉しみです。
本当に成立前なら二人共、緊張のあまり一歩も動くことが出来ないこと間違い無しですね!!

ニワトリバレ!

こんにちは。

坊のことがこんな風にばれるなんて…。
キョーコとして坊になる蓮さんも見てみたいです(笑)

入れ替わったふたりは、今までよりももっとお互いを理解し会えるようになるのでしょうね~。

Re: 秘密は何処まで

> GREEN 様

こんにちは!
実は、我輩の中では成立後の二人でも秘密が多いのはキョコさんではなかろうかと推察しています。
蓮さんはコンタクトやその他もろもろもちゃんと言ってそうですしね。

女の秘密は恐ろしいのですよ♪うふふふ。(←怪しい…)
もしこれが成立前なら、蓮さんのキョコさんチェックは凄まじいものではなかろうかと…ああ怖い。
そして、キョコさんの蓮さんBODYチェックも相当なものではないでしょうか?だって、敦賀百万石の当主まっしぐらですよ?
それも面白いかと思う自分がいます。
妄想をかき立てるコメント、ありがとうございました。

Re: ニワトリバレ!

> harunatsu7711 様

こんにちは。
> キョーコとして坊になる蓮さんも見てみたいです(笑)
わー!!これ、おもしろーい♪
坊の中で蓮さん、どんなリアクションするんでしょうか?
プキュプキュ言わせながら、結局脱力してそうです!
鶏の頭をはずして、キョーコ並みにドドーンと落ち込む敦賀蓮。でもビジュアルやっぱりキョーコだよ?みたいな。
今日はキレがないとか言われて、落ち込んじゃったりしてさ。
ぷぷぷ。こちらも妄想を書き立てられちゃいました。
コメント、ありがとうございました。
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