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任務 7

こんばんは

さて、12月ですね。
そろそろ終盤です。







翌日から要人警護に当たるキョーコの後方支援に回った第3班。
バディとなった蓮は、勤務初日からイライラは限りなく頂点に達しそうだった。




任務 7 〈青天ノ霹靂〉 





(腰に手を回すな!腰に!)

昨日のスーツはまだ良かった。
多少フレアーの入ったベージュ系のスカートスーツ。
「低めのパンプスにしてもらったんです…」と、キョーコは申し訳無さそうに言ってはいたが、確かに上品そうなシルエットのそれは、高めのヒールが似合いそうなスーツではあった。スカートから覗く脚がやたらと綺麗に見えて、古賀のセンスの良さに唸らざるを得ない。
古賀も満足そうに口笛を鳴らし、終始上機嫌だった。

本日はやや露出度が高めの黒のカクテルドレス。
艶やかな生地にラメの入った黒いドレスは、ぐっと大人っぽい雰囲気を醸し出している。

立食パーティーに於いては、BGを雇っているクライアントは少なくない。だから、壁際のBGがあちこちから、それぞれのクライアントに目を光らせる。けれど、対面相手から何がしかのアクションがあった場合には、初動が遅れてしまうのは事実だ。
だからこそ、キョーコのように終始側にいればガードはしやすいのは確かなのだ。

(…それにしても、密着度が高すぎる。)

肩と脚がおもむろに出たドレス姿の部下を見るのは初めてだった。
青天の霹靂とはこういうものかと思えるほどに、着飾ったキョーコの子供っぽい姿などそこには見えない。
綺麗な脚、優美な身体のラインに古賀だけでなく、商談相手の男達の目線は釘付けになるし、ボディ・ガードたちも満足そうに見える。
おまけに化粧とは良くぞ言ったもので、まるでCGかと思えるほどに煌びやかなメイクを施したキョーコは丸っきりの別人だった。普段の胴着や地味なスーツからは想像もできない姿に、一瞬蓮は固まってしまったほど。
そして、まるで本当に古賀の恋人であるかのように、寄り添い、微笑む姿は、やけに蓮を苛立たせた。

ドレスアップした姿で、まともにガードができるのかという心配もある。だが、古賀は譲らない。イヤホンさえできない状態の髪型、頼みの綱は腕時計型の小さな通信装置のみ。それも、アクセサリー状の通信機器としては試作品に他ならないのだ。

何かあったら…という緊張感が、キョーコのみならず蓮にもビリビリと伝わる。けれど、古賀は意に介さず、キョーコの腰を抱き、会場内を縦横無尽に動き回りながらビジネスに励む。
そのおかげで、古賀からもキョーコからも目が離せず、珍しく眉間に皺が寄ったそのときだった。

「大尉(キャプテン)、珍しくピリピリしていますね。」

「…え?」

側にいた古賀の私設BGが、蓮に声をかけたのだ。
しかも、随分と懐かしい役職名で…

「ハワード軍曹!?」
「Yes!キャプテン 蓮!いつ気付いてくれるかと待っていました。」

「何だ、もっと早く声をかけてくれたら良かったのに。」
「ご無沙汰しています。はじめは自信がなかったんですよ。眼の色が違っていたので。」
「ああ、これはカラーコンタクトなんだ。流石に碧眼では過ごしにくいからね。」
「日本で仕事をしているのは聞いていたのですが、まさかこんなに早くお会いできるとは思ってもみませんでした。」

「で…君は、どうしてここに?」
「退役したんですよ。割のいい仕事があると聞いたもので。それでこちらに就職を。」
「そうか…君も退役したのか…何年になる?」
「ええ、2年が経ちました。こっちの方が性に合ってますね。」
「そうか、それならいい。」

会話を小さな声で交わしながら、あくまでも視線は古賀とキョーコから外さない。

「ハワード、いやな空気だと思わないか?」
「少し…大尉もお気づきで?」
「…大尉は流石にやめよう。何かありそうな気配だな。」
「……そのようです。警戒しますか?」
「ああ。………最上、聞こえるか?」

「………(はい、聞こえます。)」

時間を確認したあと、耳に髪をかけるような仕草で、時計を耳元に当てるのが確認できた。

「警戒」

「(…了解…)」

フロア内では流石に何もないだろう。と、すれば古賀が化粧室を利用するタイミングか、会場を後にする前の一瞬だと推察される。

何事もなければいい…そう思わずにいられなかった。

だが、やはり悪い勘とは当たるものだ。
古賀がフロア内でビジネスに励んでいる時、ふらふらと酔っ払い風情の男が椅子に座ったのが目に入る。その座った目つきの先には古賀。
その男にBGが意識を集中させた。

けれど、注目すべきは、そちらではなかった。

ウェイターが、古賀のところにドリンクを持ってきたとき、異変に気がついたのはキョーコだった。彼に手渡しでドリンクを渡す時、ニヤリ…と口元が歪んだのが目に入ったのだ。

「失礼…古賀さん、ドリンクを変えませんか?」

にこやかに古賀に申し出た時、ウェイターの顔色が変わった。
その時、蓮はキョーコの異変に気付いた。

ガシャーン!!

「下がってください!」
「ちいッ…!」

こんなフロア内で堂々と仕掛けてくるなんて、大胆不敵だが、始まってしまったものは仕方ない。ウェイターの腹部からは、ナイフを持った右手がすっと浮かび上がる。
だが、その手首はキョーコによって例の如く方向性を変えられた。くるりと反転した男は慌てて逃げ出そうとしたが、その直後には真っ先に駆けつけた蓮によって取り押さえられ、次いでBGたちが古賀の周りを取り囲んでいたのだった。

やがて、複数のBGに連れて行かれる形で、男は警察に引き渡された。
あの場の様子からいって、まだ油断はできない。きっと潜んでいる輩が他にいるに違いないのだが、それは警察の仕事だった。
パーティー会場での護衛もここまで。
その場の雰囲気はもう、和んでなどいられなかった。


「何だ~、最上さんともうちょっと一緒にいられると思ったのに、残念!」

自分が襲われかけた事など、全く気にも留めない古賀。

「仕方ないなあ~…警備会場確認の甘さは、ちょっと減点。だけど、まあ、こんなもんかな?お疲れさん!」
「申し訳ございません。警備を強化します。」

頭を下げる二人に、にやっと笑いを溢すと、私設のBGたちに囲まれた古賀は、足早に会場を後にした。



ポンポン…

「最上、よくやった。上出来だ。」

大きな手のひらがキョーコの頭に載せられた。
その大きな手が優しく、頭を撫でる。
その感触に、キョーコはなんだかむず痒い気持ちで、背の高い男をみた。

「…ん?どうした?」
「いえ…あの…」
「?」
「あれで…良かったんでしょうか?」
「ああ、問題ない。上手に捌いたな。」

そう言って笑うと、もう一度くしゃくしゃとキョーコの髪を撫でる。
すいっと手が離れていく瞬間、キョーコは若干の寂しさを感じたけれど、それが何故なのかは、まだキョーコは自覚していなかった。


「警備上の安全確認不足を指摘されたのは、ちょっと痛かったけどね。これから会社に戻って改善策を練るさ。」
「改善策…」
「そう。事が起こる前に対処すべき事だからね。」

そう前向きに捉える蓮を見上げた。

「あの…班長、お願いがあるんですが。」
「ん?どうした?」

会場を後にし、会社に戻る車の中でキョーコは蓮にたずねた。

「あの…明日の公休日なんですが、もし班長のお時間がありましたら、ちょっと付き合っていただけませんか?」





(続く)
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コメント

コメント(2)
キョコさんの担当任務は
満点レベルでしょうか。これで、研修中の身ながら、評価と株を上げましたね〜!

蓮くんの過去が垣間見える、昔の部下とのやりとりも面白かったです。

そして、初めて「仕事」場でない場で会うことになりそうな、公休日。

キョコさんの申し出は色っぽい理由ではないかもしれませんけど、まだ見習い、子供と言い訳できない、馬の骨量産な艶姿を見た蓮くんは、このチャンスをどうするのでしょうかね〜。

続きも楽しみです!!!

まじ〜ん

2017/12/02 20:17 URL 編集返信
Re: キョコさんの担当任務は
> まじーん様

いつもありがとうございます。
ええ、満点レベルでしょうね!

この前の失敗を元に、深追いするでもなく、ドレスのハンデも物ともせずに捌いてくれちゃいました。

準備を万端にするために、申し出た「お願い」ですが、蓮さんにとっては…ですね。
また、蓮さんの過去の設定妄想も楽しんでいただけまして、本当に嬉しいです。

今回も収蔵、ありがとうございました。

かばぷー

2017/12/03 09:14 URL 編集返信
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