FC2ブログ

夢現刻物語 1

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第1話をお届けします。
前のお話はこちら 序章

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールド どうぞお楽しみ下さい。









夢現刻物語 1  ~出会い~






「はじめまして、殿下」

図書館に併設された皇族専用の学習室に通された時、天井まで届きそうな大きな飾り窓の脇にある机で、本に向かい合っていた皇子は静かにキョーコを見た。

仮面の下に見える緑色の瞳が、真っ直ぐにこちらを見たとき、小さなキョーコはその風貌に一瞬唖然となった。


―――本物の皇子様がそこにいるのだ…と。

キョーコの知っている10歳の少年たちより、随分と背が高くすらりとした印象を受ける。
明るい光が差し込む学習室で金色の髪はサラサラと光を反射している。
顔の上半分を覆うようにつけられた黒い仮面は、皇族である彼がその素顔を知られないようにするために15歳の成人の儀式まで身に付けなくてはならないもの。そんな仮面をつけているのに、はっきりと整っているであろう美しい顔立ちの少年がそこにいた。


「君は…誰?」

凛とした少年の声が広間に静かに響く。

声のした方に顔を向けたのは王子の気まぐれだったのだろうか。
仮面の下から冷たい目をして、じっと声を発した少女を見つめた。

「クオン…レディにそんな視線をぶつけるものではない。さ、キョーコ、挨拶をするがよい」

皇帝は小さなキョーコの背中を押した。
キョーコと呼ばれた少女は、レディがするように膝下丈のスカートの端を少し持ち上げ、身を屈めた。

「モガミ・キョーコと申します。今日から殿下と一緒に机を並べることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。」

机を並べる?…それはおかしなことを…と皇子は一瞬怪訝そうな顔をした。
今、目の前に見えるのは、自分より明らかに年齢の小さな少女。

もう既に最高学府にある教授陣の教授を受け終え、この国の歴史、皇室の成り立ち、諸外国の言葉、交易については秘書官と同じ様な知識は一通り身に付けている。まだまだ実務経験は不足しているが、この年齢を加味しても国を背負う立場としては十分なレベルだと自負している。

「父上、私と机を並べる必要があるのですか?」
「ん?ああ、違うぞクオン。キョーコはお前の先生になるのだ。」

は?と皇子は信じられないような顔をした。

「そんな小さな少女から、一体何を学べというのです!?」

皇帝は、まあそうむきになるな…と呟くと、キョーコの頭を撫でた。

「キョーコよ、気にすることはない。お前は、お前に命じられた役割をすればよいのだ。よいな?」
「はいっ!陛下」
「よい返事だ。頼んだぞ?」

学習室の扉の脇では、皇后が心配そうに…けれども妙に嬉しそうにこちらを伺い見ている。
皇帝は気持ち良さそうに笑うと、皇后を伴って学習室を出て行った。

扉の閉まる音を聞くと、キョーコは小さく会釈をして、皇子の向かい合わせの席に腰掛けた。
だが、皇子はこちらに視線を送る気はもう全くないらしく、熱心に書物に見入っていた。


そうして、何時間が過ぎたのだろう…


キョロキョロキョロキョロ…

あまりに不自然で聞いたことのない音に、書物の中から一瞬で覚醒した皇子は、その音の発信元をすぐに特定した。

「あっ!ごめんなさい!お邪魔するつもりはなかったのですが!(キョロキョロキョロキョロ…)…うきゃぁ!」
「何も食べていないの?」
「え…朝ごはんはちゃんと食べました。」
「え?朝ごはん?今…」
「……3時です」

皇子は相変わらず自分の空腹中枢が壊れているのだと自覚はするものの、こんな小さな女の子が空腹のあまりに、盛大にお腹の虫を鳴らしているのを無視するわけにはいかない。

「食事を…頼もうか?」

キョーコの表情が、ぱああああーっと明るいものになった。







『どうせなら、お外で御飯を食べませんか?』

キョーコの提案を受けて、バスケットにサンドウィッチとチーズ、蜂蜜入りのミルクティーを厨房でつめてもらい、城の裏手にある小高い丘に向かった。

そこは、先の大戦のときに砦があった場所

今から200年ほど前…かつてこの小高い丘から眺めることができる大きな湖の先に、魔力を持ち、勢力をつけつつあった黒魔法を扱う国があった。
―――その国の名はマギーア
魔女の育成を掲げ、血による魔術を主要な輸出産業としてきたマギーアは、各国の王室に黒魔女を送り込み、政権を思うがままに操ろうとした。
権力の掌握を目論んだマギーアの勢力はやがて時を経てじわじわと広がっていく。

マギーアの勢力に危機感を募らせた国々と、白魔法を持つ白魔女たち、空の民、地の民、水の民がともに戦った大戦があったと文献に残っている。その大戦で空の民は死に絶え、地の民、水の民もかなりの数を減らした。しかし、不思議な力を持たない無力な人間が作り出した武器や金属は、魔女と戦うに十分な力を発揮したのだ。
長い戦いの末、ヒズリ帝国が黒魔女と決別をしたのがこの地であったのだ。

今は、僅かに残る建物の基礎となっていた石造りの部分がむき出しになり、緑色の植物が石の隙間を埋めるように生い茂っている。

ヒズリの城と城下町を一望し、反対側の湖を見下ろす丘の上、砦のすぐ側に立つ一本の大木は、春の強い日差しを遮るには丁度いい木陰を提供していた。

草丈の短い、平たい場所に腰を下ろした二人
そよそよと草花を揺らす風を感じながら、キョーコは大きなサンドイッチを口いっぱいに頬張った。

「~~~~~~っ!!おいひいっ!」

頬を高潮させて、むぐむぐと咀嚼していく様を見て、皇子はクスリと笑った。

「そんなにお腹がすいていたなら、声かけてくれたらよかったのに…」
「いえっ、殿下がお勉強中なので、私は声をかけたらだめなんです。」
「そうなの?」
「はい!殿下も食べてください!」

「ん、いただきます」

皇子はサンドイッチを口にして、ふと思った。

(―――美味しい…)

いつも、口にしている厨房の食事
こんなに美味しいと思ったことが、いままであっただろうか?

「ねー?美味しいでしょう?」
「………うん、美味しい」

「こうやって、いいお天気の時には外で御飯を食べるのが一番美味しいんです!」
「そうなの?」
「はい!」

ニコニコと笑って、木製のカップにミルクティーを注ぎ、皇子に渡す。

「ありがとう」
「どういたしまして?」

にっこりと笑って、キョーコは自分にもミルクティーを注いだ。






(続く)
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

家庭科と道徳?

こんにちわ。

優秀なクオンさんにキョーコさんが教えるのは、家庭科と道徳かな~と思いました。

序章の内容から、桃が多いのか?魔術戦闘シーンが多いのか?
切ないのか?
これからがもっと楽しくなりそうです。

お二方のワールド、堪能させてください!むふふ

度肝を抜かれるとはこのこと( 〃▽〃)

可愛い〰(///ω///)♪
幼少期キョーコちゃん、可愛い〰♡

幼な綺麗お堅いクオン皇子も、ツボです(*≧∀≦*)


このお話を初めて読んだ時のこと。少しだけ読み進めたところで、ぽてとは衝撃を受け、心から思ったのであります!
『かばぷーしゃまに書いてもらってよかった……………!ぽてとが書かなくてよかった……………!!』と。

かばぷーしゃまのすごいところ。
この第1話で、国の歴史や風土、それから、そののどかさもおごそかさも、今そこにいる二人を撫でる風も匂いもお日様の光も……………全部全部伝わってきます!!
素晴らしいですっ(*≧∀≦*)

Re: 家庭科と道徳?

> harunatsu7711 様

キョコさんが教えるのは・・・なんでしょうねえ?
いわゆる人間学?的なものでしょうか。

これからしばらく序章のお話(クライマックス)に至るまでをお楽しみいただきます。
どうぞ、ご堪能くださいませ。
どんな展開になるのか、是非楽しみにしてくださいね!

Re: 度肝を抜かれるとはこのこと( 〃▽〃)

> ぽてとたべたい&ぽてとあげたい 様

> 可愛い〰(///ω///)♪

可愛いでしょ?6歳のキョコさん、きっとこんな感じの娘さんだったに違いない。「素晴らしい」も下さって、ありがとう♪

景色のイメージは、ぽぽぽん!とね。
やはり、この物語の世界観とか風景とか、いまある穏やかさの影にある過去の歴史とかって、凄く大切にしたかったのです。
いわゆる中世のヨーロッパ風の感じ?かなあ。(個人的にはカリ○ストロの城とかも参考にしました。)
堅牢なお城と、緑の草原。小高い丘と青い空、湖・・・伝える事ができて、嬉しいな。

ひたすらに真面目街道を突き進むパラレルファンタジー。

凄くお堅い幼いクオン皇子、くふふふ、萌えるわ~~絶対見てみたい!!




キョロキョロキョロキョロ

キョコのお腹の音に吹き出してしまいました(^▽^;)
もうこの音からしてキョコの可愛さがクオン皇子にも感じられたんでしょうね。
外に出ての食事なんて、勉強はできても気真面目そうなクオンを寛がせてくれそうですね。

そしてキョコの教えるのは、魔術とかもあるんでしょうか?←自分好みなだけです。
キョコの影響でクオン皇子がどう成長するのか、続きも楽しみです(^O^)/

Re: キョロキョロキョロキョロ

> 山崎由布子 様

おなかの音への噴出し、ありがとうございます。
じーっと待つキョコさんのおなかの虫は、きっと驚きと同時に可愛いと思ったのかも・・・(本当か!?)

クオン皇子の成長の鍵を握っているのは間違いありません。
次回もお楽しみくださいね。
プロフィール

かばぷー

Author:かばぷー
ス/☆ビ大好き!
脳内妄想☆大暴走中
思いついた言葉を書き連ね
作品置き場にしています。

☆当サイトはリンクフリーではありません☆
お付き合いある「ス/☆ビ」二/次サイト様、マスター様のリンクをいただいています。リンクをご希望の場合、お手数ですがリンクを貼られる前に必ずご一報ください。尚、原作者様の作品画像やアニメ画像を無断掲載をされているサイト様からのリンク、多くのサイトを無断で紹介されているサイトは固くお断りいたします。

Attention!
The all of this are NOT related with the Author and/or the Publisher. Not allowed to permit from all illegal actions by the website rules. No reproduction and/or republication without any written permission from blog author and/or web site owner.
Each blogs has the copyright after publication showing on the web site and each web page by the author.
注意!
この中の全ての物は、原作者及び出版社とは関係ありません。
ウェブサイト会社規約、全ての違法行為を禁止します。著作者の許可なく摸作・転作などの行為を禁じます。
各ウェブサイト又は各ブログ執筆者により書かれた、もしくはデザイナーに描かれたそれらの創作作品は、公共へ配信された時点で著作権は著者が所有しています。 

ようこそ
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
リンクご案内
ちょび様
陽のうらうらと
ピコ様
sei様 風月様
popipi様
ちなぞ様 ぞうはな様
ぽてとあげたい様
ぽてとは揚げて食べたいな