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夢現刻物語 2

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第2話です。
前のお話はこちら 序章 

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールド どうぞお楽しみ下さい。







夢現刻物語 2 ~砦の丘で~ 





北部に連なる高い山脈にまだ雪が残るここは、ヒズリ帝国

ヒズリ帝国は皇帝の直轄自治領であるヒズリ領を中心として、北には山脈のふもとに大きく広がるタカラダ領、東にはオガタ領とクロサキ領、南にはマツシマ領が位置している。それぞれの自治領では領主がその土地をまとめ、税を扱い、公益や特産物を独自で扱っていた。

ヒズリの城から少し西にある小高い丘の上から、今、まさに眼下に広がる街が帝都・ツルガである。

東西南北をぐるりと城壁で囲まれ、南の大門から真っ直ぐに城に向かって伸びる大通り。
丘の向こうのさらに西にある湖とマツシマ領方面の海を結ぶ運河ぞいには石造りの船着場があり、その先には広場が広がる。
街には活気が溢れ、人々の表情は明るい。

帝都であるツルガの街は、湖の向こうにある国との交易や、大きな港を持つマツシマ領を拠点とした諸外国との交易も盛んであった。また、土地も豊かで秋には小麦や多くの作物が実り、人々が十分に暮らせるほどには恵まれていた。



今は春…

湖面を波立たせた後に森や丘を越え、草原を渡る風
冬には厳しさを増すその風も、今日は頬を撫でる程度に柔らかい…

「あ!チョウチョ!」

サンドウィッチを食べ終え、草むらに脚を投げ出して休憩していたキョーコたちの目の前を、ひらひらと小さな蝶が飛んでいく。
薄紫色の羽根を持つ小さなその蝶を目で追った。

「あれは…」
「シジミチョウです。綺麗ですねー…」
「シジミチョウ?」
「はい。カタバミ…シロツメクサ…ここには、チョウチョの餌も薬草もたぁーーーくさんあるのです!」
「シロツメクサ…」
「殿下、ちょっと待ってて下さい」

すっくと立ち上がったキョーコは、瓦礫の向こうによじ登って行ったかと思うと、しばらくして花冠を携えてやってきた。

「はい、殿下!」

皇子の頭にシロツメクサや色とりどりの花で編んだその花冠を載せたとき、青臭い緑の匂いが仮面の鼻先をくすぐった。

「え…?」
「殿下の本当の冠はきっともっと立派なんでしょうね、でも、花冠なら私も負けないんです!」

えへへへと、キョーコは笑う。
頭に載せられたそれを手に取ると、たくさんの花の隙間から複雑に絡まった軸が見える。

「凄いや…これ、どうやって作るの?」
「花冠?殿下は作ったことないのですか?」
「うん、ない。」
「じゃ、教えて差し上げます!よかったぁ、本当に先生みたい!」

キョーコは照れて恥ずかしそうに笑った。


「…名前…」
「はい?」

皇子はふいと視線を外した。

「もう一度、君の名前を…聞いていい?」

キョーコは、その言葉に目を真ん丸くした。
皇子の表情は黒い仮面に隠れてうかがい知ることは出来ない。
けれど、キョーコに目を合わせないように城下の町並みを眺めているその耳はわずかに赤味を帯びている。

「キョーコ……………モガミ・キョーコですよ!殿下!さっき覚えてくださらなかったんですか!?それは私におばかさんと言われても仕方がないと思います!」

ふんッと仰け反ると、ようやくこちらを見た皇子と目線があった。
仮面の奥に見える瞳はとても綺麗な緑色をしているのに、この草原のどの草の色とも違っていた。

「キョーコか……よい名だ」

その瞳が少し笑ったように見えた。







それからというもの、皇子は学習室での勉強を終えたあと、キョーコと連れ立って森や山、ヒズリ直轄の領地のあちこちに出かける事が増えた。そして、皇帝がなぜキョーコを自分の先生だと言ったのかを正しく理解し始めていた。

まず、キョーコの持つ草木の知識は6歳とは思えないほどに豊かであった。毒になる草、薬になる草、そして、それらを食したらどうなるかについてを、キョーコは楽しそうに語った。
また、キョーコは字をまだ読めないのだと言っていたのに、学習室で皇子の読み終えた書物を手にとって眺めては、あらかたその書物に書かれた言葉の意味を理解した。

―――どうしてそんな事が小さな少女にできるのだろう…?

実はその時のキョーコは、文字を知っているのではなく“感じて”いたのだ。

「文字は分かりませんが、こんな風に言ってますか?」
「うん、正解」
「やったあ!また当たった!」
「うんうん、凄いね」
「でしょう!」

と、近隣諸国の文献も大まかなニュアンスは理解できていた。

皇子はそれが面白くて、あてっこゲームのようにキョーコに文献でクイズを出していたが、その内にキョーコは文字のきまりを覚えてしまった。

そして、もう一つ…皇子が皇子として成長するべく必要な…いや、最も重要な要素を、キョーコは的確に補ってくれたのだ。

それは、城の外に出る事

書物を読み漁り、城の中から出ようとしなかった皇子を、キョーコはわずか数日間でいとも簡単に城の外に連れ出すことに成功したのだ。





「でーんーか?」
「何?」
「今日は森に行きませんか?」
「森?何しに…」
「森の妖精に会いに!!」
「(ぶふっ…!)」

むう…とキョーコが膨れっ面をするのに困って、結局森に出かけた。




「でーんーか?」
「何、キョーコ」
「今日のお勉強がすんだら、砦の丘で鬼ごっこしましょう!」
「鬼ごっこ?」
「そうです!殿下が最初に鬼になるんです!」
「それ…すぐに終わらない?」
「終わりませんよ!私、すばしっこいので!」
「仕方ないなあ…」

結局すぐにキョーコは掴まって、また膨れっ面をして…困った皇子は覚えたての花冠をせっせと編んだ。





「でーんーか?」
「今日はどうするの?」
「今日は街にいきたいです」

「…街?なぜ?」

「今日は市が立つんです。タカラダ領のキラキラ羽根飾りをつけた踊り子さんたちも見られるし、オガタ領の美味しいお饅頭もあるって聞いたので、凄く楽しみにしてて、お母さんから少ないけどお小遣いをもらったので…………だめ?」

それには皇子は少し躊躇った。

「街には…」

「どうしてですか?………あ!!分かった!殿下、お小遣いがないのでしょう!」

全く違う方向に推測するキョーコに、皇子はがっくりと肩を落とした。

「…………違うよ。お小遣いならちゃんとある……」
「本当に?」
「本当!」
「じゃあ!行きましょう!早く行かないと市が終わっちゃいます!」

ぐいぐいと腕を引くキョーコに、皇子は困った顔を見せた。

「そうじゃなくて…キョーコ…」

ぐいぐいと…
ぐいぐいと下を向いて殿下の腕を引くキョーコの頬にキラリと光るモノが一瞬見えた。

「キョー…コ?」

「だって…っ!初めてのお祭り…、ヒズリ領に来て初めての…っ」

ぐずぐずと鼻を啜る音が聞こえる…

「キョーコ…」

皇子は少しだけ聞いていたのだ。
キョーコがマツシマ領の辺境の村から、母親とともにこの帝都にやってきているという事を…
マツシマ領にも大きな港町がある。けれど、その規模は帝都の市とは格段に差がある。きっと、幼心にもヒズリ国の年一番の一番大きな祭りを楽しみにしていたのだろう。

「……顔、上げて?」

ふるふると、下を向いたまま頭を振る。
皇子はそんなキョーコの頭をゆっくり撫でた。

「うん、そうだね。市に行こう?」



「………いいのですか?」
「うん………フードをかぶっていけば大丈夫。それに、ちゃんと護衛のものがついてくれるから、一緒に…行ってみようか?」

「本当…に…?」

ようやく、そろそろとキョーコの目が皇子を見る。

「うん、行こう?」

キョーコはぐっと息を吸って涙を止め、申し訳無さそうに、でもとても嬉しそうに微笑んだ。






(続く)

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非公開コメント

6才キョーコさん、優秀すぎ!

こんばんわ。
更新は土曜日かなと思いつつ、訪れましたが、更新あってワオです。

キョーコさんの植物図鑑いえ人間学、素晴らしいです。
文字が読めないのに書物の内容がわかるって、白魔術?って思いました。

お母さんと二人で帝都にいるとのこと。どんなお母さんなのかも気になります。

二人&護衛の市場探索、無事にすんでくれることを祈りつつ、
次回とっても楽しみにまってます。

キョコかわゆす(#^.^#)

キョコはいろんな意味で頭のいい子で、可愛いですね。

そしてそんなキョコの影響で、本からの「知識」だけではない見聞を広めていくクオン皇子は、いつか国を治めるためには必要な中身のあることも学んでいけているようですね。
そして心も成長していっているような…。

キョコの「でーんーか?」っていうとこ、めちゃ可愛いです(#^.^#)
キョコが呼びに来てくれるのがクオン皇子も嬉しそうですね。
最初は「また?」と思っていたでしょうけど、すぐに嬉しくなってきて、でもキョコには悟られまいとしてそう( *´艸`)

街でのデート?散策?楽しいといいですね。
皇子だとバレルと大変そうですが…。

映画♡

ほう……………(ため息)。
本当に、素敵な国……の、描写だわ♡(*^^*)♡
眼前の、映画のスクリーンいっぱいに、その景色が広がるようです…………かばぷーしゃまったら、テクニシャンっ( ´∀`)σ)゚Д゚;)

キラキラの踊り子さんがタカラダ領って、原作混ぜる小ワザとか、もう、ニクイニクイっ( ´∀`)σ)゚Д゚;)

キョーコちゃんがとにかく可愛いし、優しい少年クオン君もやっぱり可愛いし、いちゃいちゃしてないのに萌える(//∇//)
改めて思ったのですか、原作でもこうして子供の頃から二人が会っていたら、きっとお互いがお互いを大切にしてほわりと育っていったんだろうな…………って。原作の久遠君も、可愛いらしい愛情豊かな少年君ですもんね(*^-^*)

Re: キョコかわゆす(#^.^#)

> 山崎由布子様

> キョコはいろんな意味で頭のいい子で、可愛いですね。

ありがとうございます。そうなんですよー賢いキョコさんが書きたかったのです。
ご学友として年下を選ぶなら、いろいろな賢さというのが必要だと思うのです。知識だけじゃなくてね?
きっと、キョコさんとのふれあいの中で、為政者として必要な力を身につけていくと思います。

メチャ可愛い呼びかけ、小さなクオンとキョコさんの掛け合いは、本誌ではちょっとずつしか拝見できませんが、こんなふうだったらいいなあと思っています。

Re: 映画♡

> ぽてとたべたい&ぽてとあげたい 様

> 本当に、素敵な国……の、描写だわ♡(*^^*)♡

ありがとおおお!!
本誌のネタを織り交ぜつつ、おとぎ話風のパラレルに・・・あくまでも、ス○ビ好きーな方だけが「うふ♪」って思って下されば、本望なのです。
そして、本誌では情報少ないけれど、こうだったらいいなあ・・・って、二次創作ならではですよね。
私の脳内では勝手に小さな二人がニコニコと動いてくれちゃいました。

風景は皆様の脳内イメージがいろんな形になるのが、文字の素晴らしさだと思います。
私の持っている映像世界が、少しでも伝わっていると嬉しいなあ~・・・
スクリーンいっぱいに蓮キョが動くなんて最高ですよね。皆様オリジナルの妄想世界をミックスして、脳内映像化してくださると本当に嬉しいです。

Re: 6才キョーコさん、優秀すぎ!

> harunatsu7711 様

キョコさん、凄いんです!ご学友ですから!
文字が読めないけれどニュアンスが分かるって、特殊能力っぽくないですか?
文字から、書いた人の意志が読み取れる的なね。

こちらのキョコさんのお母さんは、皆様どうぞ、ご自由に妄想なさってください。
市場探索もどうぞお楽しみくださいね。
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かばぷー

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