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夢現刻物語 4

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第4話をお届けします。
前のお話はこちら 序章   


ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。

※4/28 文末の表現を、5話の冒頭に移しました。
大幅変更しています。大変申し訳ございません。








夢現刻物語 4 ~変化~





「殿下、ごきげんよう」
「こんにちは、クオン殿下。いい天気ですね」
「殿下!ほらほら、早く帰らないと御付きの者が探していましたよ!」

このところ皇子が街を歩くと、気さくに皇子に声をかける、帝都ツルガの民

先日の市が立った日、皇子がお忍びで市に遊びに来ていたことは、瞬く間にツルガの街じゅうに知れ渡っていた。それこそ、どの家庭にも皇族の写真版画が飾ってあるほど、長年にわたってこの国を安寧に導き支えるヒズリ皇室への信望は厚く、仮面の姿をした若者がクオン皇子である事を知らぬものなどこの街にはいない。

帝都ツルガの民にとって、この直轄領を皇帝自らが統べていること、そして、直轄領の中心である帝都にすんでいる事は誇りである。
直に皇帝の施政に触れ、恩恵にあずかることができるだけでない。親しみをもって皇帝陛下のお姿を間近に感じられるという優越感。近隣諸国に名を馳せる、ヒズリ帝国の帝都の住人であるという事実は、その商売にも大きく影響を及ぼしたのだから。

そのように身近な皇族の存在を誇りに思いながらも、ヒズリ帝国の皇子であるクオンの姿を殆ど見ることが出来なかった民は、心持ち寂しい思いを抱いていた。だが、市の立った日の、フードをまとった姿とは別人のように、クオン皇子が正式な供を引き連れ、仮面だけの姿で帝都の街並みに足を踏み入れたとき、ツルガの人々は皇子の姿に感激した。

今まで、写真版画でしか姿を見ることが叶わなかった小さな皇子ではなく、すらりと成長した麗しい皇子の姿に、驚きとともに大変な喜びを感じたのである。

驚いたのは皇子が予想以上に美しく成長していたことだけではなかった。彼が本当に皇子であるとか、美しいとか以上に、仮面の下に垣間見える端整な口元からこぼれる温かい言葉や微笑みに、城下の者は瞬く間に皇子の虜になったのだ。

『今年は麦が不作だと聞いたのですが、大事はないですか?』
『この味のパンは初めて食べました。よい味ですね。』
『馬がよく手入れされていますね。毛艶がとてもいい…』

皇子の心優しい声かけや微笑に、ツルガの民はここが帝都で、間近に皇子の存在があることをより一層誇らしく感じた。


皇子もまた、街に出かける事に少しずつ抵抗をなくしていった。
港、パン屋、鍛冶場、農場…帝都ツルガの殆どの場所のことは把握していた。けれど、報告で知っているのと実際に目で見るのとでは大違いで、想像以上に細かいところまで知ることができ、書物以上にいろんな発見ができる。

百聞は一見にしかずと…それは分かっていた事なのに、いままでは城の外に出ることは殆どなかった。
なぜなら、たとえヒズリ直轄領といえど、自分の髪色や瞳を見れば、民は水の民である己に対して恐怖を感じてしまうのではないだろうかと、いつも不安と申し訳なさを感じていたからだった。


けれど、キョーコの言葉に少しだけの勇気を出してみようと思った。

“絶対に街の人も皆、殿下と仲良くしたいって思ってるんです!”

キョーコの言うとおり、ツルガの街では皇子の言葉かけに寿命が延びたと喜ぶ老婆もあれば、商売に箔がつくと喜ぶ店主もいた。そのことが皇子は心から嬉しく、民とともに生きよという皇帝の思いをようやく肌で感じられた瞬間だった。


積極的に街に出るようになった皇子の姿に、皇帝は満足そうに頬を緩め、喜びを顕わにした。
自分の置かれた立場と将来の皇帝像を理解しつつも、己が「水の民」であることにずっと引け目に感じてきたであろう息子…
城内での勉強を好むのは、人目に触れたくなかったのであろうことは、容易に想像できた。

皇帝は、10歳という年齢を迎えた皇子に、この国が多くの種族、多くの民によって支えられて成り立っていること、すべての国民が豊かに暮らすためには、まずその眼で国と民を知ることが必要であると知って欲しかったのだ。

そしてまた、小さなキョーコを学びの供として皇子の側においたことで皇子に変化が現れ始めた事を、心から喜んでいた。









「でーんーか?」
「どうしたの?」
「今日も街に行っていらしたのですか?」
「うん、視察にね」

「…………いいなあ…」

置いてけぼりを食らって、キョーコがムッツリとむくれる。

「クスクス……そんなに怒らないで?お土産買ってきたから。一緒に丘に行こうか?」
「はいっ!!」



「今日のおやつも美味しいですね。」
「そうだね。街のオ・ムスビは初めて食べた。いろんな具が入ってるんだね…キョーコの具は何?」
「タッカナー。大好きなので、当たりです!殿下のは?」
「僕のはトゥーナ・マーヨ」
「それも美味しそう~~。」

具に何が入っているのか、分からないから楽しいというツルガ伝統の軽食、オ・ムスビを頬張る。
勉強に飽きたときなど、時々二人は砦の丘でのんびりとした午後を過ごした。

「キョーコはここ(丘)、好きだね」
「はい、大好きです!」
「理由、聞いていい?」

「んーーーっと…初めて、この街に来たときにお母さんと一緒に来た場所なのです。」
「そうなんだ」
「ここから見る景色は綺麗だし、いつもこの場所が,“おいで、おいで”って言ってるみたいで、ここに来るとなんだかホッとするから。」
「ふーん…」


キョーコが母親とともに移り住んだ帝都
新しい生活を始めて、まだ一年に満たないのだという。
それまであちこちを転々としていた母子は、ようやくこの地に定住を決め、やがて母親は薬師を始めた。
ある日、母親の友人である女官が、皇帝が皇子のご学友を探しているので、一度試しにキョーコを出仕させてみてはどうだろうと母親に持ちかけた。キョーコの母親は始めはその件を頑なに断っていたらしいが、女官が是非にというので、一度ならば…と城に赴いたところ、皇后が利発なキョーコを一目見て気に入り、まずは皇子と対面させてみようという事になったらしかった。

ともに学ぶ事が決まってから、皇子と共に学習する事を厭わず、楽しそうにキョーコは城に通った。
そんなキョーコの笑顔に癒され、皇帝も皇后も二人のやり取りを非常に微笑ましく思っているのだ。と何度目かの送り迎えの際に、女官はキョーコの母親に告げた。

そのことに母親は安堵したのだろう。
しばらく仕事で家を離れる必要が出来たと言って、少しの間だけキョーコの面倒を見て欲しい…とキョーコの母親が女官に申し出たのが五日前のこと。それからキョーコはここ数日、女官とともに城の使用人部屋で寝泊りをしていたのだ。

慣れない城での寝泊り、ようやく慣れ始めた自分との時間
きっと、居候の身を気にしてあれこれ手伝い、さぞかし小さな体で疲れたのだろう…

また、キョーコがうつらうつらと居眠りを始める…

母親が仕事だといって街を出ても寂しがるでもなく、明るく振舞うキョーコだったが、その小さな体で様々な思いを秘めて頑張っていた事を思えば、何かしら心に温かい気持ちが生まれてくるのを感じる皇子だった。



やがて日は傾き、皇子が何をしようとしているのかに気付いた近衛の一人であるサワラは静かに皇子の元に駆け寄った。

「皇子、私が城までお連れしましょう」
「いや、僕が運ぶ。背負わせてくれないか?」

「……よろしいのですか?」
「うん、僕が運びたいのです。」

そう言ってサワラを見上げる皇子の瞳は、いままでに見たことが無い程の優しさに満ちていた。

「わかりました、お気を付けください。」
「うん、ありがとう」

サワラは皇子の背中にキョーコを載せると、西の城門に入るまで、皇子に付き添った。
近衛兵にあるまじき、優しい微笑みを浮かべながら…






(続く)

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コメント

お腹すいた(//∇//)
お話の中に、再び美味しそうな食べ物が!『オ・ムスビ』だなんて、なんて発想!!感心しつつ、笑いつつ。キョーコちゃん、あなたやっぱり『タッカナー』が好きなのね、と突っ込んでしまいました。ちなみにぽてとは、『トゥーナ・マーヨ』が気になって気になって!ツナマヨ大好きなので、このお話を読んでから、お腹が空くと、必ず思い出してしまいます(笑)今度の夜勤の夜食に、コンビニで絶対買います!トゥーナ・マーヨのオ・ムスビを!!



>「うん、僕が運びたいのです。」

ああっ、かわゆい♡♡♡僕って、僕って!!何度見てもやっぱりかわゆい♡キラキラ少年皇子が目に浮かぶ〰(*≧∀≦*)
年上に対して敬語なのも、品のいいお坊っちゃまって感じで本当に素敵です( 〃▽〃)


それにしても椹主任、いい役どころですな(*^-^*)


何度読んでも、後半の母親に関わる描写は悲しくなってしまいますが。キョーコちゃんのお母さん……………(;つД`)
  • 2018-04-25│23:06 |
  • ぽてとたべたい&ぽてとあげたい URL│
  • [edit]
Re: お腹すいた(//∇//)
> ぽてとたべたい&ぽてとあげたい 様

ぎゃ~~~!!凄く返事をお待たせしてしまい、申し訳ありません。

洋風なお話なのに、なぜか「オ・ムスビ」!うひゃ=怒られそう!なんて思っていましたが、結構楽しんでくださっているようで嬉しいです。キョコさんの好きなタッカナー、渋いチョイスでしょ?でも、中に何が入っているのか分からない、ある意味運試しのようなオ・ムスビなんですよ。苦手な具がでてきても我慢して食べましょう的な食育も狙ってみました。トゥーナ・マーヨ、美味しいですよねえ。巻きずしにしても美味しくて私も好物です。

そして、またしても「僕」萌えですね!!
萌えて~~!!ぽてしゃんが萌えてくださったら、それでいいの~~。
お話ごとに暗い終わり方が多いのですが、結末は・・・ね?
まだ、まだ、道のりは遠いのでございます。
今回もご紹介、ありがとうございました。

  • 2018-04-28│19:12 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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