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夢現刻物語 5

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第5話をお届けします。
前のお話はこちら 序章    

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。

※ 4/28第4話の終末を、冒頭に移し変えました。








西の城門をくぐると、何人かの兵士とともに皇后が駆け寄り、その雰囲気に驚いて、皇子の足が止まった。
皇后の傍らには、目元を赤く腫らした女官の姿がみえる。

「母上、いったい…何事です?」

ぐっすりと寝ているキョーコを兵士がゆっくりと皇子の背中からはがし、その腕に抱いた。

「クオン…大変なことになりました。キョーコの母親が死にました。」
「……え?」
「先ほど、その知らせが入ったのです。北の…タカラダ領の山中で落盤事故に巻き込まれたと…」
「落盤事故に!?いったいなぜ…」

「ここでは詳細は言えません。まず、城に戻ります。キョーコが寝ていてくれてよかったのか、どうか…」

皇后はそう言い淀み、皇子とキョーコを抱いた兵士と共に城の中に入っていった。






夢現刻物語 5 ~呪縛~





「キョーコは魔女の血をひいているのです。」

キョーコを女官に任せ、宮殿の奥にあるその私室で皇后カレンタは皇子に告げた。

「え…?ま………じょ?」
「そうです。我々と同じように、特殊な能力、血を持つ者の仲間です。」

「でも!キョーコからは邪悪なものは感じませんでした。」
「それは、勿論そうでしょう…キョーコは白魔女の血筋、清き魔女の血を引いているのですから。」

「では…何も問題はないのでは…」

カレンタは、少し悲しそうな目をした。

「ええ、もちろん帝都ではそうでしょうね…ですが、そうではない土地も、このヒズリ国の内にはあるのです。」

皇后の言葉に、皇子は思い至った。

確かに…このヒズリ領の帝都では、領民はみな平等であると教えられている。
先の大戦を戦った今は亡き空の民、ともに住まう地の民、水の民も同じであると。

けれど…必ずしもそうではない事を皇子は知っていた。


かつてマギーアの魔女たちが扱っていた攻撃的な黒魔術は、道具や魔法陣のもとに行うまじないの魔法に改良され、すべての魔法の呪文は、ヒズリ国立の魔法学校でのみ教授されるようになった。そして、魔法学校を卒業した優秀な人材で結成された皇族魔法団が、魔法を使うことが許された集団として存在しているのみである。
だから、ヒズリ国内どこの領地であっても、黒魔術を行うこと…すなわち魔法学校を卒業した魔法団員以外のものが、道具を用いて行う魔法以外は認められなかった。
また、魔法学校で教授される魔法の他に、特に治療や植物の育成に関わる魔法は白魔法と呼ばれ、大戦以降も清き魔女の魔術として重宝されていた。だから、白魔女的な役割を担う医師をはじめ、占いや民間療法を得意とする薬師、匂いや新しい植物の掛け合わせを行う調香師は帝都では有益であると認められている職の一つであったのだ。

だが所詮、黒の魔法も白の魔法も元をたどれば同じモノ…
領主お抱えの…いや、国家に認められたものでなければ、それは田舎の領民にとって“異端の者”でしかない。
ましてや領主のお抱えでもない薬師の人間が、その能力を発揮してよい薬を造ったとしたら、それが効けば効くほどに地方では目立った存在となる。
ならば、その能力を知った者たちが、その太古の力に頼る事がまったくなかったといえるのか?
そうであるならば逆も然り、頼る者がいれば…不信感を覚えて排除する者もいるのは明白ではないのか?



―――だから、転々と逃げてきたのだ。


ヒズリ直轄領を離れれば、国の根幹にかかわる法以外の決まりや教えは自然と緩くなり、それぞれの領地に適した方策が採択される。
民がすべて平等であるといえど、心の奥深くに眠る過去の経験や習慣、畏れの念は根強いものがあるうえ、偏見を持たずに接せよというのを無理だと思う者は多くあるといえる。

それは、帝都であっても例外ではないのは、皇子が恐れていた通りだ。


特に、港町で人の出入りが激しいであろうマツシマ領は、海に命を預ける荒くれ者もいる土地。
彼らにとっては、黒魔女であろうが、白魔女であろうが魔術を扱う者の不気味さは同じで、自分たちに不安と恐怖を与えるものがいるならば、先にそれを排除する…
良い魔術か悪い魔術かなんてことは、区別も判別も面倒なほど些細な違いに他ならない。

魔術を行うものすべてを異端と捉えた者がいるのであれば、およそ、100年前には廃止された“魔女狩り”が、まだきっと根強く残っている地域もあるに違いなかった。




「キョーコは…確実に白魔女の血を引いています。けれどもあの子はそれを知らされずに育ちました。」
「それは…どうしてですか?自分のルーツや意味を知らされなければ、あの子はどうやってこれから生きていくというのでしょう?」

「母親は…あの子が普通の人として暮らしていくことを強く望んでいました。だから、皇帝とあなたの庇護の下で、普通の女官としての暮らしをさせようと考えていたのです。」


―――コトリ

その物音に、皇子と皇后は、はっと振り返った。

「キョーコ…!?」

キョーコは呆然と立ちすくんで、二人の方を見た。

「……………お、かあさん…は?」
「キョーコ…」

「お后様…殿下……」

何が起きているのか、なぜ自分が皇后の居室にいるのか、全く状況が掴めなかったのだろう。…いや、キョーコはもしかしたらその場の雰囲気を既に読んでいたのかもしれない。

「キョーコ、皇后様からあなたにお話があるそうです。」

付き添っていた女官がなだめるようにキョーコの背を撫で、皇后は静かにキョーコの前に立ち、その身をゆっくりと屈めた。



「キョーコ…よく聞きなさい。あなたの母上は、あなたをここに預け置いて、仕事で必要となる薬草を取りに出かけました。それは知っていますね?」

キョーコは青い顔をして、コクンと頷いた。

「その薬草は、この国では北の領地の断崖にわずかに自生するのみ…普通の人にはなかなか近づくことは出来ない場所にしか生えていないのです。それは…知っていましたか?」

キョーコの顔が、ぐにゃり…と歪んだ

「あなたの母上はそこで、その場所で…………落盤事故に遭い、命を落としました……」





ぽとり……、床に丸いしみが落ちた。

「っ…ううえっ……うあっ…」


堪えるような…耐えるような嗚咽

「おっ…お、お…おかあ………さぁん……おかあさぁん…いやだ、なんでぇぇぇ…」

「キョーコ……」

皇后カレンタは、キョーコへゆっくりと腕を伸ばす。


「うあああぁぁぁぁ~~、お母さん!お母さん!おかあさぁ~~ん!!!」

頬に触れたとたん、大粒の涙を流すキョーコを皇后は強く抱きしめた。










「キョーコの様子はどう?」
「少し落ち着いたようです。」
「そう…」

「皇后様、寝入りましたら部屋へ連れて戻ります。本当に申し訳ございませんでした…」
「いえ、いいのよ…シナノ。今日は私が連れ添いましょう。」
「いえっ!それでは皇后様にご迷惑が!」

皇后カレンタは、シナノと呼ばれた女官に笑って見せた。

「いいえ、迷惑などないのです。最後にこうして幼子を抱きしめる事が叶わなかったキョーコの母に代わり、わたくしがただこの子を抱きしめて眠りたいだけなのです…」

「皇后様…」

「さ、お前ももうお下がりなさい。明日はまた別の用をお願いせねばなりません。」

女官は心得たように頷くと、部屋を後にした。
皇后カレンタはふっと一つ息を吐くと、皇子をゆっくりと見た。



「さて…クオン」
「はい、何でしょうか?」

「キョーコは…あなたにとても良い刺激を与えてくれていると聞いていますが…あなたはキョーコと学ぶ事をどのように思っているのです?」
「僕は… 」

皇子は一瞬迷った。自分の意思を伝えてもよいのだろうか?正直な気持ちを…伝えてもよいのだろうかと、躊躇ったから。

「キョーコは…いままで城に閉じこもっていた僕の世界を広げてくれました。キョーコは小さいけれど、もうどの国の文献も読むことが出来ます。草木の知識も広い。僕が…キョーコから学ぶことはとても多いのです。」
「では、このまま…一緒に学ぶ事を望みますか?」

皇后の真剣な眼差しにクオンは小さく頷いた。

「僕は………、僕はキョーコと共に学びたいと思います。」

その言葉に、皇后は ならば…と続けた。

「クオン…これからキョーコはあなたの学友として、そして城の女官見習いとしてこの城に置きます。けれど…キョーコに白魔女の血が流れている事は、できる限り秘密にしなければなりません……何故だか、わかりますか?」

強い瞳で語りかける皇后に、ぐっと手を握られ、クオンは同じように強い瞳で母を見た。

「分かっています。母上…」

そう答えるクオンに頷き、カレンタは続けた。

「そうね。あなたは…、あなたはこれから、国を背負っていくものとして、更に勉学に励まなくてはなりません。あなたがこの国に住むあらゆる種族のことを知り、あらゆる出来事を学ぶ。そのために、共に競い合い、高めあう相手が必要なのです。私は正直、もっと歳の近いものをあなたと共に学ばせるつもりでいました。けれど…キョーコは賢い。キョーコはきっとあなたにたくさんの知恵と勇気をもたらすでしょう。」

「……はい。」
「ですが、それはキョーコの持つ“白魔女の血”故のものです。そして、私たちは『水の民』。キョーコも我等も、お互いに人々に手放しで好かれる存在ではありません。」

「……はい。」
「今は…あなたが多くの民に認められることが必要なときです。そして、国のためにこの身を捧げることでしか、私たちは国と民に恩返しが出来ません。水の民であるわたくしたちは、多くのものを求めてはならないのです。」

“多くのものを求めてはならない…”
“水の民である我々の血…”

『水の民』である事を隠して生きて来たカレンタにとって、皇族に水の民の血が混じる事は有り得ないこと。
けれど、皇帝はそんな自分でもよいといった。
だが、周囲の反対を押し切って自分を后としたことで、貴族の反感を買い、一時の混乱を国にもたらしたのは記憶に新しい苦い思い。

しかし、もう二度と国を乱してはならない。
水の民の血が国を乱すことがあってはならないのだ。
国のため、国民の安寧のために我々は心血を注ぐ、それが『水の民』にできる唯一の償い…

それは…10歳の皇子にとって呪縛とも言える、母・カレンタの強い願いであった。






(続く)
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コメント

キョコの泣く姿が…
少しお久しぶりの感想ですが、読ませて頂いてはおりました。

キョコの泣く姿が、痛々しくてたまりませんね。(T_T)
たった一人の家族との突然の別れは辛いでしょうね。
母の代わりと手を差し伸べるカレンタの皇后としてやり遂げるべきことと、クオン皇子が遠くない未来に自らが背負うことを僅か10歳で覚悟するのは、半端なことではない重圧でしょう。

そしてキョコというクオンにとっての大切な存在が、カレンタの言葉で自分の気持ちとは大きく離れたところで、キョコに触れてはならないという扉をがっちり閉めてしまった感じで、クオン皇子の初恋は切なそうですね(T_T)
「いつまでも子供でいられない」時が来た時に、クオンもキョコも…切なそうですね(;´Д`)
本日、涙腺緩めなので余計に切ないわぁ(T_T)
  • 2018-04-28│01:20 |
  • 山崎由布子 URL│
  • [edit]
Re: キョコの泣く姿が…
> 山崎由布子 様

コメント、ありがとうございます。

クオン皇子の呪縛といいますか、心の枷といいますか・・・本当に的確にこれから起こる心の変化、彼自身の縛りを読んでくださってありがたい気持ちでいっぱいです。
子供ながらに国の責務に雁字搦めになったクオン皇子が表現できていたなら冥利に尽きますよ。
このあたりが、ぽてしゃんの設定の中でなるほど~と思い、表現を工夫した所です。
「いつまでも子供でいられない」時が来るんです!!まさに来るんです!!
うう~~、ありがとうございます。どうぞ続きも読んでやってください。
  • 2018-04-28│19:26 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
結末を知っているというか、自分で妄想しまくった話だけに、『こんなことをここで言うことでは不適切かもしれない』と、段々頭がこんがらかってきて、実はコメントしづらくなっていたぽてとです。


が!!

由布子様のコメントと、かばぷーしゃまの返しコメントを拝見して、どうしても出てきてしまったぽてとです(*/□\*)


由布子様のコメント、的にヒットし過ぎ!!文章書いたのはぽてとじゃないのに、嬉しい(*≧∀≦*)!!ヤッホイ!

かばぷーしゃまの文章表現、的確だもんねぇ〰すごいよねぇ〰(///ω///)♪

そして、『子供じゃなくなる時がくる』!!!なんて素敵な表現!!!ホームラーーーーーン!!もう一度言っとこ!ホームラーーーーーーーン!!!
  • 2018-05-05│15:51 |
  • ぽてとたべたい&ぽてとあげたい URL│
  • [edit]
Re: タイトルなし
> ぽてとたべたい&ぽてとあげたい 様

 そうなんです!山崎様も、まじーん様も、なんて的確に読み取ってくださるのでしょう!って言うくらいホームランなんです。
裏の裏をかくような文章表現はできませんので、ストレートに楽しんでいただけるといいのでしょうね。本当はちょっと位、裏切る文章とか、隠したいときもありますけど…じわじわと、ボディブローのように効いて来るといいですね。
 そういえば、完全投稿にあたり、読んで修正を加えておりましたが、イイ!これ…イイ!!!と自画自賛でございました。時間を置いて読んだら、本当にイイ!すぐにでも全話公開したい位です。現在、暗めの感じで進んでいるので、拍手が少なくてちょっと寂しい・・・(泣)けれど、挫けませんからね!コメント待ってま~す♪
 

  • 2018-05-05│18:46 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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