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夢現刻物語 6

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第6話をお届けします。
前のお話はこちら 序章     

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。













夢現刻物語 6 ~狼との出会い~





「クオンはどうしておる?」

数日後、皇帝はカレンタに問いかけた。

「キョーコと相変わらず一緒に過ごしております。」
「うむ。キョーコは気持ちを立て直したか。」
「はい。あれから涙も見せません…。女官見習いとして城で生活する事も受け入れました。下働きの仕事も覚えが早く、手際がすこぶる良いと女官たちが口々に申しております。」

「……ふむ、母の死を乗り越えるとは…稀に見る強い娘だ。ならばよい…。教えられておらずとも、キョーコは白き魔女の末裔。薬師としての母から、少なからず薬草についての知識を得ていたようだ。いずれそれも役に立つ日も来よう。」
「はい」

「ああ、そういえばサワラから進言を受けた。クオンの剣術の相手として、クロサキ領から一人、招き入れてはどうかと。」
「クロサキ領から?」
「ああ、とても腕の立つ少年がいるそうだ。もともとクロサキ領には優秀な武人が多いが、その子は『地の民』だそうだよ。年はクオンの3つ上だと聞いている。」
「はい、陛下の良きように」
「そうか、城下に出るのに大仰な護衛は不要だとクオンも言っていたようだし、サワラもすぐに二人の姿が見えなくなると困っていた。よほど二人は護衛を撒くのが上手いらしい。」

皇帝は楽しげに笑った。

「はい……申し訳ございません、陛下…。」

「カレンタ、なぜお前が謝る?」
「陛下がわたくしたちのために、多くの種族に寛大な処置を与えてくださっている事…申し訳なく存じます…」
「…カレンタ、そうではない。そなたが『水の民』である事は、わたしには禁忌でもなんでもないのだ。そなたを愛しいと思い、后に迎えただけのこと。そして、皇后として十分な教養も身につけ、政務に励んでいる…そなたは何も恥じることはない。」
「はい…」

皇帝は、皇后の頬を優しく撫でた

外遊の際、市場で偶然に出会った美しい『水の民』の娘、カレンタ
その美しい姿は、いまも変わらない。

古(いにしえ)より水と共に生きてきた『水の民』。水の力を操るこの民は同族同士の争いにより、たびたびその力を氾濫させ、他を省みない残酷さで人々を混乱に陥れてきた。
それにより得られたのは他の種族からの冷たい感情だった。忌み嫌われ、水の民だと分かると恐れられ、冷たくあしらわれ……先の大戦を共に闘うも、この地を追われて山脈に安住の地を求めた民…

何も望まぬ、何も持たぬと水の民である事を隠し、人目を避けるように暮らしてきたカレンタを見初め、攫うようにして帝都に連れ帰った。
カレンタを連れ帰った時、議会は酷く混乱し、貴族はこぞって反対の声をあげた。
その声を押し切ってカレンタを后に迎え入れたのは、皇帝である自分が貫いた唯一の我儘。

だが、それを悔いた事は一度もない。

慈悲深く聡明なカレンタは、誠心誠意、民と共にあろうと心がけた。謙虚に誠実に…涙ぐましいほどの努力であったに違いない。
そのカレンタが身篭り、クオンが誕生した時の民の喜びは皇帝の喜びであり、また、一人の男としての喜び。それを生涯忘れることはないだろう…

「この国は人だけで成り立っている国ではない。クオンは様々な種族とともに暮らすことが必要だ。さすれば多くを知り、多くの慈悲でこの国を導くであろう。そして、そなたにはそれを見守っていて欲しい。よいな、カレンタ。」
「陛下……」







「クロサキ領から参りました、ムラサメ・タイラと申します。」

黒々とした髪の少年は、とても気の強そうな目をしていた。

皇子より3つ年上なだけで、随分と大人びて見えた。
クロサキ領には卓越した武人が多く、皇族騎士団や近衛兵にもクロサキ領の出身が多い。その理由の一つに、地の民と人間との混血が進んでいるためであると聞く。
地の民は頑健な身体を持ち、概して力も強い。生命力溢れる大地から気をもらい、土と対話して生きてきた。人間との関わりがもっとも古く、互いに交流を深めてきた種族ともいえる。タイラも地の民との混血なのであろう。13歳の少年にしては、立派な体格をしていた

「皇子、執務の学習が終わったら、タイラと手合わせをしてみるといい。タイラはクロサキ領ではなかなかの腕前の剣士だそうだ。」
「お褒めに預かり、光栄です。」

タイラは恭しく皇帝に頭を下げた。

「では、頼んだぞ?」
「はい」

皇子の剣の相手役として、皇子の元にやって来た同世代の剣士
これから、馬も剣もタイラと供に競い合い、いずれタイラは近衛兵として皇子を守る立場となる。

「よろしく、タイラ」
「こちらこそ、クオン殿下。まずはそのなまっちろい身体を鍛えましょうか?」

もともと陽気な性格なのだろう。
にかっと白い歯を見せると、タイラは屈託のない笑顔を見せた。


皇子とキョーコとタイラ…
『水の民』と『白魔女』と『地の民』の彼らは、これからのヒズリ国を支えるという役割を担い、供に成長をすることになった。








「あ~あ…つまらないなぁ…」

キョーコは、砦の丘で眼下に見える城と町並みをボーっと眺めていた。

「最近、殿下はタイラとばっかり…」

午前中の学習の時間は、相変わらず一緒に学習を進め、キョーコとべったりなのだが、午後の時間は剣術や馬術、弓術の時間に当てる事が多くなった。皇子もそれを楽しんでいて、当然のようにお散歩の時間が削られるようになり、キョーコにはそれが不満だったようだ。
自分も一緒にやりたいといっても、タイラは「ちびすけにはまだ無理だね。座って見てな。」と、取り合ってくれない。

かといって、キョーコの本分は皇子の“勉強相手”だ。女官の仕事もまださほどあるわけでもなく、一人で丘に上っても、一人で花冠を作っても、一人でおやつを食べても………ちっとも楽しくなかった。

城に来るまでは、どれだけ長い時間を一人で過ごしても全く苦ではなかったのに…

「………つまんない…」

ぼそり…と呟いたとき、ふっ…とどこからかキョーコを呼ぶ声がした。

くるり…とあたりを見渡すが、何もいない。
けれども、どこからかキョーコを呼ぶ声がするのだ。
耳を澄まして、あたりの気配をうかがった。




―――見つけた!

西の湖畔に広がる森の中にその声の主がいる…
キョーコは好奇心も手伝って、その森に足を向けた。




森に一歩、足を踏み入れると、城の近くにある小さな森とは異なり、そこはまるで別世界だった。
生き物の呼吸だけしか響かない…静かな静寂が空間を支配し、この森の不気味さを物語っている。

微かに呼ぶ声に従って奥に進むほど、差し込む日の光が格段に少なく、うっそうと植物は生い茂り、湿った苔の匂いがあたり一面に漂ってくる。


「………」

「…どこ?」

「………」

横倒しになった木の向こうから、獣の鳴き声がわずかに聞こえる。

「ねえ…どうしたの?」

倒木の上から覗き込めば、小さな黒い塊が警戒した唸り声を上げ、キョーコを威嚇した。

「ねえ…大丈夫よ?怪我…したの?」

片足にツタの罠が絡まって、倒木の割れ目に引っかかっている。
ウサギ用の簡単な罠だが、焦ってしまったのだろう…そいつはツタを噛み切れず、逃げる途中で引っかかってしまったようだ。

「ああ、後ろ足を挟んだのね。いま取ってあげるから、大人しくしてて?」

キョーコに害意がないと分かったのだろう。ゆっくり手を差し伸べれば、唸りながらもその小さな黒い影は、それ以上抵抗しなかった。

「そ~っと、そ~っとするからね。」

優しく声をかけながら、キョーコはその影の主…小さな狼の後ろ足に手をかけた。


「グウウウウ~~~~!!」
「ごめん…そんなに怒らないで? お前、丘の上まで時々遊びに来てた子ね?もともと、森がお家なのかな…んしょ…、凄くきつかったね、…痛い?」

そんな風に話しかけながら、キョーコは狼に絡まったツタを外してやった。
外れた瞬間、小さな狼は駆け出し、岩の上で一瞬立ち止まって振り向いたかと思うと、すぐに岩の向こうに消えていった。


それが…キョーコとザメルザとの出会いであった。





(続く)
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コメント

この世界観
何とも言えないこの世界観が、すでに大好きです(≧▽≦)

種族の違う…それも忌み嫌われている種族のカレンタ皇后を慈しみ、皇后の役目を「よくやってくれている」と言える皇帝。
お互いの大切さが伝わってきました。

そして、クオン皇子に剣の相手が…印象からすると、あくまで私イメージですけど、ヨナちゃんの近所のおじさんの若かりし頃っぽい?
茶化すつもりではないのですが、笑い方があのおっさん、もとい将軍とダブりました。性格的にも似てそうで…。

そんな剣の使い手との鍛練は、クオン皇子には新しくやることとしては普通に見えますが、キョコが淋しいようにクオンは…と思ったら、キョコへの気持ちを育てない為に一歩引いたのでしょうね。
ちょろっと妄想を入れると、クオンも両親の苦労を知っているから…。

キョコのことを皇帝と皇后も、心配しているようで淋しい気持ちは……妄想が過ぎそうなので、ここでお口チャックします。
キョコの新たな出会いも、一つの引き金かな?

いつもですが、内容の濃い6話でした。次も楽しみです
  • 2018-05-05│01:58 |
  • 山崎由布子 URL│
  • [edit]
Re: この世界観
> 山崎由布子様

 この世界観が大好き、そして濃い内容といっていただけて嬉しいです。
お話の続き妄想が膨らみますか?様々な背景を織り込みつつお届けしておりますこのお話、どういう展開になるかは…まだまだ、明かせませんよ♪とりあえず、序章の内容に向けて、ただいま驀進中にございます。物語にどっぷりとつかっていただけると嬉しいです。
 暁のヨナは私、ハク様押しでございます!将軍、将軍…グンテさんかな?言われたら、ああ~!という感じでした。(違ってたら、ごめんなさい)ムラサメさんのイメージが最近曖昧になって来ていて、コミックスをまた読んで復習せねば!
コメント、ありがとうございました。
  • 2018-05-05│18:29 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
深いいお話♡
そうですね、ネットへの公開にあたり、かばぷーしゃまが手を加えたのはすごくよくわかります。いや〰元々いいお話だったのに、本当に『作品様々』という感じにおなりになられて〰(つд;)

すみません………拍手数は伸び悩みますよね……………やはり。ぽてとはそういう読者様の反応が怖くて、このお話を書かなかったわけで…ってのは、はじめの時に言いましたけど(*T^T)軽く読めるお話じゃないですからね……。御伽噺パラレルだから、先もよめないですし。

ぽてとは、このお話のそういうところに、強く魅力を感じているのですけどね…♡(〃´ω`〃)♡



>皇帝は、皇后の頬を優しく撫でた

ああん、何度読んでも萌え♡
ぽてと的に、皇帝とカレンタのロマンスも裏設定として大切なので、こうして情景深く文章におこしてもらえると、もう感動♡この二人の丁寧な描写が、深い味を出しているんですよねぇ(//∇//)

ザメルザ、印象深い登場ですね。もう既に、子供なキョーコちゃんと小さな狼の絵が、色々なものをこみ上げさせます(*T^T)
  • 2018-05-05│21:00 |
  • ぽてとたべたい&ぽてとあげたい URL│
  • [edit]
Re: 深いいお話♡
> ぽてとたべたい&ぽてとあげたい 様

> 本当に『作品様々』という感じにおなりに…

ほんとっ!?
やった!!
超・嬉しい!真剣に嬉しい!

このお話は、ぽてしゃんの世界観を表現することがやはり第一の目標なのです。書きたい!書かせて欲しい!!そう思って、原作下さいってお願いしたので、本当でいい加減なものではなく『作品』にしたかったのです。
ですから、拍手が欲しいとは言いながらも、作品としてどうか?という点が私にとっては一番重要。
私も、凄くこのお話に魅力を感じているのは、蓮キョでありながらも、ある意味、別のストーリーを楽しむ作品であるという事です。

ああ、何か悩んでいた事が噓みたいに晴れました。
自信をもって突き進みます。
応援、よろしくお願いします!
  • 2018-05-05│21:23 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
No title
私もハクが一押しです!(最初がそれか?)
はい、将軍はグンテ様です(水のお嬢さんの思い人)

村雨君のことは、多分、絶対私の方が記憶が希薄になってます。
暴走族うんちゃら以外は、顔が思い出せない感じかも~(^▽^;)
そのせいか、彼がお話にゲスト出演もしない我が家の話。
でも忘れたと言ったら、「この俺を忘れるとは…(にやっ)」ってきそうなので、私もコミック復讐じゃなくて、復習して思い出しまっす!
そう言えば、今月コミック出るんだった。

記憶のもうろく度が増してる人でした<(_ _)>
Re: No title
> 山崎由布子様

蓮様とハク様の共通点……胸筋♡♡♡(←変態)
でも、花ゆめコミックスはスキビだけなのです♪愛が溢れすぎですかね♪
どんだけ好きなの!?と娘に突っ込まれても、姉に呆れられようとも、好き♪

うふ♪コミックス発売♡

  • 2018-05-07│19:06 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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