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夢現刻物語 7

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第7話をお届けします。
前のお話はこちら 序章      

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。












夢現刻物語 7  ~小さな嫉妬~





「キョーコ!どこに行ったかと思って探した!」

キョーコがぼんやりと森のはずれを歩いていると、馬のひづめの音と供に、皇子の声が聞こえた。

「殿下!」

「おいおい、ちびすけ。クオン皇子がお前が砦の丘にいないって、慌ててお前のことを探し回ってたぞ。いったいどこまで行ってんだ?…もしかして、西の森に入ってたのか?」
「ちびすけじゃないです!キョーコです!」
「おお、悪いな。ちびすけ…で、本当にこの森にいたのか?」
「むぅ~~~………この森にいました!ずっと奥ですけど…」
「キョーコ、本当に西の森の奥に行ってたの?」
「はい!」

その言葉を聞いて、皇子とタイラは顔を見合わせた。

「ちびすけ、悪いがここ…西の森は感心しないな。もともと、森の民は隠し事が好きだし…それに……見てみろ、ドワーフがやたらと騒がしくしてる。お前、何かやらかしたか?」
「何かやらかした…って、怪我した狼さんを助けてたんです!」
「狼!!??」

胸を張って答えるキョーコに、皇子は馬を下りて駆け寄った。

「キョーコ…森はだめだ。タイラが言うように、森は危険なんだ。もう来ちゃだめだよ?」
「でも!脚が罠にかかってて、凄く困ってたんです。小さな子供の狼なんです!だからきっと無意識に私を呼んで…」
「狼に…呼ばれた?」
「はい、助けてー…みたいに何となく」

皇子はふと、キョーコに流れる“白魔女の血”のことを思った。
もしかすると、今は無自覚でもその力を感じているのかもしれない、と。

「でも、呼ばれても森の奥はだめ。特に西の森は…タイラも言っただろう?この入り口の事を言っているのではないし、城に近い小川の森とも違う。西の森は今まで見たことのない生き物がいるというし、人を惑わせる森と言われて本当に危険なんだ。」
「う………ごめんなさい……」
「分かったならいいよ。さあ、帰ろう?」

皇子が馬に乗ろうとしたときだった。

「こら!ちびすけ、お前はこっちだ。」

「「え…なんで?」」

二人揃って馬に乗る気満々の声に、なんでじゃねえよ…と、タイラは大きな溜め息をついた。

「あのな?皇子はようやく馬に乗り始めたばかりだ。馬だって、皇子にまだ慣れてない。ちびすけを落っことしたりしたら、それこそ、俺が叱られんだろ?」
「でも、大丈夫じゃないかな…」
「あのなぁ!いきなりの初心者が人を乗せて大丈夫なわけないだろ!?じゃあ、あれだ!落馬した時、頭をしこたま打って、血がドバーっと出るとか、気を失って馬に踏まれるとか、そういうの想像してみ!ほれ!想像できるだろ?」

頭をしこたま打って…とか?
うん、自分は落馬する気はしないけれど、もしキョーコが落馬して、そんなことになったら…
確かに想像するだけで身震いする。

キョーコはキョーコで皇子が落馬して、きっと馬は自分のことは踏みつけないという自信があるが、皇子は…?皇子が馬に踏みつけられたりしたら…?それを想像するだけで、涙が出そうだ。もう二度と大事な人を亡くしたくない。

「ほら!すっごく困んだろ?嫌だろ?危ないだろ?俺だってやだよ!サワラ様に怒られるのも、皇帝陛下に叱られるのも…そうすりゃ家に戻されるか……やっべー、やっぱ親父が一番怖えや!」

皇子とキョーコは互いに顔を見合わせた。

「「………分かった……やめる。」」

しぶしぶ…と言った態で皇子は一人で馬に跨り、タイラはキョーコをよっこらせと馬に乗せた後、自分もひらりと馬に跨った。

確かに、まだ馬に慣れきっていない皇子の懐に乗るよりも、タイラの方が安心できるに違いない。いくら背が高いといえど、皇子はまだ10歳になったばかり。
皇子の胸の内にはもやもやとした何かが渦巻いていて、仮面の下では苦虫を噛み潰したようになっているに違いなかった。

「タイラ…怖い!」
「心配するな、落としやしないよ。ここをしっかり持って、馬が上手に歩いてくれますようにって、祈っておけ。」
「どこ持つの?」
「ここだ、ここ!ゆっくり歩くからな。」

初めて馬の背に跨ったキョーコは、その高さに驚いた。
そして、鞍におっかなびっくり座るキョーコと、後ろで支えるタイラの姿に、皇子の心臓は震えた…

まだ自分は子供なのだ…感情を御す事も出来ず、仮面でなくては苛立ちを隠すことさえ出来ない。
そして、キョーコを馬にのせるあの場所にいるのが自分ではないという現実。

なんて…なんて自分は無力なのだろうと……
早く、大人になりたい。
力が欲しい、小さなキョーコを守れるだけの力が欲しいと…


―――初めて思った…









城に向かって歩き出した二頭の馬
森の中からひっそりと、小さな人影を見つめる眼があった

(あれは……間違いなく白魔女の血……なぜ、お前がそこにいる?どうしてそこで笑っているのだ?)

小さな狼が仄暗い眼をして三人と二頭を見送る

(そして、側にいるのはヒズリの皇子?…憎きヒズリの者が魔女をかくまうのか…!)

狼の眼は赤く萌えるように、らんらんと光っている。

(憎い…憎い………憎い、憎い、憎い、憎い!!!!)

狼の姿を通して滲み出る憎悪と復讐の念に駆られたザメルザの念は、ざわざわと周囲の木々を波立たせ、森全体が邪悪の気を帯びていく。
その憎しみのオーラは、周囲の生き物を恐怖に落としこむ…

生き物たちは恐れ戦き、いっせいに騒ぎ始めた。



(滅びよ…ヒズリよ滅びよ…我が子の恨みを…我が一族の恨みを…受け取るがいい!!)


森の民もドワーフたちも嵐の予感に小さく身を震わせるばかりで、何も出来なかった。





(続く)

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コメント

コメント(6)
いずれはヤッシー登場
こんばんは、かばぷーさま。
ムラサメへの嫉妬、10歳の子供にはちょっときついかな?けれど、これから最大の《馬の骨?》ヤッシーが登場するんですよね?
実はぽてとさんの原案を拝読した時から、気になって仕方なかったのです。何時になるのかドキドキして待ってます。

GREEN

2018/05/11 21:14 URL 編集返信
かばぷー
Re: いずれはヤッシー登場
> GREEN 様

10歳の皇子がムラサメに抱く嫉妬は、年齢や技術に対するもどかしさが7割くらいあるかもしれませんね。もちろん、相手がキョコさんでなければ、そんなこと思いもしないのでしょう。頼っている相手が自分以外…と思うのも、皇子にとっては苦しいところ。
そして、これから最大の馬の骨となる(?)ヤッシーが登場します!
物語の主要人物で、まだ登場していないのは、彼だけですね。(うふふふ)
長い長い子供時代のお話ですが、お付き合いくださいまして、ありがとうございます。


かばぷー

2018/05/12 08:29 URL 編集返信
萌えじゃ!
あ〰微笑ましい、あ〰微笑ましい、あ〰、なんって、なんて微笑ましいのでしょう!!幼い頃のキョーコとクオン皇子とタイラのやり取り!!萌えじゃ!これぞ、萌えじゃ!!

それに、このしっかりとした土台の幼少期があるからこそ、今後の大人になった二人の切なさに繋がるんですよね〰いやーん、切ないの好き
ー♡(*≧∀≦*)♡


ザメルザ。

きっと、万が一にもこのコメントを読まれた方には絶対に理解できないかもしれないですけど、ぽてとにとっては、本当に大切なキャラクターなんです。かばぷーしゃまには、ぽてとの妄想を文章化してもらって、壮絶に感動したんですけど、その中でも、ザメルザについては、かばぷーしゃまに書いてもらってよかったと心底!心底!心底!思ったんですよ。こんなことになるなんて(感涙の滝!)って感じですね。

これからも楽しみです〰( 〃▽〃)

ぽてとたべたい&ぽてとあげたい

2018/05/12 21:16 URL 編集返信
かばぷー
Re: 萌えじゃ!
> ぽてとたべたい&ぽてとあげたい 様

> 萌えじゃ!これぞ、萌えじゃ!!

ぽてしゃんお得意の「ねじれ拗れ」と「すれ違い」の切なさは、背景あってのもの。
今回の幼少期の長いお話は、やはり大切な伏線というかお話の背骨となる背景ですからね、お話の起承転結から考えても、絶対に外せませんでした。
少年皇子に萌えが過ぎて少々長すぎた感も否めませんが、映画の1/3が終わったくらいという事で…
さて、次は一気に5年後ですね♪いよいよ、少年皇子の仮面を外します。

そして、ザメルザ
黒の魔女、ザメルザは、私にとっても大切なキャラですよ。
皆様にもお楽しみいただきたいですね。
今回も熱烈コメントを下さり、ありがとうございました。

かばぷー

2018/05/13 08:36 URL 編集返信
はもってる( *´艸`)
クオンとキョコ。
いつも一緒だったから、クオンは心配したんですね。

そして一緒の馬に乗ろうとして、ハモる二人の仲の良さが、可愛すぎです( *´艸`)
でもって、タイラにクオンもまだ慣れてないからと言われて、自分じゃなくお互いのケガを想像して止めるって、これもハモってて、可愛すぎます。(#^.^#)(頭の中で声が聞こえてるから♪)

でも同時にクオンは、まだキョコ1人守れないと思いつつ、ジェラシーもありますよね。頑張れクオン皇子って応援したくなります。

森の奥にはなんか居そうですが、キョコの助けたオオカミ以外もいそうですね。ドキドキ、秘密の森?何が出てくるのかな?

山崎由布子

2018/05/13 18:21 URL 編集返信
かばぷー
Re: はもってる( *´艸`)
> 山崎由布子様

こんばんは お返事が遅くなりました。

> いつも一緒だったから、クオンは心配したんですね。
そうなんです。今回の二人…皇子が剣の鍛錬をしていても、きっといつもなら女官の手伝いをしたり、勉強したり…城にはいなくとも、砦の丘にならいるだろうと思ったら、いなくて慌てたんでしょうね。
微笑ましい限りでございますよ。

そして、自分でなく互いの不幸を想像するあたり…もう、可愛いわぁ~~!!
皇子のジェラシーもまだこの頃は可愛いですね。特別な存在としての認識が完了しました。
まだ皇子はこの感情の正体を知りません。少しずつ…少しずつ、呪縛がボディーブローのように効いて来るのです。

どうぞお楽しみくださいね。

かばぷー

2018/05/14 20:56 URL 編集返信
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