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夢現刻物語 9

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第9話をお届けします。
前のお話はこちら 序章        

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。












夢現刻物語 9 ~ほのかな恋心~




秘書官見習いのヤシロは、アサミが見込んだだけのことはあって、非常に優秀な人材であった。覚えが早く処理が的確であっただけではない。人柄も穏やかで、優しい笑みを浮かべながら交渉ごとを進める能力に長けていたのだ。
その仕事ぶりに皇子はもとより秘書官長のアサミは感心し、皇帝に秘書官への正式な登用を進言し、異例の早さで皇子の専任秘書官に就いた。

「ヤシロ、明日の予定はどうなっている?」
「はい、明日から3日間、オガタ領への視察が入っております。既にムラサメも準備に入っております。あちらでの行程はこのように計画をしておりますが…」
「どれ……?分かった。そのように進めよう。同行も頼めますか?」
「勿論です。殿下…頼めますか?ではなく、頼めるか?もしくは同行せよ。と仰ってください。成人の儀をお済ませになったのですから、官吏への威信も必要ですので。」
「分かった…ありがとう。」

ヤシロはにこやかに、しかしながら確実に皇子の立場を高めていくことに専念した。
これにより、各領地でも皇子への信頼も高まり、諸外国への外遊も増えたのだった。







「おいで」

キョーコは森の入り口で、狼を呼んだ。
ざわざわと森がさざめくような音を立てていたと思ったら、しばらくして、赤い眼の狼が姿を見せ、周囲を警戒しながらキョーコに歩み寄った。

「よしよし…随分と久しぶりね?元気だった?」

キョーコが狼の頭をなでると、狼は慣れたようにキョーコの手に頭をこすりつけた。

「今日はね、おやつがあるのよ?食べる?」

そういいながら、キョーコは狼の前に切れ端のチキンを挟んだパンを出してやり、狼は匂いをふんふんと嗅いだ後、もそもそと口にした。
食べ終わった後、ありがとうとでも言うようにキョーコの手を舐め、側に座る…
あのとき助けた小さな狼は、いまやもう大きな狼へと成長していた。

あれから、しばらく森に近づかなかったキョーコだったが、狼が小さく呼んでいる声が聞こえると、何度かに一度は呼びかけに呼応したように森に近づくようになっていた。
はじめは警戒していたであろう狼は、だんだんと距離をつめ、いつの間にか側に近づくようになった。


「ねえ、お前…いつも黙って私の話を聞いてくれるのね。」

耳の付近を撫でると、気持ち良さそうに眼を細める。

「ふふふふ…皇子とタイラは森に行っちゃだめって言うけれど、森は不思議がいっぱいだから好きよ。」

狼は、キョーコに撫でられるまま、頭を預けた。

「あのね、聞いて?この前、皇子が成人の儀を迎えたの。いつも皇子は仮面をかぶってたんだけど、初めて……初めて、仮面をとったの。そしたら、どうだったと思う?」


狼はさも興味無さそうな赤い眼をしてキョーコを見た。

「凄く……綺麗だった…」
「…」

「前にね、皇子は何で仮面をかぶってるの?って聞いたことがあったの。そしたら、皇子はこう言ったの。自分の負の表情が表に出ないようになるまで、成人の日までは付ける決まりなんだ…って。皇族って、不便なのね。」
「…」
「だけど…外したあと、にこっと笑ってくれて…凄く綺麗過ぎて、吃驚しちゃった……」

キョーコはぼう…っと皇子の姿を思い出していた。
初めて皇子と出会ったとき、凄くきれいな皇子様だと思った。
でも、その時は仮面をつけていて、表情までは分からなかった。
けれど…

成人の儀に見た皇子の姿は、どんなおとぎ話の挿絵の王子様よりも素敵で
帝都のどこでも見かけたことがないほどに美しくて…
息をのむような綺麗な顔立ちに見惚れてしまっていた。


あれから、成人の儀を境に、皇子の勉強の時間が武術の時間へ…そして、執務の時間へと変化していく中、キョーコも執務の勉強を共にしてはいても、どうしてもすべてのことに関わることはできなかった。
空いた時間は女官の真似事をしたり、厨房に下りて調理の腕を磨いたりもした。そのおかげで、針仕事も今では皇后に刺繍を頼まれるほどに上達もしたし、キョーコの淹れるお茶と、手作りの菓子は城の中でも重宝される。
…けれども、わずか11歳のキョーコは、どんなにたくさんのことが出来たとしてもまだ子供なのだ。皇子の勉強相手であることがキョーコの主たる役割であり、城内の使用人たちもそのようにキョーコを扱う。城の中では皇后もシナノもまるで娘のようにキョーコを大切に扱ってくれている…

けれども、何かが満たされなくて、結局、皇子がいない時間を持て余したキョーコは、時折森に出かけた。

そうして、寂しい時間を埋めるべく得た友がこの狼だったのだ。

決して多くは語らぬ生き物
けれども、キョーコはその狼にはどんなに不安なことも素直に話すことができたし、どんなに恥ずかしい事も己の醜い感情も話すことが出来たのだ。

返事をくれるわけではない。
ましてや、慰めてくれるわけでもない。

だが、狼の赤い眼を見ていたら、なぜだか様々な心の内をすべてさらけ出してしまうのだった。








「ただいま帰った。」

その声に、キョーコは弾かれたように飛び上がった。

「おかえりなさいませ!」

オガタ領での外遊を終えた皇子が、執務室に姿を見せたのだ。
たった数日顔を見なかっただけで、随分と皇子は大人びたように見える。

そう、どんどん大人びていくのだ。
キョーコはキラキラと輝く皇子が眩しかった。
そして、皇子が真っ先に自分のところに来てくれたのが嬉しくて、声が弾んだ。

「殿下!オガタ領はどうでしたか?」
「うん、とても気候が穏やかな土地だった。今度、灌漑施設を新たに造って、更に小麦の収量を増やす計画だそうだよ。キョーコは?どんな風に過ごしてた?」

「んーーーっと、いつもどおりです。勉強して…あとはいろいろと!」
「そう、オガタ領の話は父上と母上にも報告するから、その時に一緒にいるといい。勉強になるから。」

「本当に!?あ……でも、いいのですか?」
「勿論だよ。たまにはキョーコもいた方が、父上も母上も喜ぶよ。ヤシロはどう思う?」
「大変、喜ばれるかと存じます」
「ね?」

キョーコはくすぐったかった。
母をなくしてからもずっと、変わらず城に置いてくれている皇帝と皇后。
実の娘でも、皇族の一員でもないのに皇后はキョーコを大切に扱ってくれる。
そして、小さい頃から妹のように可愛がってくれる皇子…

たとえそれが、本当に妹としか見てくれないのだとしても、キョーコは皇子の側にいることが…側にいられることだけが、嬉しかったのだから。





(続く)


15歳と11歳…初々しいの♪
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  • 2018-05-26│15:37 |
  • [edit]
Re: タイトルなし
> GREEN様

コメント、ありがとうございます。
序章での極悪魔女ぶりが酷いザメルザですが、ここに来て、落差に驚かれた方もいるかもしれません。でも、擦り寄っている間に結構ひどい事をしているんですけどね。(まあ、それは置いといて…)
でも、GREEN様のご推察どおりです。いずれ、それは明らかになるのですが、今はまだ、明かせないのでございます。
別の意味でのじれったさを呼び起こしてしまいましたね、しっかり読んでいただけて本当に嬉しいです。


  • 2018-05-26│18:02 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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