夢現刻物語 11

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第11話をお届けします。
前のお話はこちら 序章          10

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。












夢現刻物語 11 ~皇子の葛藤~





「…………殿下……クオン殿下?」

「あ……ごめん、聞いてなかった。」

名前を呼ばれて、はっと気付く。
それが今日何度目かになる事を。

「お疲れでございますね。来月の視察のことについて説明をさせていただいておりましたが…今日は無理なようです。またこの話は明日に致しましょうか?」

ヤシロの溢した小さな溜め息。
それが今日はやけに癇に障った。だが、表面上は顔に出したりはしないし、出来ない。
皇子は大きく深呼吸をして、息を整えた。

「ヤシロ、すまないが視察の話は明日聞くことにする。今日はこれで執務を終わってよいか?」
「ええ、急ぎの用件は処理が済んでおりますので構いません。」
「分かった。」

さして気にしていない様子に、少しだけ安堵した。

「……ところでキョーコは?」

「キョーコ殿…でございますか?」
「そう。どこにいるのだろう?」
「キョーコ殿は今、魔法学校に行っておいでです。」

思いもしなかった言葉に、皇子は問い返した。

「魔法学校?なぜ!」

あまりに怒気が混じっていたのだろう。ヤシロは柔らかい笑みを浮かべると、静かに答えた。

「キョーコ殿は、此度、魔法学校できちんと医術・薬術を学びたいと希望され、皇后様の推挙の元で、魔法学校の編入試験を受けておられる最中でございます。」
「でも、キョーコはまだ…!」
「左様にございます。15歳になった者が試験を受けて入校を認められるのが、この帝国の魔法学校、司法・行政大学です。ですが、キョーコ殿はクオン皇子のご学友として既に多くの事を学んでおられます。殿下が政務に出かけられている間だけでも、学ぶことは出来ないか…と相談を受けたものですから、それならば、と私が皇帝陛下に相談を致しました。」

「ヤシロが…相談を受けたのか?」
「はい、僭越ではございましたが…」

チリッと皇子の胸が痛んだ。

「では、キョーコはこれから私の側でなく、魔法学校で学ぶという事か?」

ああ…ご心配なく。とヤシロは付け加えた。

「キョーコ殿は殿下と共に学ぶ事をそれは楽しみにしておいでですよ。けれど、殿下は成人をなさって政務にお忙しい御身。これからはヒズリ国内だけでなく諸外国とも外交を重ねていかれねばなりません。それゆえ…一生懸命考えたのでしょうね。一人でいる時間をどのように有意義に過ごすのがよいか。学友の名に恥じぬよう、皇子の力になれることとは一体何であるのかについて。」

事実、寂しかったでしょうから…とヤシロは、優しく皇子を見た。

「間もなく、こちらに帰ってくるでしょう。おそらくいい知らせを持って戻ると思いますよ。」

何事もなかったように、執務室を出て行ったヤシロ。
皇子はいたたまれなくなって、外へ出た。





見上げれば空は青く、どこまでも平和な空が広がる。
帝都を流れる空気は穏やかで、優しい。

自分が所領を外遊している間、キョーコはなにを考え、何をしていたのだろう?事実、自分だってキョーコがいなければこんなに手持ち無沙汰で、何をしようかと考えてしまう。

先日…渡そうとして渡せなかった焼き菓子は、結局女官に不思議がられたまま、処分してしまった。

砦の丘に辿り着いた皇子は、久しぶりに草原に寝転がり、目を閉じた。







「でーんーか?」

少し眠っていたのかもしれない。急に視界が暗くなったかと思うと聞こえた声。
楽しげなその声の主は、眼を開けなくとも分かる。…が、すぐに返事をするのも癪なので、無視を決め込んだ。

「あれ?…聞こえなかったのかな…でーんーか?」



「…………」

「む?」

今どんな表情をしているかさえも、想像できる。

「やっぱり寝てるのかな…よいしょ……」

ファサリ…と横に座る気配がして、風が変わった。

ただ側に…側にいるだけで安らぐ存在がここにいる。小さな頃からただ一人、自分の側で笑っていた少女が、自分にとってかけがえのない存在になっているのだと気がついたのはいつだったのだろうか…?

…けれど、その気持ちに気付かない振りをして、ずっと蓋をしてきた。
なぜなら、ヒズリ帝国の皇子である自分は、キョーコを望んではいけないのだ。

帝国を統べる皇帝としてあるべき未来を約束された自分は、民に望まれる皇帝としてあらねばならない。それは、キョーコを…白の魔女の末裔であるキョーコをこの手に抱くことはできないのだということを意味する。

ならば…、どうしてもキョーコと離れられないならば、ヤシロの言うように、魔法学校でしかるべき術を学び、魔女として恐れられぬよう技を磨かせ、官吏として側に置くしかないのだ。
もしそうでなければ…キョーコがこれから作り上げる交友関係の中から、将来困ることのない男に嫁いでいくのを黙って見ていることしか出来ない。

……それが、できるのか?

まだ幼いキョーコだが、いずれ誰かに恋をして、その瞳が誰かを見つめて、…キョーコが別の男とともに歩む未来を……

本当に祝福できるのだろうか?


…黙って見ていることが、本当に……?







その時、ふわり…と、渦を巻いていた感情が途切れた。

不意に額に乗せられたキョーコの手のひらの温もり…

「ん…熱はないですね…ふふ……コーンの髪…サラサラ……」

城の外でだけ許された自分の名を呼ぶ声
そのまま滑るように髪を撫でるキョーコの手
その手の温もりに、とぐろを巻いていたどす黒い感情が薄れていく…

「あのね、コーン…私、魔法学校に行くことになったの。黙っててごめんね?でもね、コーンの役に立とうと思ったの……。いっぱい、いっぱい勉強してアサミ様みたいにお城に勤めるの。偉い薬師になって、ずっとコーンの側にいるからね……」


そう…まだ、手遅れだと決まったわけではない。
キョーコはまだ11歳
あどけない姿で、まだここにいる。
自分を信頼し、頼ってくれる唯一無二の愛しい存在の幸せを願うのは、自分も同じだ。

やがてうつらうつらと舟を漕ぎ始めたキョーコの気配を感じ、皇子はそ知らぬ振りをしてその寝顔を眺めていた。







(続く)


あかん…ほっぺが…



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