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夢現刻物語 12

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第12話をお届けします。
前のお話はこちら 序章          10 11

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。


2018.6.17 一部修正












ある日の事だった。

「ヤシロ、最近領内だけにとどまらず、他国の使者との謁見が多いが……陛下のご意向なのだろうか?」
「ええ、そうでございます。」
「そうか、随分と来客が多いように思う。これでは、剣の鍛錬の時間が取れない。」

そういう皇子の顔を見て、ヤシロは困ったように眉根を寄せた。

「殿下…大変言いにくいことでございますが、陛下はそろそろ殿下の婚礼の事を考えておいでのようです。」
「………婚礼?」
「今日予定されている、マツシマ領主のご息女との謁見、来週予定されているオガタ領主の妹君との謁見も……その意図が含まれていると推察いたします…」

「私は聞いていない。」
「申し訳ございません。今はまだ、そのご意思は殿下にはなかろうかと思い、あえて伏せておりました。」
「あえて伏せていた…か。分かった、父上にも皇帝としてのご意思があろう。直接聞くことにする。」
「申し訳ございません。」

16歳になった皇子は、より逞しく、そしてより美しく成長をしていた。




夢現刻物語 12  ~16歳の密やかな欲望~





「父上、伺いたい事があるのですが、今よろしいですか?」
「何だ?申してみよ。」
「此度の謁見の数の多さについてです。すべて私が対応せずともよいと思うのですが…」

ふむ…と皇帝は一つ唸って続けた。

「クオン、成人の儀を迎えて1年が経った。そろそろ、跡継ぎの事を考えてもよかろう。」
「まだ、その気はありません。」
「そう言うでない。世継ぎを作るのも国を治めるものの務め。正妻はまだおらずとも、気持ちが揺らぐ女人の一人や二人はおるであろう?」

「今は………まだ……」
「おらぬのか?それでは困るのだよ。」
「…………」

何も言い返すことは出来なかった。
皇帝の述べる理屈は分かる。
各国の王を見ても歴史の文献を見ても、成人と共に妻を娶り、正妻とする場合が多いことが明らかに見て取れる。

だが…皇帝の言うような自分の心を揺らす女人など、たった一人しかいない。
そして、それはまだ12歳になったばかりの自分が結婚を望んではいけない人物。
口に出していいはずもなければ、彼女を差し置いて他の人間を妻にすることなど…考えたこともなかった。

「……もっとも…私も強くは言えないのだがね…」

皇帝は珍しく言葉を濁した。

「これだけは言っておこう。私はカレンタに出会うまで、妻にしたいと思う人間はただ一人としていなかった。だから、長老方の要求もかなり激しく…当時の秘書官に随分とやきもきさせたのは間違いない。だが、世継ぎを残さねばと思う気持ちがなかった訳ではない。巡り合わせ…というものであろうな。謁見も視察も一つの機会だと思えばよい。そなたが誰を選ぶかに関して、無理を強いたりはせぬ。」

「……分かりました。」




皇子は皇帝の執務室から真っ直ぐに伸びる廊下を歩きながら、ぼんやりと窓の外に見える小高い砦の丘を眺めた。続いて、その真反対に位置する大学と魔法学校を見やり、小さく溜め息をつく。

魔法学校に時折出向くようになったキョーコは、小さいながらもめきめきとその頭角を現していると聞く。
その情報がキョーコ自身からでなく、ヤシロやムラサメ、他の者達から得られることを、皇子は内心疎ましく思いながらも、小さなキョーコが己の執務中に勉学に励んでいると聞くのは、心地よかった。

溜め息をまた一つついて、皇子は会議室の扉を開けた。







マツシマ領主の令嬢との謁見は、至極ありきたりでつまらないものだった。
14歳だという割にはマツシマ領内の様子にも疎く、会話も長くは続かなかった。
綺麗に着飾り、良く手入れされた爪
随分とよい暮らしをしているのだろうと、感心したのはそれくらいだ。

きっと、草原で転げまわって草を摘んだりしたこともないのだろうし、一心不乱に書物を読み漁ることもない。菓子を焼くためにかまどで火傷など負ったこともないのだろうと思って、酷く誰かと比べている自分に気がついた。

(重症だな…)

器量よしだという令嬢よりも、意志の強い瞳を持った少女に心動かされる。
たおやかな立ち居振る舞いよりも、少々おてんばで野山を駆け回る少女に見惚れる。

もう、どうしようもないのだと皇子の自覚だけが進んでいった。



「殿下、お疲れになったでしょう。もうお休みになられますか?」
「いや、今日は一つ眼を通さねばならぬ書類があるので、執務室に戻る。」
「はい、タカラダ領の玉の件ですね。」
「そう。ローリィ卿にも困ったものだ。」
「良質すぎて、買い手がない玉について…ですか?」
「確かに、良質すぎる玉は、買い手がないのだけれどね。」

小さな笑いを浮かべながら、執務室の扉を開けた。
するとそこに…

「おや…キョーコ殿が待っておられたのですね。」
「そのようだな、一体いつから…」

執務室にある皇子の向かいに設置されたヤシロの机の上で、何かを書き写していたのだろう…紙にはミミズがのたくったような文字が並び、その上でスースーと寝息を立てていた。

「これは……読めませんね。」
「うん、読めないね。」
「ふふ…随分とお疲れだったのでございましょうね。」

きっと、皇子に話したいことでもあったのだろう。
待ちきれずに眠ってしまったようで、ヤシロの言わんとすることはすぐに分かった。

魔法学校では、キョーコは皇子の学友というだけで特別扱いをされるのを好まなかったし、また、遠巻きに見る年上の学生とは一線を画していた。

司法・行政大学や魔法学校に入学するものの多くは男性だ。
アサミのように結婚もせず、官吏として働くものはごくわずかで、この国の女性は15歳になれば、ほとんどの婚姻が決まり、若くして嫁いでいく。

資産家で裕福な家の子息や、学業に自信を持つあまり、変にプライドが高い男ばかりの学校では、女性であるというだけで相当の覚悟を持って勉学に励まなくてはならない。ましてキョーコは12歳、酷く辛い思いもしているのかもしれない。

「部屋にお連れしましょうか?それとも、起こしますか?」
「いや、起こすには忍びない。私が部屋まで連れて行こう。」
「よろしいのですか?」
「ああ、心配ない。ヤシロは先に戻っていい。」
「御意」

ヤシロはとうに自分の背を超え、軽々とキョーコを抱え上げる若者の背中を見た。
成人の儀で仮面を外した時には、もう既に上手く表情を隠すことに慣れていた皇子。
その麗しい外見とは裏腹に、勉学を愛し、鍛錬を厭わず、国民のために労を惜しまない真面目な性格の持ち主の彼が……唯一、青年らしく柔らかい表情を浮かべる人物

“モガミ・キョーコ”

だがおそらく、皇子はその感情を押しとどめているに違いなかった。
言葉の端々から感じられる、ヒズリ帝国皇子としての自覚。皇子としてあるべき姿に雁字搦めとなって動く事すらできぬのだろう。

ヤシロは随分と前にそれに気がついていた。なぜなら、その相手が他ならぬキョーコなのだから………。





ぎしり…と女官部屋の硬いベッドの音がした。

ベッドに寝かせると、キョーコはむにゃむにゃ…と身を捩った。
ブランケットを肩まで上げ、髪の毛を整える。
ふと気付くと左の頬には薄らとインクのしみがついていて、皇子はクスリと笑うとインクのしみを指先で撫でた。

「んー……コ……ォン」

自分に何かを報告している夢でも見ているのだろうか?

すぅすぅと安心しきった寝息
伏せられた長い睫毛も、頬のインクも、柔らかそうなピンクの唇も何もかもが愛おしくて

―――思わず唇を寄せた



「ん……」

その声にハッと皇子は我に返った。

(今…俺は、何を………!)

皇子は口元を覆うと、女官部屋をあわてて出た。
心臓が早鐘のように打ち、自然と脚が早くなる。


(俺は何をしたのだ。キョーコに無断で………何を、した?)


その夜、皇子は己の内にある欲望をはっきりと自覚したのだった。






(続く)
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非公開コメント

戸惑うクオン皇子に、♡

16歳の皇子……………うひゃっ( ゜ρ゜ )ぽてとは元来、十代の男の子には興味は無いのですが、「より逞しく、そしてより美しく成長をした16歳のクオン皇子」には会いたい……………というか、近くで見たい、嗅ぎたい(笑)成長しきった、敦賀蓮さんもいいけど、そのくらいのお年頃の、ノーブルな雰囲気のクオン君もいいにゃは……………♡




ちなみに、ぽてとはブレずにこういう表現が大好きです(///ω///)♪

『その夜、皇子は己の内にある欲望をはっきりと自覚したのだった。』というのんがぁ〰好きさあ〰(*≧∀≦*)


でも、あれもこれもそれも萌えを感じるのは、かばぷーしゃまが丁寧にお話を作り込んでくれているからこそ!細部の細部まで、全部全部尊敬です(*´-`)
今回のお話も映画みたいで、とても満腹になりました(*^^*)

Re: 戸惑うクオン皇子に、♡

> ぽてとたべたい&ぽてとあげたい 様

コメント、ありがとうございます。
今回のお話は、個人的にメチャ萌えです。

欲望を押さえきれなくなってしまった皇子が、思わず・・・って言うのに、(一人)萌えてるんです。

よそ様のお嬢さんと比べてしまう皇子にも、勝手に萌え。
雁字搦めな皇子に、これまた萌え。
欲望を自覚した皇子に萌え。

どんだけ若年皇子に萌えるんじゃ!?って感じー。

でも、16歳でヤシロさんの背は超えていますからね。もうそろそろ大人扱いでもよろしいのでは?と思っています。
むふふふ・・・大人扱い・・・

ああ、ネタバレしたい。
次回もよろしくお願いします!!
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