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夢現刻物語 14

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第14話をお届けします。
前のお話はこちら 序章          10 11 12 13 

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。










夢現刻物語 14~黒の魔女~






(ほう……この白魔女は、全く力が目覚めさせてはおらぬのか……)

砦の丘で小さなキョーコをはじめて見たとき、すぐに分かった。
“白い魔女の血”の持ち主であると
だが、それはまだ開放されていない事もはっきりと分かった。

もしやと思って呼びかけてみれば、たどたどしく呼応する。
やはり、力が目覚めていないといえど、その奥に秘めた“血”は本物であるらしい。

狼の眼(まなこ)で見ていたザメルザは、じっとキョーコを観察した。

白魔女の血を持ちながら、血を使うことなくヒズリの城でぬくぬくと暮らしている小さな娘。何代も代替わりをしてきたであろうに、一向に衰えぬそれは間違いなく元は同じもの。
黒と白と…元は同じはずであったものがそこにあり、過去の歴史を知らず幸せそうに微笑んでいるなど、笑止千万

ザメルザは冷たい瞳でキョーコを見つめた。




先の大戦の折、ザメルザの母は黒魔女を率いる魔女王の10人の僕(しもべ)の一人だった。
多くの国々に黒魔女を送り込み、呪術をもって国を影で支配するのは、必然ともいえる黒魔法の法則。魔女王に忠誠を誓うザメルザの母もその強力な魔力をもって、辺境の国を支配していた。

かつて、マギーアの魔女は白魔法も黒魔法も扱っていた。
二つの魔法はもともと同じルーツをもち、同じ薬草を使う。けれども、黒い魔法は人々の恨みやつらみ…怨嗟から力を生み出し、人を呪い、恐怖に陥れる。だから、戦乱の世の裏には、必ずといっていいほど黒の魔法が共にあったといっていい。だが、その特性上、戦に利用されるだけ利用され、都合が悪くなれば切り捨てられた。それに対し、白い魔法はいつの世も黒い魔法を封じ込め、人々を癒すために用いられた。

…表裏一体のものだった筈なのに…二つの魔法は完全に袂を分けた。

いつの頃からか虐げられ、必要以上に恐れられるようになった黒魔法
黒魔女たちが己等のプライドのために、人の心に蠢く欲望を叶えるために国を操って何が悪いのだ?
黒魔法が悪しきものであると誰が決めたのだ?
誰しも心に欲望や嫉妬、羨望や恨みを潜ませているではないか!
その証拠に、人々の世に裏切りはなくならず、あちこちで戦争をしているではないか!


けれど、時代は黒魔法に見切りをつけたのだ。

無力な人間のみならず、空の民、地の民、水の民までもが協力し、黒魔女たちを追い詰めた。…そこにいたのはヒズリの王と裏切り者の白き魔女。

大戦後、傷ついたザメルザの母はその身を隠すように山に消えた。
魔法でその姿を変え、やがて土地の男と結婚し、ザメルザを身篭った。
だが、魔女である事を隠してひっそりと暮らす幸せの時間はそう長くは続かなかった。

生まれて来たザメルザは、恐れられていた黒魔女の容姿そのものだったのだ…

成長するにしたがって明らかになる漆黒の豊かな髪、とがったような長いつめと目尻の上がった目元は、ずっと絵巻物に描かれ続けた魔女の姿そのものだった。
だが、母にはもうそれを隠す魔力は残っていなかった。なぜなら、母がようやくザメルザを産み落としたときには、もうすでに殆どの魔力は尽きていたのだから。

ザメルザを恐れた夫の裏切り、母とザメルザを追うために、狩りを始めたヒズリの王
人が魔女を狩る…どんなに残酷なことも人間は躊躇わなかった。

ある日、慌てた様子で煙突の中に小さなザメルザを押し込んだ母。
直後、ヒズリの兵が家の中に押し入り、母に………手をかけた。
死ぬ間際、母が最後の力で放った影法師を追うだけでは飽き足らず、家に火を放った。
熱い…苦しい…煙突の中でいぶされる間にザメルザは覚醒した。

―――私は魔女なのだと…

それから、どうやって霧になって外に出たのかは、覚えていない。

ふらふらになりながら辿り着いたのは、ずっとずっと南の、小さな島だった。
言葉も違う、黒髪を見ても魔女とは分からぬ島の民。その島で大人になったザメルザは、ようやく小さな幸せを手に入れたと思った。
その頃には、この魔女の血は女だけにしか受け継がれぬのだと分かっていた。自分さえ魔力を使わねば、絶対に知られるはずはないと分かっていたのに…………いつ、どうやって魔女だと知れたのだろう……。
何も知らぬ優しかった夫も、ようやく歩き始めた小さな息子でさえも……薬草を摘んで家に戻ると、ものを言わぬ骸になっていた………。

呆然とするザメルザに襲い掛かってきた人間の甲冑に記されていたのは、見紛う事なきヒズリの紋章だったのだ。

紋章をつけた人間に術をかけ、じわじわと皆殺しにし、怒りで島の全部を海に沈めた。
そのときに己の名を知らしめたのだ……“黒の魔女、ザメルザ ”と。

最大限に魔力を放出した代償は大きく、もとの人の形が取れるようになるまで、ひっそりと西の森に身を隠し、気がつけば180年の年月が経っていたのだ。




キョーコは小さな狼を黒の魔女ザメルザだと思うことは一度もなかった。
先の大戦のその後、生き残った魔女たちがどうなったか…など、もともとそのような知識もなければ、白魔女としての力を鍛えたわけではなかったのだから。

けれど、狼に酷く心引かれたのは事実だった。

“悲しい” と “寂しい”

狼からは、そんな感情が読み取れた。




あの日の出来事をきっかけに、ザメルザは少しずつキョーコの前に姿を見せるようになった。

キョーコがザメルザを撫でると、驚くほど素直なキョーコの気持ちが読み取れた。
皇子が欲しいと…皇子とともに生きたいのだと願う心…

それはとうの昔にザメルザが諦めた感情…

キョーコの感情を読み取るのと同時にキョーコの眼を通して、ヒズリの皇子がキョーコを思い慕っている事も分かった。
小さなキョーコが全く気付かぬほどに、仮面の皇子はキョーコに思いを募らせている。

だが、それは許さぬ…

憎きヒズリの血を、残してなるものか
ヒズリの血と白魔女の血と混じらせてはなるものか

ヒズリは絶えてしまえばいい
皇帝と呼ばれるなど笑わせてくれる
黒魔女の血脈が途切れてしまったように、ヒズリよ滅びよ!!

滅びよ!
滅びよ!!
この世から、ヒズリよ…滅びよ!!!



だが、ザメルザは既に180年の時を経た魔女
もう既に若返りの魔法も一度しか使えぬであろう程に弱った魔力…
キョーコから補っても、どんどんそれが枯れていくのがもう分かっていた。

にやり…とザメルザの口角が上がる。

この何も知らぬ白き魔女を使えばいい…
白の加護に守られた皇子が、この小さな魔女に裏切られたと知ったら?
強い恋慕のあまり激情に身を任せ、その残酷な本性で裏切り者の魔女の命を奪ってしまうに違いない。皇子と言わず、皇帝も…その醜い本性を晒すがよい。さぞかし嫌悪に満ちたものであろうなあ……そうすれば、憎きヒズリを救う者はいなくなる……そう、ヒズリが絶えるとは、何と喜ばしい事か!!

ザメルザを支えているのは、ヒズリへの強い憎しみだけ……そう、ずっと密かに憎しみの炎を灯し続け、復讐の機会を狙っていたのだった。





(続く)
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コメント

コメント(2)
ああ、嬉しい。
大好きですよ。ええ、もう信じられないくらい大好きなんです。ぽてとは、かばぷーしゃまにこのお話を書いてもらってよかったと心から思っていますが、この第14話は、それこそ真骨頂です。

いやー………………………………………すげえ、すげえわ………………………………………。ぽてとは、こういう話が読みたかった!!そういうことです。

『ザメルザ』。ぽてとの大切なオリキャラ…。こんなにも、背景を書き込んでくださるなんて……………いやーすげえですわ。

ぽてとがどれだけ感動してるかなんて、この世の誰もわからないんだろーなってくらい、大好きなんです。

ぽてとたべたい&ぽてとあげたい

2018/06/29 20:47 URL 編集返信
かばぷー
Re: ああ、嬉しい。
> ぽてとたべたい&ぽてとあげたい 様

大好きですよ。→ありがとうございます♪

夢現は我輩の中では“映画仕様”のお話なので、場面の切り替わりを意識して全体が流れています。
ですから、この連載の終わった後で、全体を見渡すと、二時間映画をがーっ!!とみた感じで場面展開が進んでいくイメージなんですよね。(…と、勝手に思っておりますが)
そんな中で、ザメルザの背景をここに持ってきたのは、これから大きく場面転換を迎える前ふりなのですよ!うしししし。

とても印象的なキャラクター、ザメルザ。
原案をいただいたときに、どんな姿になるのかを決めました。
素敵なキャラを書くことができてうれしいです。

かばぷー

2018/06/30 09:24 URL 編集返信
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