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夢現刻物語 18

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第18話をお届けします。
前のお話はこちら 序章          10 11 12 13 14 15 16 17  

ようやく、序章に追いつきました。
お話を忘れちゃったという方は、序章 を復習してください。そこからのお話になります。

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。










コクン…

真っ赤に染まる灼熱の炎が、視界から消えていく。


コクン………

内臓を抉るような痛みが、薄らと和らいでいく。


全身を覆っている真っ赤に熱せられた鎧に少しずつ亀裂が入っていく感覚に、ようやく息をついて、皇子はその眼を開けた。






夢現刻物語 18  ~回復の兆し~






「殿下……」
「……………」

声を発する事もできず、皇子はぼんやりとキョーコの顔を視界に入れた。

「皇子……クオン皇子!!よかった!皇帝陛下に伝令を!クオン皇子が目を覚まされたと!」

皇子の治療に当たっていた何人もの医師が、ホッと安堵の息を漏らした。
魔法団きっての魔導師がいくら呪文を唱えても、いくら医師が治療を施しても、一向に皇子の目覚める気配はなかった。
むしろどんどん状況は悪化する一方で、皇子の命が危ぶまれた。

そんな中、宮殿に呼び戻されたキョーコは、薬師として皇子に最善と思われる薬湯をこしらえた。

ザメルザとの戦いの後、身体から大量の湯気が立ち上っていたという皇子…

さぞかし、その身体の中は熱を帯びているのだろう。
身体を冷やし、痛みを和らげる薬草を何種類か選んだ。

けれども、自力でその薬湯を口にすることも、目を開ける事すらも出来ない皇子に薬を与えるには、この方法しか思いつかなかった。
キョーコが口移しで薬湯を皇子の口に運ぶ作業は、三日三晩、絶えず続けられた。一口、二口とわずかばかりの薬湯を皇子の口に流し込み、ようやく今日になって呼吸が落ち着いたのだった。

そして、皇子は目を覚まして、はじめてそこで知ったのだ。

―――呪解の秘密は守られなかったのだ、と……

だからキョーコはここにいる。
自分のために涙を流してここにいる。

皇子はザメルザの言葉にいたたまれなくなって、しばし、瞑目した。









「ハダル、クオンの容態はどうじゃ?」
「はい、キョーコ様がお越しになられてから、少しずつ回復の兆しが見えます。」
「まことか!?」
「本当に?」

皇帝と皇后は、その報告にようやく顔を綻ばせた。

「では…クオンの中の呪詛は消えつつあるという事か?」
「それが……」
「もしや、まだ…消えぬのか?」

「………………はい。今はまだ、殿下の体調は非常に危ういものにござります。キョーコ様が側にいれば比較的呼吸が穏やかになりますが…少しでもお側を離れますと、発作的に皇子の痛みを増幅させてしまうようでございます。また、呪いは…呪いの勢いは全く衰えていないと水晶は示しております。」
「全く…!?呪いが衰えて…おらぬと?」
「左様でございます。」

皇帝は唸った。

三日三晩の看病で、昏睡状態だった皇子が目を覚ましたという。
やはり、白魔女の血を持つキョーコが側にいれば、ザメルザの言うとおり、皇子にとっての加護になるのだ。ならば、キョーコの扱う薬湯があれば、ザメルザの言う方法を取らずとも、皇子の身体に巣食う呪詛をなくす事がきるのではないかと考えたのだったが…

「やはり……だめ、なのか?」
「分かりませぬ…」


ハダルの言う事が真実であれば、呪詛を解く方法はただ一つ…白の魔女、キョーコを抱くしかない。

現在、キョーコを皇子の治療に当たらせているが、その理由を知るのは、皇族魔法団の中でも、ザメルザとの決戦に赴いた数名のみ…
依然として、皇子にかけられた呪いを解く方法に関しては、更に皇帝によって緘口令が布かれていて、秘書官であるヤシロや近衛のムラサメはおろか、他の貴族たちにも皇子の病状と今後の見込みについては、何も語られていないのが現状だ。
このまま皇子が病床にいる期間が長引けば、いたずらに民の不安を煽り、国の安寧を損ねるのは間違いない。
だが、その治療方法を皇后カレンタはいまだに拒んでいる…

皇帝の決断のときは迫っていた。









「ヤシロ、そなたに頼みがある。」

皇帝の執務室に呼ばれたヤシロ
皇帝の沈痛な面持ちに、皇子の現状を理解しようとした。

ザメルザとの決戦の際、帝都ツルガを襲った大きな地震。
堅牢な石造りのヒズリの城は無事ではあったが、ツルガ市街の一部では火事や建物の部分崩壊などの被害が発生し、多少なりとも民に被害が出ていたのは報告が為されていた。
そのような混乱の中、民の安全確保をまず第一にせよとの皇帝の命が下り、皇族騎士団や官吏の多くは市街に下りて被害の掌握と、事態の速やかな収束に当たらなければならなかった。

帝都ツルガの速やかな復興に人手が不足している状況を受け、戦いに傷ついて帰城した皇子の手当てのために、宿下がりしていたキョーコが呼び出されたのは分かる。

おそらく、皇子がそれを望んだのだろう。ずっとキョーコと二人で成長してきたのだ。不安な時、心細い時には思いを寄せる者に側にいて欲しいと思うのは当たり前のこと。
……だが、いくら緊急時だったとはいえ秘書官の自分が全く皇子の側に寄れないのは、一体どういう理由があるのだろう?

「皇子の現状は聞いているか?」
「いえ…意識が戻られたという事は存じておりますが、それ以外は……」
「うむ……」

いつもは神々しいほどの覇気がある皇帝の表情は、固く、暗い。

「皇帝陛下、わたくしはクオン殿下の秘書官でございます。ずっとあれから皇子のご様子について気が休まる日はありませんでした。余計なご配慮は無用にございますゆえ、どうか…どうか、殿下の現在の状態を教えてくださいませ。」

ヤシロの真剣な眼差しを受け、皇帝はならば…と口を開いた。


「キョーコを…キョーコの身柄を、国に捧げて欲しいのだ。」

「キョーコを……?」
「そうだ。」

何を…?キョーコは今までもこれからも、皇子の側にいた。
それに、身柄を国に捧げて欲しいといっても、既にキョーコは皇子の治療に当たっていて、それを断る理由は自分にはないはずだ。

いや……国に………捧げよ、と仰せになった………?


ヤシロはその言葉の意を解した。

表情の浮かない皇帝陛下
誰にも知らされぬ皇子の容態
キョーコの夫となる我が身をわざわざ呼びつけた意図
そして……キョーコが白魔女であると知っている、皇帝陛下と皇族魔法団

キョーコの持つ未開発の…白魔女の力に頼らねばならぬほど、皇子の身体はザメルザとの戦いで想像以上のダメージを受けているという事なのだと……急速に理解した。

「ザメルザの魔法は…クオン皇子が受けられたのですね……?」
「国中を破壊に導くと思われた被害がこれだけに留まった。……が、その代償として、皇子は……………ザメルザの呪いに苦しんでおる。」

「もしや、命を…捧げよという意味ではありますまい?」
「違うな。」

国に捧げるのが命でないとするならば、国のために呪いを受け、生死の淵を彷徨った皇子を救うために何を躊躇う必要があるのだろう…?
既にキョーコは己と結婚すると決めた時点で、皇子のために一生その純潔をも守りぬく覚悟でいたというのに。

キョーコのすべては、はじめから皇子のためだけにある……

「皇帝陛下、ご心配には及びません…。キョーコは宿下がりを申し出たとはいえ、皇室に忠誠を誓った者。小さき頃より今まで……皇帝陛下をはじめ、皇后陛下、クオン皇子には多大なる感謝をしております。親愛なるクオン皇子、そして、このヒズリ帝国のために身を捧げる事を厭う事はありません。」

「……ヤシロ」

「そして、わたくしも同様にございます。どうか、この国の未来のため、何よりクオン皇子のため……ご決断くださいませ。」






(続く)



次回は限定です(7/28追記)

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