FC2ブログ

夢現刻物語 20

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第20話をお届けします。
前のお話はこちら 序章          10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。











夢現刻物語 20 ~自覚~





皇子は朝日が昇るのをその眼で確かめ、ゆっくりと身体を起こした。
昨日までの痛みが噓のように消えていることが分かると、苦い笑いを溢した。

(最低だ…まるで、本当に悪魔のようじゃないか…)

昨晩、煌々と輝く満月の青白い明かりの中、キョーコを抱いた。
ずっと望んでいたキョーコとの交わり…
キョーコの白い肌に触れている間の幸福感…
その柔らかい肌に手を這わせ、キョーコの中心に己の禊を沈めた瞬間、言いようのない歓喜が身体中を走り抜けた。

…だが、同時に湧き上がる罪悪感

キョーコは“初めて”だったのだ

結婚に向けて準備を始めていた矢先のこと。
本来ならばその純潔を捧げるべき相手はヤシロであったはずだ。
ヤシロが得るはずだったキョーコの純潔を己が穢した。

そして、一瞬それを喜んでしまった自分を自覚する。

何という酷い事をしたのだろう…必死で苦痛に耐え、静かに涙を流すキョーコが哀れで、あれ以上この場にとどめておくことが憚られた。
初めての行為の後で抱きしめることも出来ぬまま、そのまま部屋を出したなんて…
どれだけキョーコに辛い思いをさせれば気が済むのだろう…

『やれるなら、やってみろ!さすればお前も立派な悪魔だ!!』

もう、悪魔よりも酷いところにいるのかも知れない。

ふう…と息を一つ吐いて水差しに手を伸ばすと、テーブルの上に手紙があることに気がついた。

そこに見えるのは、ヤシロの筆跡
キョーコが昨夜置いていったのだろうか?
皇子は、その手紙の中には己の所業を責め、罵倒する言葉が並んでいるであろうとしばし開封を躊躇った。けれど、開封せねばなるまい。責を負うと決めたのだから。

―――カサリ…



クオン皇子へ

 此度の一件、この国に住まう我々を救って下さったクオン殿下には、感謝の言葉もございません。私は一人の国民であると同時に、ヒズリ皇族に忠誠を誓い、官吏として生きる者にございます。国のために協力するのは自明の理。殿下とともに歩む覚悟でなければ、始めから官吏になどなってはおりません。そして、それはキョーコも同じ……殿下とともに歩む覚悟をしているだけでなく、両陛下をはじめ、殿下には多大なる感謝の念を持っております。
 しばし、キョーコを殿下にお預け致します。今後、面会が叶うようになりましても謝罪や謝礼は無用でございます。キョーコを大切にしてくだされば、それで本望なのです。              

                            ヤシロ


皇子はクシャリ…と手紙を握り締める。

「ヤシロ……そうではない。国のためなどではない…すべては私の…私の欲望故なのだ…」

身体の軽さとは反対に、心に重く後悔と自責の念が圧し掛かるようだった。









昨夜、キョーコはヤシロの待つ家に戻ることはなかった。


今まで住み慣れた女官部屋
明かりを落としたまま、冷たい寝台に横たわった。

まだ…………身体の奥がジンジンする。

「うっ………っっく………」

皇子に貫かれた痛みよりも歓びが勝るのに、それを伝えることは出来なかった。

自分のせいで尋常ならぬ苦痛を強いられている皇子
ザメルザの恨みがすべて自分に向かえばよかったのに
自分が皇子に思いを寄せているせいで、呪詛をその身に受け…
本当ならば皇帝からも皇后からも疎まれ蔑まれるのは当然のことで、死刑の宣告をも甘んじて受ける覚悟だった…。

けれど、皇帝から告げられたのは、皇子と交わり治療せよ………と。

白魔女の力を育てる事をせず、ただの薬師としての技を磨いてきただけの自分に何ができるのだろう。
そう思ったとき、ヤシロから密かに告げられたのは、己の中にある“白魔女の血”そのものの力…その血こそが、ただ交わるだけで皇子の命を救えるのだという事を知った。

皇子の呪いが解けるならば、何でもする。たとえ、皇子が自分を抱く事を嫌悪したとしても、耐えてもらうしかない。

だから、優しい言葉など期待してはいけないはずだった
皇子が自分を抱く事は、国のため以外にはないというのに…

でも、きっとどこかで期待していた

皇子が自分に向けた瞳の奥に見せたのは、獣のような猛々しさ
自分を責め、強く射るような眼差しから逃れたかった

そのまま見つめ返せば、本当に欲しかったもの、本当に願っていた愚かな願望が皇子に見透かされてしまう

求めてはならないものを求める愚かな魔女…それが自分
愚かで、欲深く、罪深い魔女の裏切り……それが自分の“罪”

キョーコは自分の身体をぎゅううっと強く抱きしめた。







「クオンの様子はどうだ?」
「はい、医師の見立てによりますと、昨晩と比べて随分と回復なされたという事です。今日はご自分で食事も口にされました。」
「まことか!?それはもしや…」

「……はい、おそらく…」

「そうか!覚悟を決めてくれたのか…」

皇帝と魔法団の長は、ひと時安堵の息を漏らした。
けれど、その安堵はやはり長くは続かなかった。
3日…4日…と経つうちに、再び皇子の容態は悪化していく。熱を出し、痛みにうなされた。
一度、キョーコを家に戻してしまえば、また城に呼ぶことを、周囲は不思議がるであろう。

「キョーコ殿をもう一度城に召し上げてみてはいかがでしょう?」
「ふむ…」
「キョーコ殿は魔法学校を首席で卒業された方。薬術には教授陣も舌を巻くほどに長けておいでです。そこで、薬師として再登用を願ってみては…」
「なるほど、それができるか?」
「はい。ですが、皇后様はご反対かと…」

皇帝はしばし瞑目した。
皇后の言い分は分かる。けれど、今は国の一大事…それを理解してもらわねばならぬのだ。

「よい、私が許可する。」
「かしこまりました。」

これにより、キョーコの再登城が決まった。
多くて週に二度、それ以外は週に一度の“治療”を皇子に施す。
それは勿論、建前上の事であり、治療の中身や方針は魔法団以外には固く伏せられた。


皇子はキョーコの登城を知り、申し訳なさが増した。
ただ、確かにいえることはキョーコが城内にいるかいないかでは、明らかな体調の変化があった。
キョーコが城に入るとすうーっと呼吸が楽になった。
一歩ずつ寝室に近づくと、痛みが遠のいた。
肌を合わせると気分までもが高揚し、今すぐに馬に乗り、砦の丘までキョーコを乗せて走る事ができるように思えるのだ。

だが、一歩離れると、途端に心の不安が押し寄せた。
日が経つほどに再び皇子を襲う激痛。

ヤシロの顔を見ると余計に禍々しい何かが心に渦巻くようだった。

もう………分かっている。
このザメルザの呪いは、己自身の“執着”と“欲望”なのだ。

キョーコに愛を告げたいと思いながらも、ずっとそれに蓋をしてきた。
ずっとキョーコを抱きたいと願いながらも、他の女性を抱く事で身体の欲を紛らわせた。
それが、間違いだったとは思わない。

だが、もうキョーコを知ってしまった。

はじめて飴玉を手に入れた子供のように、皇子はキョーコを抱き続ける。
それこそ、“執着”と“欲望”を皇子ははじめて表に出したのだった。





(続く)
関連記事
スポンサーサイト



Pagetop

トラックバック

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

Pagetop


プロフィール

かばぷー

Author:かばぷー
ス/☆ビ大好き!
脳内妄想☆大暴走中
思いついた言葉を書き連ね
作品置き場にしています。

☆当サイトはリンクフリーではありません☆
お付き合いある「ス/☆ビ」二/次サイト様、マスター様のリンクをいただいています。リンクをご希望の場合、お手数ですがリンクを貼られる前に必ずご一報ください。尚、原作者様の作品画像やアニメ画像を無断掲載をされているサイト様からのリンク、多くのサイトを無断で紹介されているサイトは固くお断りいたします。

Attention!
The all of this are NOT related with the Author and/or the Publisher. Not allowed to permit from all illegal actions by the website rules. No reproduction and/or republication without any written permission from blog author and/or web site owner.
Each blogs has the copyright after publication showing on the web site and each web page by the author.
注意!
この中の全ての物は、原作者及び出版社とは関係ありません。
ウェブサイト会社規約、全ての違法行為を禁止します。著作者の許可なく摸作・転作などの行為を禁じます。
各ウェブサイト又は各ブログ執筆者により書かれた、もしくはデザイナーに描かれたそれらの創作作品は、公共へ配信された時点で著作権は著者が所有しています。 

ようこそ

最新記事

カテゴリ

リンクご案内

ちょび様
陽のうらうらと
ピコ様
sei様 風月様
popipi様
ちなぞ様 ぞうはな様
ぽてとあげたい様
ぽてとは揚げて食べたいな